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日本裁判官ネットワークブログ

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冤罪はこうしてつくられる 問われる裁判所の責任

2013年01月16日 | くまちん

再審に関する日弁連の連続シンポジウムの第二弾として

以下のシンポジウムが開催されます

「冤罪はこうしてつくられる 問われる裁判所の責任」(1月31日 日弁連会館)

http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2012/121109_130131.html

パネリストとして、当ネットワークの「重鎮」安原浩・元判事(現・弁護士)が登壇されます。

捜査側の諸問題が指摘される中、それを許容してきた裁判所にも厳しい目が向けられている今日

意義のあるシンポジウムではないかと思います。

お近くの方は是非ご参加いただければと存じます

                                            (くまちん)


不動産競売における暴力団排除

2013年01月05日 | くまちん

 

 1月4日付の読売新聞に、大要、以下の記事が載っていた。

 「暴力団の有力傘下団体が、全国の裁判所の競売で少なくとも32か所のビルなどを入手し、組事務所にしていたことが、日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会(民暴委)などへの取材で分かった。」「北海道、千葉、神奈川、岐阜、京都、大阪、広島、長崎の8道府県で1985年以降、計32か所の組事務所が競売で取得されていた。このうち北海道、岐阜、大阪、広島、長崎の5道府県・11か所では、稲川会、山口組、共政会系の組長の名前で堂々と落札していた。」「競売の入札参加規定に暴力団排除条項がないためで、組長本人が落札したケースも11か所判明。民暴委は競売に同条項を設けるため、民事執行法の改正を求める方針だ。」

 何故このようなことが起きるかというと、一つは「コンプライアンス」の強化により、各業界が「暴力団排除条項」を契約書等に盛り込むようになり、特に金融機関や不動産業界等は、厳格な対応をとっているからだ。暴力団排除条例で不動産取引が規制されている都道府県も多くなった。したがって、不動産業者を通じるような正規のルートでは、暴力団関係者がローンを組んで不動産を取得したり、賃貸したりすることが不可能に近くなっている。

 そんな中で暴力団が目をつけたのが、裁判所の競売だ。民事執行法で一定の制限(例えば、借金をしている本人等による落札はダメ。そんな金があるなら本来の借金を払うべきだから)がなされている以外は、実在することを証明する最低限の書類さえ提出すれば落札できるからだ。実際にある地方では、せっかく事務所周辺の住民が勇気をふるって立ち上がり、裁判所で暴力団事務所使用禁止の仮処分というものをとって、組事務所に退去してもらったのに、あっさり別のビルを競売で落札されてしまったという例がある。それなら、法律を改正すれば良いと思われるかも知れないが、ことはそれほど簡単ではない。仮に「暴力団構成員」は落札できない(売却許可を取り消す)と規定するにしても、裁判所には暴力団関係者のデータベースなどは存在しない(警察のデータベースをそのまま使うのは、それはそれで問題であろう)。かといって、落札者全員に「暴力団員でないことの証明」を求めるというのも無理があろう。お金が支払われた後で暴力団と分かったからアウトとなると、せっかく競売に掛けて借金を回収した金融機関などの債権者に迷惑がかかる。また、敵もさるもので、暴力団員とは認定されていない知人やいわゆるフロント企業の名前で落札することは当然対策として考えてくるだろう。

 現在の日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会の委員長は、私もよく存じ上げている方で、この問題に相当な熱意を持っておられることは理解しているが、かつて裁判所で不動産競売を担当するセクションにいたことがある私としては、目下「悩ましい問題だなあ」とため息をついているしかない状況である。

 この問題に、色んな叡智によるアドバイスをいただければと思う。(くまちん)


「明日」をひかえて

2012年12月15日 | くまちん

 明日は総選挙の投票日である。明日を控えて、ちょっと書いておきたいことが、あったので、ブログに掲げてみる。

 今回の総選挙で投票に行けることを、首を長くして待っていたご夫婦を1組、存じ上げている。布川事件で先般再審無罪判決を得て公民権を回復した桜井昌司さん、そして、「夫と一緒に投票所に行くこと」が夢であると語っていた妻の恵子さんである。

http://blog.goo.ne.jp/syouji0124/e/52b0b4c6f55174a33e24a9456e0d396f

 桜井さんのブログに対して、「選挙があるから、投票券が来るのは当たり前」というコメントがついているが、その「当たり前」の権利を回復するために、桜井さんは44年の歳月を要したのだ。それを踏まえて、この「投票所入場整理券」の写真を眺めると、胸をつかれる思いがする。

