経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・国を誤る中長期試算

2023年07月30日 | 経済(主なもの)
 7/25公表の中長期の経済財政に関する試算によれば、2023年度に税収が1.9兆円減少することになっている。名目成長率が+4.4%と見込まるのに、逆を行く不自然さだが、現実を無視して予算の数字を充てるという毎度のルールによるものである。これが将来の予測を算出する基礎になるので、結果がまるで役に立たないどころか、戦略を誤らせる元となる。日米開戦前に必敗の予測を誤魔化した昔を髣髴とさせる。

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 予算の数字を絶対視するローカルルールを廃し、名目成長率並みに税収が伸びるとして試算すると、下図の緑線のように上方へシフトする。来年度には基礎的財政収支の赤字が解消され、目標の2025年度には4.5兆円ほど過剰達成される。防衛費拡大は既に織り込まれているので、少子化対策は、負担増が要るどころか、1兆円上乗せできるくらいだ。

 こんなに余裕があるのに、負担増の関係で先送りされた非正規の育児休業給付とか、「年収の壁」の解消にもなる勤労者皆保険のための社会保険料の軽減とか、やらないままで良いのだろうか。少子化は「静かなる有事」で、今が「最後のチャンス」なんじゃなかったっけ。この国は、御都合主義の予測を振りかざして、また敗戦するんじゃないのかね。

 少子化対策で負担に触れないのは不誠実とする学者もいるが、当面は子供の数が急減して、学校教育費などが浮くという情勢が見えておらず、3兆円規模なら、そもそも、負担増の必要がない。加えて、税収増で財源が出てくる。これを、ある程度、還元しないことには、締まり過ぎて、成長を鈍らせることになりかねない。

 適切に経済を舵取りするには、財政の調節が不可欠である。それには、税収がどのくらいになるかの見通しが大切になる。今の中長期の試算では、財政を引き締めるために、赤字を怖がらせようとするポジショントークの文書にしかなっていない。試算は、末尾でEBPMの重要さを説くが、これ自体が話にならないレベルである。

(図)


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 どうせ、そんな文書にするなら、巡り合わせに過ぎないと言われようが、「岸田政権は、デフレ脱却に成功し、財政再建にメドをつけ、少子化対策という前向きな人的投資を可能にした」と評価してはどうか。それはウソにはならないし、「防衛費も少子化対策も増やすのだから、この政権は増税するに違いない」という国民の疑念を払拭して、支持を高めることにもなるだろう。


(今日までの日経)
 長期金利上限、事実上1%。円安・物価高、日銀動かす。最低賃金、平均1002円。賃上げ波及に「年収の壁」。働く高齢者、沖縄・九州急伸。7月の都区部物価、伸び鈍化。専業主婦世帯、3割下回る 共働き増加も非正規多く。

※7/30の日経の社説「視界不良の財政健全化へ改革の手抜くな」を読むと、文書の狙いどおりの内容過ぎて、御都合主義の試算がいかに戦略を誤らせるかがよく分かるだろう。

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