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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

回復期の緊縮・ハシモトデフレから25年

2022年01月09日 | 経済
 マイナスに及ぶ異次元の金融緩和、世界一の政府債務比率の財政出動、これだけやってもダメだから、ムダなんだというのは、よく聞くが、高級食材を使えば必ずうまい料理になると言うのと似て、使い方が大事なことを忘れている。不況期には思い切った財政出動をしても、回復しだすと急激な緊縮をかけて失速させる。こういう拙い運営をしているから、大借金とデフレの共存となる。それは、今、やろうとしていることでもある。

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 デフレ脱却の最大のチャンスは2014年だった。民主党政権末期の2012年10-12月期を底として、円高是正を背景に輸出が急回復し、公共と住宅の建設投資も増え、消費も伸びていったからだ。2014年4月に消費増税をしていなければ、輸出増は更に3四半期続いたので、デフレ脱却となっていただろう。逆に言えば、なぜ、大チャンスを緊縮財政で潰さなければならなかったのかである。

 無謀な消費増税計画は民主党政権が決めたことなので、その呪いが効いたわけだが、景気の回復ぶりへの驕りがあったと思う。1兆円の法人減税まで追加して、対策は万全のつもりになっていたが、肝心の需要管理がなっておらず、2014,15年度で、一般政府の資金過不足のGDP比を一気に3.7%も引き締めてしまえば、消費が失速して、物価が上がらなくなるのは、むしろ、当然であった。

 回復への驕りは、民主党政権下の2010年にもあったことで、リーマンショックから戻し、前半は調子が良かったが、前年度までの対策を一気に切ってしまい、後半に円高に見舞われ、慌てて経済対策を打つというチグハグぶりだった。それ以前の小泉政権下での2005,06年度の緊縮もきつく、資金過不足をGDP比で3.3%も締めている。内需を育てていなかったから、リーマンショックで輸出が急落すると、金融に問題がないのに大打撃になった。

(図) 


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 コロナ禍の今、景気を支えているのは輸出である。それに慢心して、緊縮で内需を疎かにするというのは、毎度のことてある。不況期に財政出動で支えても、回復期に急速に締めて、好循環を遮り、成長を低迷させ、支えの輸出が崩れると、すぐ苦境に陥ってしまう。回復期の緊縮をほどほどにして、内需を育てておけば良いだけなのに、どうしてもできず、フリダシに戻ることの繰り返しだ。

 これは、回復期に、不況期の半分と言えど、景気対策を続けることが常識に合わないからである。その背景には、需要を安定的に管理する観念の欠如がある。加えて、急速な緊縮を避けるために再分配を行う制度のなさが難しくする。欧米では、とっくに実現している勤労者皆保険も、低所得者への定額還付の制度もなく、毎度、そのとき限りのバラ撒きを繰り返すというのでは、批判を受けてしまう。

 「新しい資本主義」以前に、基本的な需要管理がまるでダメで、猛アクセルと急ブレーキの繰り返しでは、成長するものもしない。それが1997年のハシモトデフレからの25年間だった。そろそろ脱出路を見つけてほしいと思う。いまだに政策減税で企業を動かして成長する戦略に拘り続けているようだが、需要を抑制してしまえば、投資の総量は大して変わらず、企業の資金から置き換わるだけである。


(今日までの日経)
 再エネ発電稼働、天候不順が打撃。政策減税、10年で17兆円 研究開発・賃上げの効果不透明。雇用保険、進まぬ国負担増。まん延防止、沖縄・山口・広島県に適用。


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