 「自分が投票するくらいで何も変わらない」という無力感に苛まれている人も多いかも知れないが、この写真を見て、「棄権」を思いとどまっていただければ幸いである。

 

 なお、明日は、最高裁判所裁判官の国民審査も行われる。最近は以前に比して、ネット上の情報も充実してきた。

 例えば、下記の毎日新聞の記事や、

http://mainichi.jp/select/news/20121214ddm010010009000c.html

 また、「裁判官の爆笑お言葉集」の著者長嶺超輝さんの作られた下記のサイトなどを参考にされてはどうだろうか。

http://miso.txt-nifty.com/shinsa/

                                (くまちん)


周防正行監督と修習生給費制問題 「それでもボクは修習生」

2012年12月12日 | くまちん

 

 周防正行監督の映画「終の信託(ついのしんたく)」が公開され、大沢たかおさん演じる検事の迫真的な取調べシーンが話題を呼んでいる(下記の公式ウエブページの予告編ご参照)。

http://www.tsuino-shintaku.jp/

その原作は、実在の「川崎協同病院事件」に取材した作家・朔立木氏(実は高名な刑事弁護人の筆名)の小説である。

 周防監督は、言わずと知れた「それでもボクはやってない」を作られた監督であり、2007年には当裁判官ネットワークにおいでいただき、この映画を巡る意見交換を行った。

http://www.j-j-n.com/opinion/s_reikai2007/index.html

その後監督は、取調べ可視化問題などについて議論する法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」のメンバーとなられ、最近の会議でも、井上正仁教授や椎橋教授の意見に疑義を唱えられるなど、実質的に審議に参加しておられる(例えば、7月開催の議事録http://www.moj.go.jp/content/000102078.pdfの4頁、19頁参照)。

 その周防監督をお招きして、きたる12月21日金曜日午後6時30分から、日弁連会館で「周防監督に問う法律家の育て方~給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める市民集会~」が開かれる。司法改革による法曹人口増のために、司法修習生の給費制は貸与制に切り替えられてしまったわけだが、修習生たちは、修習専念義務を課されてアルバイト等を禁じられて、貸与金で生活費を賄いながら日々の実務修習をこなし、多くがロースクール授業料での多額な負債を抱えながら、厳しい就職活動を強いられている現状にある。仮に給費制が復活したとしても、それだけで彼らの直面する問題は解決するわけでは無いが、周防監督からどのような示唆が得られるか、一聴の価値はあるだろう。

 http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2012/121221_2.html

 http://beginners-net.jugem.jp/?eid=460

                                                                                     (くまちん)


「世界」1月号

2012年12月09日 | くまちん

現在発売中の「世界」2013年1月号(岩波書店)には、震災対応等で司法関係者が注目すべき記事が多い。

特集1「旗印無き解散・総選挙」では、検察・小沢事件に関する魚住昭氏のインタビューが注目される。

特集2「東北復興-置き去りにされた生活再建」では

【住宅の確保】住宅復興とまちづくり──何が問われているか

  塩崎賢明 (立命館大学)

【震災と司法】「司法過疎」被災地と法的支援の課題

  佐藤岩夫 (東京大学)

などが注目される。特に後者の佐藤岩夫教授は、先日行われた日弁連司法シンポジウムの分科会に参加され、被災地における法的ニーズ・アクセスの問題について発言しておられた。そうした面からの示唆に富む情報が得られるであろう。

また、特集の枠からは外れているが、

●...「被曝を避ける権利」の確立を

  福田健治 (弁護士)、河健一郎 (弁護士)

も注目される。福田弁護士は、新62期という登録3年の若手ながら、原発事故対応について獅子奮迅の働きをしておられる。日弁連の会議にお子さんを連れてこられ、男子トイレにおむつ取り替え用の台が無いことを嘆かれるイクメンでもある。何よりも、彼は旭川修習で、旭川弁護士会の修習委員長としては、このような立派な「直弟子」の出現に大いに鼻が高い。

