経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

日本の戦略的なカネの使いどころ

2011年10月05日 | 経済
 あまり脅かすつもりはないが、欧州危機が中国に波及した場合、筆者のイメージは、一気にゼロ成長にまで落ち込み、巡航速度に戻るのに数年、それも6%くらいにとどまるというものだ。こうなると、BRICsのGDPの半分は中国だから、新興国ブームの10年も転機を迎え、景色も様変わりするだろう。

 別に中国をくさすわけではなくて、日本も、高度成長から、通貨切上げ、公共投資増、インフレを経て、成長率が半減する経験をしており、同様になるのではというだけだ。中国は、かつての日本以上に輸出に頼っており、内需の大きさからすれば、6%成長になっても、何ら不思議ではないし、新興国の成長率は、本来、その程度である。

 これからは、内需を持つ国が強い。その意味で、インドネシアを始めとするASEANは有力である。日本との関係も良好で、補完関係もあるから、J-ASEANの時代が来るような気がする。気候は違えど、同じ「海のアジア」である。小ネタを言えば、フィリピンの最北の州は、日本の最南端より北にある。

 本コラムでは、ASEANを、よく取り上げてきた。インドネシアなどは、情報があふれているので、珍しさのあるミャンマーについて触れたりしている。今日の日経社説は、ミャンマーがテーマで、「改革を見極め、支援を再開すべし」とあるが、まあ、遅いな。既に、工業団地には各国の企業が殺到している状況だ。

 振り返れば、本コラムでは、2009/12/20にミャンマーへの期待感を述べたし、民政移管の総選挙が終わった直後の2010/11/9には、早くも支援再開を書いている。1年を経て、読みどおりの発展ぶりである。このコラムを長く読んでもらっている方には、多少、お役に立てたのではないか。もっとも、長く海外を回ることは、もう無理になってしまったがね。

 ところで、日経社説と言えば、昨日、「欧州基金に協力すべし」とあり、珍しく、提案めいたことを書いておると思っていたら、今日の一面トップである。分かっていたんだろう。欧州基金債の追加購入は、円建てでするようだが、ここは、介入で溜まったドルを使ってはどうか。筆者は、ユーロはドルよりオーバーシュートしていると思うので、投資としても悪くなかろう。

 他方、資源機構の権限強化の記事があるが、これこそ、介入によるドル資金が目当てではないか。これまでの石油公団を始めとする連敗ぶりを考えと、こういうところに使うのは、どうかと思う。そもそも、原発事故のペナルティーとして、資エネ庁は環境省に、原子力規制は文科省に持っていくべきだったろう。こうしてお役所は生き残っていくわけだ。

 また、沖縄の米軍訓練のグアム移転の記事もあるが、これに支払うドルは、生きた使い道と言えるだろう。いっそ、米軍基地の移転の見せ金として、100億ドルぐらい基金として積んで見せ、米国の機嫌を取るのも悪くないかもしれない。日米同盟の強化というのも、つまるところ、グアム拠点化への資金協力だったりする。

 ドル資金の活用策については、円高対策として出された折には、大して意味があるのかと思えたが、今日の3メガ銀へのJBICの融資という形をみると、欧州危機に伴うドル需要に対して、タイミングの良いものとなった。一石二鳥というわけで、このあたりは、日本の財政当局の賢いところだろう。

 最後に、協会けんぽの保険料アップの記事である。保険料率で見れば、0.7%の引き上げは小さく見えるが、保険料は7%増だ。協会けんぽの保険料総額は7兆円ほどだから、5000億円程度の負担増になる。復興増税の所得税増税の規模(年間7500億円)を考えても、なかなかに大きいカネの引っこ抜きぶりだ。日本の財政当局は、国民負担の全体状況なぞ視野になく、増税あるのみだろうがね。

 こうして、日経の各記事を眺めてみると、我が日本は、カネの使いどころ、カネの抜きどころが良く分かってないような気がする。まあ、いまさら、戦略がないと、なげいたところで、いつものことではある。 

(今日の日経)
 欧州基金債を追加購入へ2700億円。NY株が一時250ドル安。セブン経常最高益17%増。資源確保へ権限強化、探鉱権を独自に取得。FRB議長、米景気の下振れ警戒。社説・ミャンマーの変化促そう。嘉手納訓練を初のグアム移転。欧米銀、信用リスク上昇。ルネサス7.5%賃下げ。MBO過去催促ペース。円高対策3.3兆円融資枠を3メガ銀に。協会けんぽ発の10%超え。皆保険、ボストンの問いかけ。新日鉄がブラジルに高級鋼。経済教室・欧州危機の支援体制強化・有吉章。再考・年金改革の論点1・高山憲之。

※ 数日、休載します。

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