経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

世代間不公平論の誤謬

2009年08月27日 | 社会保障
 少子化が起こると、世代間の支え合いである賦課方式の年金制度には、給付よりも負担が大きくなるという深刻な問題が生じる。現在の出生率の見通しである1.26が続くと、子世代は親世代の6割に減ってしまうから、10÷6=1.67倍の負担をしなければならなくなる。この1よりも大きい部分が「損」ということになる。

 こんな「損」をするような年金制度には誰も入ろうと思わないから、「損」の解消なしに制度の存続はあり得ない。この「損」の解消は、数理的には簡単で、子のない親世代には年金を払わないことにするだけでよい。

 「損」の原因は、親よりも子が少ないために起こるのだから、多過ぎる親世代、つまり、子を持たない親世代に年金を払わないことにすれば、残る親世代と子世代は、1対1の対応になるから、「損」が解消されるのは自明だろう。

 他方、子のない人は、支えてくれる人がいないわけだから、老後に備えて自分で年金を積み立てておくほかない。つまり、子のない人にだけ、親の年金の支払いと自分の年金の積み立てという「二重の負担」をしてもらえばよいことになる。何も、子のある人も含めて全員が積立方式に移行する必要はない。

 むろん、現実の制度では、子のない人に年金を払わなかったり、二重の負担をさせたりはしていない。それゆえ、「損」が生じているわけだが、保険料の範囲で「損」をさせては制度が危うくなるので、「損」する部分は、税と積立金からの収入で賄うようにしている。基礎年金の国庫負担を2分の1に引上げることが、どうしても必要な理由はここにある。

 さて、子のない人に年金を払わないようにすれば、子世代は「損」することがないことを説明した。すなわち、「損」の正体は、子育てという人的投資を怠ったにもかかわらず、年金をもらおうとする行為にあるのであって、親世代全体が責任を持つべき問題ではないということである。

 したがって、本当は「世代間」に不公平は存在しないのであって、「子のある人と子のない人の間」に生じているのである。世代間の不公平論というのは、見かけだけの粗雑なもので、本質を捉えていない。そうした不公平論に振り回されるのは、もうやめるべきである。

(今日の日経)
 非課税化で海外利益日本に還流。薄型テレビ7月41%増。北朝鮮・丹東に領事支部。米新築住宅販売4か月連続プラス。ソフバン基本料5か月ゼロ。東電10月値上げ。三菱重、産業向けリ電池300億円量産。
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