実は、日本裁判官ネットワークでは、来年2月9日に東京で「地域司法とIT裁判所」(仮)というシンポを行い、その中において福島県で震災対応に当たっている弁護士さんに講演していただくことを予定している。その構想を練るためにも上記各記事をしっかりチェックしておきたいと考えている。

その他、

●「東電女性社員殺害事件」が問いかけるもの  石田省三郎(弁護士)

も注目される。

なお、12月号の同誌には、先日のETV特集「永山則夫100時間の告白」を作られた堀川恵子ディレクターが同番組の内容を更に深めた記事「封印された鑑定記録が問いかけたこと」を掲載されているので、そちらも併せて参照いただければ幸いである。

http://www.iwanami.co.jp/sekai/

PS さては、「直弟子」が使いたかっただけだな、というツッコミはなしで    (くまちん)

 


家事調停官(パートタイム裁判官)の魅力とやり甲斐

2012年11月24日 | くまちん

 いわゆる「パートタイム裁判官」(弁護士が特定の日だけ裁判官を務める制度)は、私が弁護士になった16年前に、日弁連の司法改革の議論の中で出てはいたが、夢幻の制度に近い感覚であった。しかし、司法改革の動きの中で、民事調停官・家事調停官として実現し、既に相当数の弁護士が活躍していて、そのエピソードは「自由と正義」の「弁護士任官の窓」というコーナーで紹介されている。ただ、制度の立て付け上、基本的に調停を主宰するだけであり、従来の裁判官以上に調停に主体的に関わることは可能としても、家事審判法23条、同24条等の一部の例外を除いて審判(家事事件での判決に当たるもの)が書けるわけではないので、判断者としての醍醐味を味わうには物足りない面があったことは否め無い。

 しかし、来年1月施行の家事事件手続法によって、家事調停官の仕事の魅力・やり甲斐が大きく広がる可能性が出てきた。家事審判法24条の調停に代わる審判という制度は、家事調停官でも審判ができる数少ない場面だが、その活用できる範囲は狭く、乙類事件という家事事件の中でも中心的な部分では使えない制度だった。しかし、新法284条以下で新たに規定された調停に代わる審判は、その範囲を大きく拡大し、別表第2事件(乙類事件にほぼ相当)全般で活用が可能になった。この審判は、当事者が異議を申し立てると効力を失ってしまうので、その点は弱い制度ではあるのだが、労働審判が確定する確率が高いことなども考えれば、その活用によって審判による早期解決の余地が大いに広がる可能性が出てきた。具体的には、当事者側の事情でごく細部の詰めが合意できない事件で、家庭裁判所が審判を出すことで異議が出ずに解決するような局面が考えられる。

 この制度の活用いかんによって、家事調停官に魅力を感じて任官してくれる人、更にはそれをステップに本格的な弁護士任官を志す人が増えてくれれば幸いである。

                                                              (くまちん)


韓国視察報告 その1

2012年11月22日 | くまちん
韓国が「法曹一元」(弁護士や検察官を数年経験しないと裁判官になれないという制度)になったというので視察に行ってきました。最終的には10年弁護士等を経験しないと裁判官になれないという制度に変わったのですが、経過措置として10年の猶予期間が在り、最近の5年は、3年の弁護士経験で良い。しかも、うち2年間は、ロークラークという裁判所調査官のようなものを経験しても良いということになっています。そうなると、残りのたった1年しか弁護士をやる気がない裁判官志望者を受け入れる弁護士事務所があるのかという疑問も生じてきます(大手事務所などは、大いに受け入れるだろうと言っていましたが、状況は予断を許しません)。1年の「判事補他職経験」のような感じもします。
 
まずは、司法試験と弁護士試験を担当する法務部法曹人力課でのインタビューからご紹介します。
法曹一元になったのでロースクール修了者が受ける試験の名称は「弁護士試験」になりました。ロースクール修了者については司法修習を廃止してしまいましたので、まさに合格すれば、6ヶ月の研修期間はあるものの、すぐに弁護士になれるのです。検察官にもすぐなれるのですが、それなのに「弁護士試験」というのは、不思議な感じです。現に、裁判官になれるか不安なので検察官志望に人が流れたという噂もあります。なお、従来の司法試験も数年後まで徐々に合格者を減らして残ります。両方の管理委員会・考査委員は別々ですが、事務方は同じ、法務部の法曹人力課なので担当者に両方の話を聞きました(実は訪問直前に読んだ資料で初めて、二つの管理委員会が別であるということを知り、危うく話がおかしくなるところで、インタビュアーとして肝を冷やしました)
 
