経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

財政天動説と出口戦略

2010年04月07日 | 経済
 経済が回復してからでなければ、財政再建はできない。こんな常識的なことに日本が気づくのは、いつの日なのだろうか。今日の日経は、政府検討会が論点整理をしたと伝えているが、これを見ると、日本は本当に「財政天動説」の国だと思えてしまう。

 論点整理では、潜在成長率1%を前提にし、税制抜本改革を指摘する。しかし、実質成長が1%なら、物価上昇率はゼロに近いだろう。つまり、需要超過がほとんどないわけで、これでは消費税の増税は不可能である。矛盾に思わないのだろうか。

 1%成長は、額で言えば5兆円、消費税1%は2.5兆円である。成長の半分を税で取り上げては、経済に与える影響が大き過ぎる。増税なら、消費税を0.1%単位で上げることを考えるか、環境税や相続税など需要に影響の少ないものを検討すべきであろう。戦略が過去の焼き直しの単調なものになっていないだろうか。

 安倍政権時の回復局面ですら、定率減税廃止と4兆円の国債減額は内需に響き、景気を停滞させて政権崩壊の背景となった。経済危機からの出口にある今は、慎重を期さなければならない。財政の都合で経済は回ってはくれない。経済に合わせて財政は運営しなければならないのだ。

 日経は「悪い金利上昇」を懸念するが、記事の中で指摘する足元の事実は日米金利差の拡大であり、懸念と事実がずれてしまっている。足元を見ずに、長期の懸念に先走るのは危険である。出口へ先走っての失敗は、ハシモトデフレと安倍政権で繰り返しているではないか。もう学んでも良いはずだ。

 早大の若田部先生は、「危機の経済政策」(日本評論社)の中で、米国CEA委員長のクリスティーナ・ローマーの説を引き、「財政政策が無効と結論してはならない…経済刺激策の性急な削減には注意すべき」としている。私は需要管理をより重視しているけれども、この本は、読みやすく、過去の経済政策をバランスよく的確にまとめている。こうした基本的な事実認識をベースにした議論が日本には必要である。

 若田部先生は、現在の経済危機の懸念の一つとして、「早すぎる出口戦略」の失敗が繰り返されない保証はないとする。出口が見えてきた今、若田部先生もあとがきで触れているように、歴史に学ぶことで用心深くなり、未来を良くするように行動したいものである。

(今日の日経)
 HV部品共通化トラックと乗用車、日野11年投入。米、核使用を限定・新戦略公表、新型巡航ミサイル開発、トマホーク廃棄。医療や介護・雇用支える。米投資家リスク回帰。パナTV事業黒字に。エリーパワー工場稼動。エルピーダ先行。大機・潜在成長率は3~4%。米粉は小麦の2.5~3倍。飼料用米トウモロコシの2倍。経済教室・川淵孝一。

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