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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・悪夢まであと一歩の崖縁に

2019年06月02日 | 経済(主なもの)
 景気動向指数の先行指数は、3月改定値で95台まで下がり、「悪夢のような」民主党政権期に記録した95割れまであと一歩となった。そして、これに先行する5月の消費者態度指数は、消費増税後の最悪時以来の40を割れを記録した。40前後の数字は、政権交代に結びついた2012年の民主党政権期並みであり、アベノミクスに対する消費者の評価は、そこまで落ちているということである。これで、消費増税を抱えたまま参院選に臨むのは、なかなか厳しいのではないだろうか。

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 週末に4月の経済指標が一斉に公表され、鉱工業生産は、前月比+0.6となったものの、3月の減を埋める程度に止まり、1月に急減して以来、低水準での一進一退が続いている。特に、設備投資を占う資本財(除く輸送機械)に至っては、2か月連続の減であり、下げ止まってないように見受けられる。この4月の100.5という水準は、2年前の2017年4-6月期をも下回り、景気は振り出しに戻ったような形である。

 鉱工業生産の予測は、5月+5.6、6月-4.2だったが、たとえ、このとおり実現しても、4-6月期は、前期の落ち込みを埋める程度にしかならない。在庫増の状況を踏まえれば、5月の急伸が実現するとは考えにくいところだ。今回は、季節調整が難しいため、原指数の前年同月比も確認すると、1月+0.7、2月-1.1、3月-5.0、4月-1.1という状態にあり、予測は、5月-2.1、6月-2.8と、楽観を許さないものになっている。

 政府の景気判断は、雇用や企業収益が堅調ということで、「緩やかな回復」を維持したようだが、労働力調査の4月の雇用者数は、前月比-30万人となり、頭打ち状態だった男性に続き、女性にも陰りが見えてきた。新規求人数では、「除くパート」の増加数の前年同月差は、製造業でマイナスが続いているほか、女性の多い卸小売業などでも、2か月連続のマイナスとなった。雇用も緩み出しており、堅調に見えるのは、遅行しているに過ぎない。

 また、「持ち直している」とされる消費については、4月の商業動態の小売業が前月比横バイに止まった。改元の10連休によって、サービス消費が増えている可能性は残るにしても、消費総合指数も、消費活動指数も、2月、3月と尻下がりにあって、4月がこの様子では、4-6月期は、まだマイナス圏であろう。そして、5月の消費者態度指数は、前月比-1.0と大きく下がり、消費増税の2014年以来の40割れとなった。

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 機械的に判断が決まる景気動向指数は、3月に「悪化」となり、その改定値は、更に下方修正さている。4月については、第一生命研の新家義貴さんによれば、鉱工業指数等の結果を受けて、一致指数が2か月ぶりに上昇するものの、「悪化」のままになる見通しである。景気動向指数は、いち早く景気の変化を世に示したことで、にわかに注目されている。そこで、5月についても、速報性のある消費者態度指数を参照することで占ってみよう。

 下図のとおり、景気動向指数の先行指数と、消費者態度指数の雇用環境は、似たような動きを示す。消費者態度指数の総合値は、先行指数の10の構成項目の一つでもある。この動きからすれば、4月の景気動向指数は、やはり若干の上昇になろうが、5月になると、更なる低下となって、底割れする恐れがある。5月は、改元に沸き、旅行客も多かったので、消費者態度の底入れを期待していたのだが、心配な雲行きになっている。

(図)


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 結局、景気動向指数の先行指数で見ても、消費者態度指数で見ても、「悪夢のような」民主党政権期並みのところまで来た。それでも、リーマン並みではないからと、4か月後に迫る消費増税という崖へ、我々は連れて行かれるのだろうか。少なくとも、アベノミクスに対する国民の評価が地に落ちている状況では、消費増税は、選挙において、かなりの重荷になる。浜口雄幸のようにデフレを貫いて「男子の本懐」を遂げるのも、政治の在り様ではあるが、名誉とは無縁の民草にとって、道連れはたまったものではあるまい。


(今日までの日経)
製造業、強まる停滞感 生産増も在庫は高水準/求人倍率維持も新規減。米関税で世界貿易急変 中国から生産移る。狂う回復シナリオ 中国、再燃する減速懸念。北朝鮮 ミサイル発射 ロシアの影。


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