試験科目は公法系・民事系・刑事系・選択科目と言うところは日本と同じですが、韓国では法曹倫理の試験があります(点数はつけずに合否だけのようです)。韓国では旧司法試験でも行政法が必須科目だったので、その点の新味はないそうです。選択科目は、国際法・国際取引法・租税法・知的財産法・経済法・環境法・労働法です。従来の司法試験から法哲学と刑事政策が削られ、環境法が加わったそうです。
 
出題方法ですが、従来研修所でやっていた「白表紙」的な記録(50p程度のもの)を与えて、訴状・準備書面・弁論要旨などを書かせるものだそうです。そうであれば、事実認定的な要素も試験に入っているのか、ロースクールではそれに対応しているのかと質問したのですが、実体法・手続法の法律論的な質問しかしていない、とのお答えでした(時間の制約もあるのでそれ以上突っ込めませんでした)。口述試験は、司法試験にはあったが弁護士試験では廃止したそうです。理由は数の問題と言うよりも、必要性で、弁論能力・発表能力などはロースクール修了後に研修などで高められるべきものとの認識だそうです(本来なら口述で落ちていたはずの人が受かってしまっているという議論は、韓国にはないそうです)
 
ロースクール定員2000人中、今年の第一回試験では、1665名が受験し、1451名が合格。87.15%の合格率だったそうです。事前に法務部は、ロースクールで厳正な学位管理が行われることを前提に1500人以上合格させる、と方針を公表していたのですが、実際は1500人を切り、合格最低点は1667点満点中の770点だそうです(この結果については、旧司法試験で受かった若手弁護士からの強い批判が出ていると別のところで聴きました)。それにしては受け控えが多いように思うので質問したところ、330人余りのうち、約100人は退学者、230人の大半が落第者だろうと言うことでした。日本で行われている考査委員の採点雑感公表のようなフィードバックは、試験の中立性を害するとの考えと、考査委員を矢面に立てさせないとの配慮のために想定していないとのことでした。1500人は、韓国での法曹の市場規模・成長を見越してシュミレートした1600-1800人という数字を前提に決定したそうです。あと、ロースクール制度を定着させるためには70-80%の合格者を出さないと定着しないという理由もあるそうです。来年も合格者1500人という指針は発表されていますが、再来年以降は、ロースクール教育の状況や弁護士の社会進出状況、社会的需要を見ながら方針決定するそうです。
 
韓国でも、日本同様に弁護士試験の結果は個人に公表されるはずだったのですが、直前に法案が修正され、弁護士試験の成績は「何人にも」公開しないという法律になったそうです。だから、同じ法務部の検察官採用の部署にも開示していない、裁判所の裁判官採用の判断材料に提供されることもないとのことです。その理由は、個人の成績開示は、ロースクール間の競争をあおり、試験学習重視、実務教育軽視になって現場が混乱するからと言う理由だったそうです(各校ごとの合格者数がバレるのに、それ以上に個人成績で競争があおられることはないだろうと思うのですが)。今、それに対して、地方のロースクール出身者(事情でソウルのロースクールに行けなかった者)が、むしろ就職難の中、ロースクールの格付けで選別されて不利になる、という不満が増幅し、成績不開示は憲法違反であるという訴訟が起こされているそうです(ご存じのように韓国には大法院を差し置いて頻繁に違憲判断をする憲法裁判所があります)。
 
なお、韓国には予備試験はありません。これについては国会で法案が否決された経緯があるようです。インタビューに応じてくれた弁護士試験事務方の方は、日本の予備試験に興味津々らしく、逆に予備試験についてロースクールを破壊することにならないかと逆質問されました。来年、予備試験導入について再度議論しようという合意があるそうです。
 
とりあえず、今日はここまで、この後司法研修所編をお楽しみに

永山則夫ふたたび

2012年10月13日 | くまちん

 明日14日日曜日夜10時からの「ETV特集」は、「永山則夫 100時間の告白-封印された精神鑑定の真実」が放送される。2009年にこの枠で放送されて翌年のギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した「死刑囚永山則夫」や、「死刑裁判の現場」などを手がけ、昨年は放送ウーマン賞も受賞された堀川恵子ディレクターによる番組である。

