経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

9/4の日経

2013年09月04日 | 今日の日経
 結局、経済教室に消費増税の懸念派は登場せずなのだね。賛成派の理屈は共通していて、「予定通りしなければ、一気に信用が失われる」の一点張りだ。確かに、安倍総理が消費増税の必要性そのものを否定し、放漫財政を広言すれば、そうなるかもしれないが、極論というものだろう。相手の主張を極論に仕立てて否定するのは、よくある弁論術ではある。

 1年半間隔での1%、2%、2%アップなら、減収は15兆円のみ。それも足元の「予定外」の税の自然増収で十分補えるほどだ。これで財政への信用が失われるわけがない。ブラック・スワンどころか、無視できるリスクだ。そもそも、待てば額面償還のある国債と株式のバブルを同一視してはいけないし、インフレによる額面価値の毀損は現状では論ずるに値しない。

 賛成派には、「消費増税は国民や政治が嫌うから、やれるときに一気に」という心理があり、「景気が悪化しても、いずれ戻るのだから」という感覚がある。それで1997年にハシモトデフレをやって、慢性デフレという構造変化を起こしてしまった。経済構造を形成する設備投資は、消費動向を見て判断されるから、これを激変させるのは危険である。

 むろん、一気の消費増税の代わりに、低所得者へ5兆円規模の給付でもすれば、問題は生じないが、それなら、消費増税の幅を圧縮する方が効率的である。公共事業は供給が逼迫しているし、法人減税は海外への投資や配当に漏出するためにムダが多く、消費が減退するのに国内で設備投資をしようとは思わないだろう。

 1997年の際には株が売り込まれた。増税でデフレ予想が強まれば円高にも振れる。マーケットのリスクで心配すべきは、むしろ、こちらではないか。こういう企図を持つ投資家は、事前に警告を発したりはしないと思う。大事なのは、経済への信認である。それなくして、財政への信認はない。

(今日の日経)
 貿易保険の補償拡大。地方発・バリアアリー、正攻法と奇策。消費増税は賃金増カギ、短観で判断。ホンダ・総配当性向30%に。経済教室・金利暴騰リスク深刻、景気失速には対応可能・伊藤元重。せんべい汁・木村聡。
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