経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

高まる財政の自由度を活かせるか

2022年07月17日 | 経済
 日経の扱いは小さかったが、2021年度の地方の税収が43.3兆円だったことが公表された。地方財政計画からの上ブレは3.7兆円に及ぶ。国の当初予算からの9.6兆円の上ブレに続くもので、これらが素直に反映されれば、中長期の経済財政の試算は上方へシフトし、2023年度にはプライマリーバランスへ近接し、2025年度には5.2兆円の過剰達成に至ると見込まれる。この余裕を、危機的な状況にある少子化の緩和に充てたいところだ。

……… 
 地方の税収の総額43.3兆円は過去最高であり、前年度決算比は+1.6兆円であった。内訳は、個人住民税が前年度決算比でほぼ横バイ、法人二税(含む特譲税)が+0.8兆円で11.2%増、地方消費税が+0.7兆円13.8%増という内容だった。個人住民税は、国の所得税の11.4%増と比べると目立って小さく、法人二税も、国の法人税の+21.4%増より小さい。地方消費税は、かなり大きく国の前年度並みという状況だ。

 2021年度の実績をベースに、GDP成長率や企業業績の見通しを使って、2022年度の決算を予想すると46.5兆円、+1.9兆円の増、ついでに、2023年度も計算すると47.7兆円、+1.1兆円の増といったところだ。他方、国の税収は、2022年度が70.5兆円、2023年度が72.4兆円と見込んでいるので、「中長期」の上では、2023年度にプライマリーバランスへ近接し、2025年度には5.2兆円の「黒字」に至る。

 つまり、財政再建の目標は堅持したまま、「黒字」の分だけ、経常的な支出を増やすことも可能というわけだ。ひたすら債務縮小に向かって勤しむという道もあるにせよ、深刻化する少子化を放置して、社会の存続が危くなっているのに、財政収支だけきれいにしても仕方あるまい。非正規へ育児休業給付を拡大しても0.8兆円、低所得者の社会保険料を軽減して勤労者皆保険にするのでも2兆円で済む。

 半年後の来年2月頃には、新たな将来推計人口が公表され、出生率の下方修正により、年金の給付水準の50%割れが物議を醸すだろう。負担の押し付け合いにならない前向きな解決方法は、少子化を緩和するとともに、皆保険で加入を増やすしかない。答は見えているけれども、「成長に伴う税収増は、すべて財政再建に使う」という隠然たる論理に阻まれて、出口にはたどり着けないだろう。

(図)


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 景気も消費も低迷が続いているが、企業収益と物価上昇に伴い、税収は好調である。企業は収益を賃金に還元せよと言われるが、財政は指摘されることさえない。ウクライナ戦争の影響で、防衛費の増加が叫ばれる中、守られるべき次世代は激減していく。若い世代が疲弊し、人口崩壊を起こしていても、政府債務の大きさばかり気に病み、財政再建のメドが立って自由度が増していることも分からぬまま、目先の課題に忙殺され、時は流れる。


(今日までの日経)
 新型コロナ国内感染、最多11万人。中国、4~6月、ゼロコロナ政策で0.4%増どまり。小売り・外食6割、純利益回復。DRAM、下げ加速。夏ボーナス最高85.3万円。ユーロ圏、成長予測下げ 今年2.6%。米物価高、ピーク見えず 6月9.1%上昇。


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