自分が一番正しいと思いこんでいる男。
息子とのかみ合わない、
一方通行の会話。
この家族にこれから一体、
なにが起こるのかと
不安材料が一杯。
ある事件が起きる。
警察の威信を守るための
隠蔽工作。
供述の信憑性がないという理由をつけて
事件に目をつぶり、
犯罪をもみ消すように、
指令がおりる。
保身に走ろうとする一つの勢力。
しかし竜崎はもし、そのような画策をして
警察自体の権威が失われたら、
警察官僚の権威も失われるという
考えの上で反対する。
自分自身の警察官僚のポストが
失われるのは我慢ならないという理由で。
息子の犯罪をも隠蔽しない竜崎は、
感情というものには作用されない、
理性的な人間。
自分自自身の正義に沿って、
起こした行動が
警察機構の危機を救うこととなる。
緊迫感一杯で
ラストは爽快感が残りました。
最初はなんて
この男は変人なんだろう、そして
エリート臭くて嫌みな官僚だと思っていたのに、
読み進んで行くうちに、
結構、魅力的な人物に感じてきて、
自分のためにとはいいながらも、
結局は組織を救う為に
奔走する姿勢は、
すがすがしくもありました。
同じ警察小説の横山秀夫の震度0と比べても
こちらの方が読後感がいいです。
最後の(これからおもしろくなりそうじゃないか)の記述。
この主人公の正しい選択により
仕事も家族とも
うまくいきそうな気がしました。
06年第27回吉川英治文学新人賞。