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11月14日の最高裁判決には、注目すべき判示がありました。
(朝日から)
「医師に過失なしとした二審を破棄 医療過誤訴訟で最高裁」
 千葉県市川市の病院で腸のポリープの摘出手術を受けた同市内の男性(当時56)が術後に死亡したことをめぐり、遺族が同病院を経営する医療法人と医師に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が14日、あった。最高裁第三小法廷(藤田宙靖(ときやす)裁判長)は「医師の過失や死亡との因果関係について相反する内容の2通の鑑定書を十分に比較検討しなかった」として二審・東京高裁判決を破棄。審理を同高裁に差し戻した。
 判決によると、男性は00年4月下旬、結腸ポリープの摘出手術を受けたが、約1週間後に急性胃潰瘍(かいよう)による出血性ショックで死亡した。
 一審・東京地裁は「十分な量の輸血をしなかった過失がある」として約8000万円の賠償を命じたが、二審・東京高裁は「医師に過失はなかった」と判断して遺族側の請求を棄却した。
 第三小法廷は、一審が根拠とした「迅速な輸血をすれば救命の可能性が高かった」という遺族側提出の鑑定書について「合理性を否定できない」と述べた。そのうえで、「病院側提出の鑑定書をそのまま採用して医師に過失はない、とした二審の事実認定の仕方は違法だ」と結論づけた。

以下、最高裁HPから引用。
(判決要旨)
ポリープ摘出手術を受けた患者が術後に出血性ショックにより死亡した場合につき,担当医が追加輸血等を行わなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断に採証法則に反する違法があるとされた事例
(判決理由のアンダーライン部分)
「そうすると、4月29日以降のBの状態や前記2(3)の医学的見地から判断して、原審は、Y1において、Bに対し輸血を追加すべき注意義務違反があることをうかがわせる事情について評価を誤ったものである上、G意見書の上記イの意見が相当の合理性を有することを否定できないものであり、むしろ、E意見書の上記アの意見の方に疑問があると思われるにもかかわらず、G意見書とE意見書の各内容を十分に比較検討する手続を執ることなく、E意見書を主たる根拠として直ちに、Bのショック状態による重篤化を防止する義務があったとはいえないとしたものではないかと考えられる。このことは、原審が、第1回口頭弁論期日に口頭弁論を終結しており、本件の争点に関係するG意見書とE意見書の意見の相違点について上告人らにG講師の反論の意見書を提出する機会を与えるようなこともしていないことが記録上明らかであること、原審の判示中にG意見書について触れた部分が全く見当たらないことからもうかがわれる。このような原審の判断は、採証法則に違反するものといわざるを得ない。」



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