経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2015年度予算はいつもの緊縮財政

2015年01月18日 | 経済(主なもの)
 経済成長の加速には、好循環が欠かせない。日本は、いつも巡航速度に乗る前にブレーキをかけ始めるから、デフレにくすぶり続けている。今年も、補正で0.8兆円、本予算で4.4兆円、地方で1.2兆円、年金で約0.5兆円、合計6.9兆円もの収支改善が行われる。今回も、まったく同じバターンが繰り返される。

 ただし、今年に限っては、原油安の天恵がある。これが緊縮財政を相殺し、ゆるゆると回復してくれたら、ありがたい。昨年は、一気の消費増税という危険な行為をしたが、すんでのところでデフレスパイラルには陥らず、マイナス成長で済んだのは、強運だった。最善を尽くさなくとも、運で勝ち進んでしまうということは、世の中にないわけではない。

………
 2015年度の政府予算案では、4.4兆円の公債金減額が行われる。本来なら、GDPの1%近い収支改善を聞いて、デフレ圧力の大きさに脅威を感じなければならない。殊に、日本経済の潜在成長率は0.5%程度しかないと言われているのだから、そうやって余らせた資金を、一体、誰が使ってくれるのか、考えが及ばなくてはおかしい。

 潜在成長率の低さを指摘して、効果不明の成長戦略を声高に叫びつつ、低成長下では無理がある大幅な緊縮財政を求めるというのは、矛盾がある。ところが、日本では経済を統合的に見ないから、こうした分裂した議論が罷り通ってしまう。現実には、過剰な緊縮への願望が成長を阻害し、その実績によって潜在成長率が低いものになっていると思われる。

 さて、4.4兆円の収支改善の中には、8%消費増税の平年度化による増収1.7兆円が要因として含まれる。消費増税は、既に、経済の負担になっており、納税が後年度に計上されるだけだから、実質的なデフレ圧力としては、これを除くべきであろう。同じ理屈は、地方にもある。地方消費税は前年比1.5兆円増であるから、地方でのデフレ圧力は、とりあえず、概ねないとすることができる。

 その一方、国の税収は、毎度、過少な見積もりが行われ、隠れたデフレ圧力となっているため、これを勘案しなければならない。本予算の税収は54.5兆円である。そのうち、所得税は、補正から4.0%増であり、政府見通しの名目成長率2.7%からすれば、まずまずの数字だ。法人税の4.5%増は、証券各社の予想する経常利益の増加率が10%前後であることを踏まえると、少ないと言えよう。

 こうしたことから、2015年度は、全体で1.6兆円ほどの上ブレが出るものと予想している。結局、消費税の平年度化分で、実質的なデフレ圧力は1.7兆円減るとしたが、今度は、自然増収で1.6兆円増えるわけであり、元へ戻る形だ。地方については、税収規模が国の3/4であるから、その程度の影響と思っておくのが簡単であろう。

………
 ここで、国の税収の検証方法について、一般の方には煩雑かもしれないが、一応の解説をしておく。自分なりの尺度を持たないと、評価はできない。政府の言うことを鵜呑みにするでなければ、面倒でも、手を動かす必要がある。

 基本的な流れは、2014年度決算の税収の予想を作り、これをベースに2015年度の税収を予想する二段階で行う。わざわざ決算の予想を作るのは、政府の補正の税収は、いつも少な目で、信用が置けないからだ。例えば、2013年度の決算では、12月に補正をしていたにもかかわらず、1.6兆円の上ブレが出ている。

 予想の方法は、単純で、前年度決算から名目成長率で伸ばし、税制改正の増減をし、あとは、成長率以上に伸びる性質を持つ所得税と法人税について、任意の尺度で税収を加算するものだ。今回は、所得税については11月までの実績を延長する手法、法人税については証券各社の経常利益の予想を参照する手法とした。これらには別の尺度もあると思う。

 結果は、2014年度決算の予想は52.7兆円と、補正より1兆円の上ブレであった。ただし、ベースにした2013年度決算では、課税強化に伴う駆け込みの株式の益出しという特殊要因があって、所得税が0.3兆円ほど膨らんでいることから、これを割り引く必要がある。続いて、2015年度の税収の予想は、主に法人税の上ブレにより、更に0.9兆円ほど高まるものとなった。こうして導いたのが、前節の1.6兆円である。

(表) 国の税収の予想 (政府予算案決定後)



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 補正、本予算と続けて公債金の減額がなされるのは、2006-2007年度以来のことである。第一次安倍政権の頃であり、6兆円もの収支改善がなされたが、結果は景気の停滞であった。米国への輸出拡大で勢いに乗り、好循環を回そうというところでブレーキをかけてしまい、大企業が高収益を上げる中で、景気は賃金に波及せず、格差批判を招いた。そうこうするうちに、米国の景気が陰り、デフレ脱却の最大のチャンスを逃すことになる。

 当時の経済財政白書などを紐解くと、「なぜ、従来と異なり、輸出から景気が波及しなかったのか」という問題意識で書かれている。むろん、立場上、緊縮財政を批判したりはしないが、その代わり、天候が悪かったことに触れている。本コラムは、昨年、「消費が悪いのは、天気のせいなのか」と苛めたりしたが、官庁エコノミストとしての筆法かもしれない。ちょっと、かわいそうなことをしたかな。

 今年も、大いに天気は心配であるが、当時と事情が違うは、原油価格である。原油価格は、2004年頃から上昇が始まり、2005~2008年にかけて年々急騰して、日本経済にボディーブローのように効いていた。今度は、これが逆向きに働く。その反面として、原油安は世界経済減速の証であるから、輸出には頼れまい。それだけに内需は大事であり、好天を祈りつつ、運の強さに期待したいところだ。


(今日の日経)
 ROE経営目標広がる。スイスフラン・ショックでユーロ安。読書・大脱出・Aディートン

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