経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

今年の反省と諮問会議への期待

2012年12月30日 | 経済
 28日の家計消費などの発表で今年の統計も終わり。筆者の評価は、意外に良いというものだ。勤労者世帯の11月の季節調整値の指数は-0.2だが、8~10月にかけて伸ばしてきた水準をキープしたと言える。12月は、ボーナスの不振で落ちる可能性が大きいが、もし11月と同水準なら、10-12月期は、前期から1.83も伸びる計算になる。

 今年の勤労者世帯の消費は、負担増のあった4-6月期に失速したが、7-9月期、10-12月期と次第に回復を見せる展開だった。しかし、1月には所得税の復興増税、4月には年金支給年齢の引き上げというデフレ促進策が待ち受けるので、前途は多難である。大型補正が組まれても、需要になるのは夏になってからと考えねばなるまい。

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 筆者の年末は、「今年は3%成長もあるでしたよね?」と聞かれて、「いやはや面目ない」と答えるといった次第だった。今年の反省は、危ぶみつつも負担増を軽く評価したことと、控えめに見たつもりでも復興需要が更に乏しかったことにある。低成長に終わった要因には輸出の停滞もあるが、水物の外需は頼りにしないのが筆者流なので、言い訳にはしない。

 今年を終えるに当たって、正直、残念な気持ちである。これでもかと繰り出される負担増を、復興需要が相殺してくれて、世間が予想しなかったような成長を見せてくれるかと期待していたからである。今の日本の政治や世論の状況から言って、経済復活へのほのかな希望は、「間違って正しい政策をしてしまう」ことだけだった。

 来年を展望するなら、最悪のシナリオは、前半の停滞から夏頃までに成長が上向き、これが自殺行為に等しい消費増税の決定を招いてしまう展開だ。これが一番ありそうなのが辛い。住宅に多少の駆け込み需要はあっても、年金カットが響いて、秋から冬にかけて消費は停滞、不安なままに春の消費税の崖を迎えることになろう。

 今年の日本の教訓は、ゼロ金利の金融緩和が効きにくい下では、負担増はデフレ促進に極めて強い効果を持つということだ。米国の財政の崖が比較的穏健なものに収まっても、意外なほど消費が低迷する心配がある。R・ライシュさんのように「崖があっても、あとで減税で埋め合わせれば良い」というのは楽観的に思われる。

 欧州危機は小康だが、極端なユーロ安の是正と域内の低成長で、唯一の牽引力であるドイツの輸出は弱まることになろう。危機にならずとも、低迷は深まるのではないか。中国も、底入れは一時的なものに終わって、公共投資を増やし続けることによる成長確保に限界が見えるように思う。東南アジアを除けば、日本は外需に期待すべきではなかろう。

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 こうした中、日本経済の舵取りをするのは、新生の経済財政諮問会議となる。今度の諮問会議の役割は、マクロ・コントロールらしい。ミクロの成長戦略のような、雑多で、効果不明で、パッケージを決める頃には選挙があって作り直しになるものに、煩わされないのは幸いだと思う。

 伊藤元重先生と高橋進さんの二人の学識者委員には、デフレとは需要の不足なのであるから、政策の方向を示すのではなく、政策によって増減する需要の計量を徹底して行い、それを表に出すようにしてもらいたい。今後、消費が伸び悩むにしても、復興増税や年金支給年齢の引き上げによる悪影響や、10兆円の補正予算といっても需要になる部分が限られることをオープンにしていけば、結局は国民の信頼を得ることにつながる。

 例えば、地方公務員の給与を1.2兆円カットするなら、それを埋め合わせるのに、0.9兆円くらい補正予算の公共事業を増やさなければならないとか、成長戦略によってメガソーラーを更に90か所上積みする必要があるといった議論ができないといけない。政治に対して、需要管理上の意味を遠慮なく示すことが、経済政策を統合することになる。

 日本では、マクロ・コントロールをする上で、社会保障や地方財政の動向把握が十分でなく、税収の意図的な過少見積りも横行している。そのため、負担増の影響が視野になかったり、執行状況が分かずじまいで復興需要が読めなかったり、税の自然増収を還元しないことがブレーキになっていることが認識できなかったりする。まあ、財政当局の情報統制とサボタージュを破るのは容易なことではあるまいがね。
 
(昨日の日経)
 日銀総裁インタビュー。エコポイント実は失策、需要先食いが痛み増幅・大西康之。諮問会議に伊藤氏ら起用。麻生財務相・政府の役割も盛り込む。TPP加入は妥結後。中国勢が東南ア生産拡大。ネット消費が12月1兆円。ABCマート営業益最高。

(今日の日経)
 台湾大手が邦銀買収へ。住宅購入に給付検討。出生100万人割れ目前の日本。財政の壁で輸出1割減も・内閣府。財政の壁・決裂なら大統領案を採決。米市場に不安広がる。

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