 詳細は、番組のウエブページをご覧いただきたい。

 http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2012/1014.html

 放送に際して、堀川さんからメッセージをいただいたので、ご本人の承諾を得てここに掲載させていただく。

 (以下引用)

 今週末に放送される番組のお知らせです。

   ▼NHK・ETV特集 10月14日(日)22時~23時半(89分)

    「永山則夫 100時間の告白~封印された精神鑑定の真実~」

 2009年、同じ永山事件をテーマに制作した番組は、

 逮捕後の獄中28年間の永山氏を描きました。

 その時、重要なテーマを遣り残していました。

 「少年は、なぜ事件を起したのか」

 この間、永山自身がある医師に語った膨大な録音テープを分析し、

 改めて事件の背景に浮かび上がった「家族」と「精神鑑定と司法」、

 二つのテーマに向き合いました。是非ご覧下さい。

 (引用終了)

 裁判員裁判の三年目検証に際して、死刑の評決要件も論点に掲げられ、また、少年の重大犯罪や、精神鑑定が問題となる裁判員裁判も増えている今日、大いに見られ、議論されるべき番組だと思う。

 かつて放送された「死刑囚永山則夫」については、瑞祥さんがこのブログで取り上げておられる。

 http://blog.goo.ne.jp/j-j-n/e/4805584d7e6b1a91748b05bd939b81c8

 また、上記の番組を書籍化した「死刑の基準」については、私がこのブログでご紹介している。

 http://blog.goo.ne.jp/j-j-n/e/10b3294b254f7cb52a911efebee2d298

 同じ堀川さんのETV特集「死刑裁判の現場」について触れた、私のつたない文章もある。

 http://blog.goo.ne.jp/j-j-n/e/8b92082d24f0ff02cb37416fd7ccca6f

 併せて、ご参照いただければ幸いである。

                              (くまちん)


9月15日土曜日は司法シンポジウム

2012年09月03日 | くまちん

9月15日(土)には、東京霞ヶ関の弁護士会館において第25回司法シンポジウムが開催されます。

今回のシンポジウムでは、「震災復興と司法の役割」という全体会テーマの下、
第1分科会「震災復興に向けての弁護士の役割と立法提言」、
第2分科会「地域司法の充実を目指す新たな視点と取組-3・11を契機として-」の
2つの分科会を開催し、震災復興と司法の役割について考える内容となっています。

第1分科会では、震災復興に向けて、我々法律家がまさに困っている方々にきちんと「法の支配」を及ぼすことが出来ているのか、仮に不十分であるとするなら効率的な解決策は何かが、問われることになるでしょう。

第2分科会では、弁護士のいわゆるゼロワン問題が解消した中で、果たして裁判所が十分に地域のニーズにこたえる態勢になっているのか、人的・物的基盤をもっと充実させる必要は無いか、度々指摘される支部の機能不全の解消策はないか、その手段として地域の有識者を委員に迎えた地裁委員会や家裁委員会は十分に活用されているか、といった視点から議論が進められます。原発訴訟で著名な井戸謙一・元判事もパネリストとして登場されます。
なお、この分科会では、「司法過疎」を問題提起する映像が上映され、私の所属する地域の風景も流れるようです。


私も会場の片隅で、議論の行く末を見守りたいと思います。
http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2012/120915.html

(くまちん)


民事執行の機能保全-執行制度に「法の光」を

2012年06月25日 | くまちん

  過日、地元弁護士会の若手を中心とした判例勉強会で、銀行預金差押えに関する最高裁平成23年9月20日決定について議論を交わしました。ご案内の通り、メガバンクの預金差押えについて、支店番号順に当該債務者の全預金を差押えるという申し立てを却下したものです。高裁段階では認める決定が複数出ており、一部には最高裁の判断に対する期待感があったのですが、残念な結果に終わりました。

  その際、若手弁護士から言われて愕然としたことがあります。「裁判官は、せっかく苦労して判決を書いたのに、最高裁にその執行力をそぐような決定を書かれて悔しい思いはないのでしょうか」。そうです。若手弁護士ひいては依頼者から見れば、お金を払えという判決を書く裁判官は、その後のことについても十分思いをいたしてくれている、と思うはずです。

