経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

給付金による異様な消費の急上昇

2020年08月09日 | 経済
 6月の家計調査によれば、勤労者世帯の実質消費支出は前月比+10.7と急上昇し、コロナ禍前の11~2月と同レベルまで回復した。急上昇は、実収入が+20.2も増加したためだ。むろん、10万円給付金の影響によるものだから、一過性である。本当は、コロナ禍による収入減を補う「細く長い」形が望ましい。それができないのは、所得を幅広く定額還付する仕組を、日本が持とうとしないためである。

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 コロナ禍で急造された給付金については、遅いだとの、不透明だのと批判が渦巻く中、児童手当に上乗せする特別給付は、何の混乱もなく実施された。世間的には、「そんな給付してたの?」くらいだろう。市区町村が児童手当を給付するインフラを使っているから、公務員以外は申請不要で振り込まれる。政治や行政の対応が悪いと批判するのも結構だが、諸外国では当たり前の所得再分配が不備だから、混乱するのである。

 それを「IT化をせよ」とか、「消費税を下げろ」とか、あらぬ方向へ走り出すから、本当に頭が痛い。児童手当での給付の円滑さを見れば、IT化より制度の有無の問題だと分かるし、消費税を下げたら、再分配の必要がない人にバラ撒くことになって、必要がある人への再配分をかえって難しくしてしまう。それは、徒な消費を増やすだけで、成長のための設備投資にはつながらない。

 コロナ禍では、再分配のインフラがないために全員10万円となったが、家計調査を見ると、6月の家事家具用品が前月比+23.4の142.5にもなっている。まとまったお金が入り、白物家電やエアコンを買ったというわけである。しかし、コロナ禍で苦境に陥った飲食・宿泊業を助けるものではないし、国内の生産能力の増強にはつながらず、電子レンジのように輸入が増えるだけのものもある。消費の穴埋めにはなっても、一部に偏るのである。

 他方、6月の毎月勤労統計は、現金給与総額が前月比+2.4と7か月ぶりに上昇した。これで4-6月期は96.1となり、コロナ禍にあって、前期比-1.3で済んでいる。ただし、悪影響は、常用雇用にも現れており、前期比-0.9である。両者を掛け合わせたものに近い総雇用者所得は、前期比-2.6に及ぶ。こうして見れば、雇用を失った人、とりわけ非正規に重点的に再分配を行い、全般的な消費を維持するかが重要なことが分かるだろう。

(図) 


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 東京都の新型コロナの感染確認数は、この4日間の頭打ち傾向で、トレンドの増加が止まるところまできた。最高を次々更新するような急増を懸念していたたけに、ほっとしている。さらに、8/3以降の夜間の営業自粛の効果によって、減少に向かってほしいところだ。やはり、「夜の街」をいかにコントロールするかがカギである。生活を考えるとそこで働かざるを得ない人が多いことを踏まえると、所得の保障は不可欠であろう。加入する国民年金保険料の引落し口座へ定額を振り込むような仕組みが必要に思う。


(今日までの日経)
 中国、科学論文数で首位。コロナ新規感染、最多1591人。個人消費に所得減の重荷。中国対外融資が膨張。人口減 最大50万人 11年連続減 外国人は最多286万人。



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