経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・成長は加速するのか

2023年06月04日 | 経済(主なもの)
 経済を成長させるって、どういうことなのか。門間一夫さんのRIETIの講演から読み取れる現実を理解して、政策に生かしたいものだね。すなわち、金融緩和や産業政策が無力なら、どうしたら良いのかということだ。門間さんも「ひょっとすれば」と言っているように、足下の景気からすると、低成長から脱却するチャンスが巡ってきたようにも思えるだけに、なおさらだよ。

………
 4月の鉱工業生産は、前月比-0.4と、若干のマイナスにだったが、動向としては、底打ちしたように見える。資本財(除く輸送機械)は+1.5、建設財が+1.8、消費財が+0.5だった。何が悪いかと言えば、自動車や半導体向けを含む生産用機械といったところだ。生産予測も、下方修正が続いているにせよ、5月が+2.3、6月が+4.4と堅調である。このまま行けば、4-6月期は、3期ぶりのプラスとなる。

 他方、4月の商業動態・小売業は、前月比-1.3とやや大きめのマイナスだった。それでも、1-3月期がかなりの伸びだったので、まだ上昇トレンドの範囲内にある。自動車の前期からの反動減、燃料の値下がりがある一方、インバウンドで各種商業は高めの伸びとなり、値上がりの続く飲食料品も順調だ。消費者態度は、4月の前月比+1.5に続き、5月も+0.6と上昇している。特に、雇用環境は、コロナ後の最高であり、10%消費増税直前の水準に並んだ。

 景気は、名目で構わないので、消費が伸びることが重要だ。売上が伸びるから、賃金を上げてでも人を確保しようとするし、設備投資をして供給を増やそうとする。門間さんは、企業の成長期待が重要とするのであるが、それを形成するのは目の前の需要だ。アベノミクスでは、賃金はそれなりに伸びても、可処分所得が増えず、並行して消費が停滞し、期待の形成が適わなかった。政策的に改めるべきは、ここになる。

 成長とは、製造業で実物的な生産性が向上し、その所得増がサービス業への消費に向い、人手不足が賃金増につながり、これが付加価値を増やし、サービス業での名目的な生産性を高めて、実現される。アベノミクスの失敗は、実物的な生産性の向上しか頭になく、緊縮財政で名目的な生産性の向上を阻害したからである。名目的な生産性の向上とは、すなわち、サービスの物価上昇であり、金融緩和で物価が動かなかったのも当然であった。

(図)


………
 2022年度の税収は、前年度決算から4.1兆円増になりそうである。地方は2.2兆円増、年金は0.7兆円増といったところになる。加えて、補正予算が剥落していけば、かなり急速な緊縮がかかる。こうした回復期の無自覚な緊縮が日本の成長と物価を抑制してきた。3兆円台半ばの少子化対策くらい、当面、負担増なしでやったらどうか。成長を高める経済政策の観点からは、それが必要とされている。


(今日までの日経)
 教育費格差「ワニの口」に 高所得層の支出、平均の2倍。育児+介護、働き世代直撃。出生率1.26、経済活力に危機 昨年過去最低 少子化、7年で2割減。少子化対策、2030年代初頭に予算倍増。昨年度の税収、過去最高ペース。少子化対策 首相、予算3兆円台半ば指示。インフレに真犯人か。中国景気、回復力に陰り 5月景況感2カ月連続50割れ。


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