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良心的な,あまりにも良心的な裁判官

2006年12月09日 | Weblog
長年の親しい友であった竹中さんが亡くなって一週間,その突然の死にまだ心の整理がつかない。奥様やご子息達のお悲しみはなおいかばかりかと思われる。
 彼には「良心的」という言葉が一番相応しい。裁判に対する誠実で一途な取り組み,身を削り心をとぎすませて判決に臨む,その完璧さを求める姿勢に緩む時はなかった。大きな判決に向かった緊張の糸は,その完璧主義の故に,言い渡し後も,心休ませないまま,何かの拍子で永遠の安らぎへと誘ってしまったのか。
 高裁裁判長は,誰もすさまじい激務の中で,文字通り身を削る毎日と聞いている。事件処理の数に追われる日常は,言わず語らず競争の中にあるのだが,決して弱音を吐かず,黙々と記録と判決に向かうばかり。その姿はまことに孤独である。
 竹中さんの近くにいる友人の一人でありながら,その心の内を聞かせて貰って緊張を解きほぐし,慰めと励ましが与えられなかった自分が悔まれてならない。
(伊東武是)