経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・株価は崩壊、その次に

2018年12月30日 | 経済(主なもの)
 今年の日経平均は、事実上、2万円を割って終わった。10月には24,000円に達したが、米国が着々と金利を引き上げているのだから、ダウとともに崩れるのは目に見えていた。あとは、実体経済の収益が株価を支えることになる。来年は、その実体経済を危うくするマネを敢行する予定だが、既にして、実体経済には衰えが表れてきている。年明けの輸出の動向次第では、消費を捨てる選択肢は、取り得ないものになるだろう。

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 11月商業動態の小売業は、前月比-1.1と大きく下げた。前月の急伸の反動があるとしても弱い。自動車、衣服といった景気上昇局面に伸びる項目が順調だった反面、価格が下がっている燃料や飲食などが打ち消した形である。ここから消費指数を占うと、10,11月平均の前期比は0~0.1にとどまるのではないか。10-12月期は、前期のマイナス成長からの戻りで、高い伸びが期待されていたが、厳しい状況だ。12月は、東京都区部のCPI総合が前月比-0.2だったので、物価低下による押し上げとボーナス増で挽回してほしいものだ。

 そうした消費を支える雇用を見ると、11月の新規求人倍率は、やはり2.40と頭打ちだった。特に製造業の衰えは明確だ。これでは、消費性向の回復も難しい。11月の労働力調査は、男性雇用者が前月比+19万人と、久しぶりに大きい伸びとなったものの、逆に女性が減り、全体では前月の減を埋める程度にしかならなかった。男性のアラ40、アラ50の就業率が停滞しており、まだリーマン前水準に達していない。「完全雇用だから消費増税ができる」といった向きは、雇用情勢に疎いのではないか。

 気になるのは、鉱工業生産である。11月は前月比-1.2、12月予測が+2.2となり、10月の+3.0と考え合わせれば、10-12月期は、十分、前期比プラスを確保できそうだ。問題は、そこから先で、輸送用機械の1月予測は-5.7と落ち、挽回生産の終わりと輸出の陰りを思わせる。電気・情報通信機械も、11月が-3.5にかかわらず、12,1月予測が-0.7,+1.9であり、この産業の実現率、修正率の下方修正傾向からして、なかなか厳しい見通しだ。中国の景気は下降局面にあり、株価の次は、年明けからの輸出の崩れが心配である。

(図)



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 中国の景気後退が怖いのは、多額の債務を抱えていることで、債務を裏打ちする実体経済の成長率が急に下がると、一気に不良債権化することである。不良債権の処理は、成長があってこそで、小泉政権下の日本のように、緊縮財政下で行おうとすると、金融と実体の両面で悲惨なはめになる。中国は緊縮財政の愚を踏むことはなかろうが、米国による輸出圧迫策は、似たような効果を生む危険がある。多くの識者が指摘するとおり、やはり、来年の日本経済のリスクは、輸出減退と円高だ。

 円高に対しては、金融政策での対抗は限界がある。消費再増税を促す形となった2014年10月末の黒田バズーカⅡは、一段の円安にはなったものの、輸出は伸びずじまいで、1年余りで剥落してしまった。その2016年初めからの円高局面では、1月末にマイナス金利を打ち出すも、まったく止まらず、大減税を掲げるトランプが11月に当選した後の円安転換まで待つこととなった。そして、今は円安水準にあるのだから、これからの円高進行に少しも不自然さはない。そうなると、しっかり内需を確保することが何より大事になる。

 幸い、内需は、省力化投資が進む自律成長の段階に入っている。わざわざ緊縮財政などせず、勢いを保てば良いだけだが、やっぱり、ここでも逆噴射というのが、いかにも日本的だ。詳しくは来週にするけれど、華々しくも上滑りな増税対策のウラで、緊縮が貫かれている。1-3月期の輸出は、春節で動向を見極め難いにせよ、変調がうかがわれたら、予算成立前うんぬんといった国会対策的メンツは捨て、野党も事を荒立てず、国民的経済の見地に立ち、政策転換を図ってもらいたい。外需なき緊縮など愚行である。 


(今日までの日経)
 新興国通貨18年は大幅安。人民元なお下げ圧力。セブン、省力化設備を順次導入。緩和相場が終幕、1年で市場一変。日経平均7年ぶり下落 大納会、終値2万14円。幼保無償化19年10月から 新制度1.5兆円、政府了承。


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