  ところが、自分の判事補時代を顧みても、そのような発想はありませんでした。和解が成立すれば、確かにそれは嬉しいのですが、判決の場合は書いてしまえば終了です。控訴審でどうなるかは気になりますが、確定後どうなったかなどは、よほどの案件でないと気にしません(小さい庁であれば、代理人弁護士を通じて事実上聞くことがあるでしょうが)。執行事件は、訴訟事件とはまた別のジャンルの事件として、その特殊なルールの中で処理をします。かくいう私も、15年以上前の裁判官時代には、同じ金融機関の三つの支店に順番を着けて差し押さえるという申し立てを却下し、高裁で逆転されたという経験があります。執行裁判所の論理からすると、じゃあどこまで支店の数を増やすことを認めるのかという境界線が事実上明確でなくなると考えたからです。

  韓国の弁護士にTwitterで問い合わせたところ、韓国の債権差押え制度では、金融機関さえ特定すれば良く、支店の特定を求められることはないそうです(まあ、色々法制度の違う韓国では、日本と違って同一人の口座把握が簡単にできる事情があるのかもしれませんが)。

  弁護士法23条の2に基づく照会という制度があって、各銀行にこの人にはどの支店に預金があるのか照会するという方法もありますが、メガバンクは預金している人(つまり判決で支払義務を負っている人)の同意がないと、回答してくれません。

  また、そもそも差押えをしようとしても、その人にどんな財産があるのか判らないという場合に、財産開示手続と言って、正直にどんな財産があるのか明らかにするように求める制度があるのですが、日本では殆ど使われていません。これに対し、韓国では、財産明示宣誓手続というものがあり、従わないと監置と言って身体を拘束される可能性があるためか、よく利用されているようです。2009年の統計だと、韓国の財産明示命令申立てが13万4072件であるのに対し、日本の財産開示申立ては894件しかないそうです(金融商事判例1378号1頁)。

  こうした点で、国民に裁判を起こしても相手からお金を回収できる可能性が高いですよと言うメッセージを発しないと、国民はせっかくアクセスした司法手続に愛想を尽かして二度と使わないと思わないかと心配になります。

 

 PS この原稿は、佐藤幸治先生の講演の前には概略完成させていたものですが、ブログでの先生の講演の宣伝を優先させようと、掲載を遅らせていました。佐藤幸治先生の講演に関しては、福岡の家電弁護士さんのような反応(http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-11282244179.html)もいただいているところであり、当ネットワーク関係者にも色んな考え(私の佐藤幸治先生宛の手紙は、一番佐藤先生をびびらせたそうです。笑)があることをお示しする意味でも、少し加筆して掲載させていただきました。


トノに降る雨

2012年05月06日 | くまちん

 4月後半に所用で東京に行った際に、昼間に空き時間ができたので、東京ヴォードヴィルショーの久しぶりの新作「トノに降る雨」を三軒茶屋のシアタートラムで鑑賞した。

 東京ヴォードヴィルショーは、地元の演劇鑑賞団体で「竜馬の妻とその夫と愛人」を鑑賞したのが最初で、その際、あめくみちこさん(「カーネーション」の周防の娘役は良かったなあ)の実物の美しさを含めて、いたく感激したのであるが、それ以来数回の例会では私の評価は下がり基調、どうも「竜馬」を超える作品に出会わないと感じていた。

 しかし、今回は、久しぶりの新作と言うだけあって、なかなか笑わせて泣かせるお芝居に仕上がっており、私の中でも「竜馬」はしのがないまでも、二番目に良いくらいの評価である。できれば地元の演鑑で取り上げて、多くの人に見てもらいたいと思わせる。

 時は、織田信長が尾張国をようやく統一しようという頃の設定。織田家の近隣の領主が主人公、ちょっとした運命のいたずらからその地位に就いた男が、極限的な状況の中で苦悩し、ついには領民のために重大な決断をするにいたる。施政者として危急時に領民のために何をなすべきなのか、今次の社会状況に鑑みても、胸に迫るものがある。弁護士急増の弊害が顕れる中、日弁連の舵取りに右往左往する執行部を重ね合わせたりして。

 とはいえ、いささか腑に落ちない点も残る。ラサール石井氏の演出は、特に前半でベタな笑いを狙っているが、ちょっとベタ過ぎるきらいが。また、パンフレットによれば、台本は稽古場に徐々に届けられる形式で作られ、つまり最初から各配役の展開が定まっていなかった面があるらしく、それが足かせとなったかのような箇所もある。すなわち、後半の展開を考えれば、領主のキャラ設定が、前半ではちょっとベタ過ぎやしないか、後半と落差がありはしないかと芝居の展開につれて気になってしまう。

 何より、今回の芝居、B作氏は主役を譲って脇を固めるべきではなかったか、B作氏は、「いい人」よりも「悪い人」で光るのだが、と生意気にも思う。

 舞台を引き締めているのは、何と言っても領主の母親役の松金よね子さんである。地方巡業に出た場合、よね子さんは来てくれるのかと心配になる。井之上隆志さんの存在感もすごい。栗田桃子さんも、「父と暮せば」とはかけ離れたコメディエンヌとして健闘している。あめくさんが、新国立劇場の「負傷者16人」に客演中で見られなかったのが残念(今度東京に行ったら、これを見よう)。

 山口良一演じる落武者による前説が凝っている。「このような場所で携帯電話の電源を入れておくと、敵に居場所を察知されてしまいます」と言って、実際に携帯に出て、敵に切られる芝居をする。このネタ、うちの演鑑の前説で使えるかな。笑。実際、マナーモードにしていたって、携帯の画面が光るだけでも、気になるものなのだ。ちょっとした気配りで楽しい観劇。

(くまちん)


カーネーション

2012年03月26日 | くまちん

 最近の私の生活は、朝の連続テレビドラマ「カーネーション」を中心に回っていると言っても過言ではない。何しろ、朝7時半にBSで見て、8時に地上波で見て、ついでに「あさイチ」の司会陣の反応を確かめ、お昼は自宅のリビングで昼食を取りながら地上波の再放送を見、時にはBS夕方の再放送を見る。土曜日の午前中にうっかりテレビをつけると、BSで一週間をまとめて見てしまう。こんなことは「ちりとてちん」以来である。

 最初はもちろん、小原糸子が一世一代のはまり役と言うしかない尾野真千子さんの魅力からである。彼女の非凡な演技力は、老作家原田芳雄と渡り合う純文学の編集者(NHK広島「火の魚」)、天才子役芦田愛菜を虐待する母親(日本テレビ「mother」)、飛行機事故を追跡する女性地方紙記者(映画「クライマーズ・ハイ」)等、全く同一人物とは思えない様々な作品からうかがうことができる。

 そして、兵庫県西宮市が生んだ天才渡辺あやさんの脚本と、それを更に魅力的にする演出、スタッフワークの妙。二度三度見て初めて得心のいくシーンや細かい仕掛けの発見がたまらない。

 もちろん最初からこんなに熱心に見ていたわけではない。しだいに主人公が自分の年齢に近づくにつれ、どんどんのめり込み始めたのだ。主人公が長女への店の承継を考え始めるのが、ちょうど51歳、今の私と同じ年齢である。主人公と同じ自営業者として、もうこのあたりからドラマへの傾斜が止まらない。

 そして、世間を騒がせた主役交代。色々言われたが、私はこのドラマチームの力を信じていたので、夏木カーネーションを引き続き注視し続けた。もちろん最初は、岸和田弁以前に関西弁としてどうなの、というイントネーションが耳障りだったし、舞台女優ゆえかと思われる張った台詞の発声に違和感を拭えなかった。しかし、夏木さんの鬼気迫る「老い」の演技に主役交代の必然性を納得し、そこから「反転」してゆくドラマ展開にますます引き込まれ、もうイントネーションなどどうでも良くなってしまった。

 夏木さん自身も、尾野さんが快走しているのを見ながら、やりにくさを感じていたに違いない。記者会見でも「アウェイ感」という言葉を率直に口にしていた。しかし、ふたを開けてみれば、見事な逆転ホームラン。先週の「奇跡」では、何度泣かされたことか。あと一週間で終わるのが、惜しくてたまらない(と言いながら、ミムラさん目当てで次の「梅ちゃん先生」も見続けそうなのだが)

閑話休題

 裁判官の転勤時期である。弁護士としても、特に地方の小さな裁判所を舞台にする田舎弁護士にとっては、四月にどんな裁判官が赴任してくるのか、どのような訴訟指揮を見せるのかは、一大関心事である。着任当初は、着任した裁判官の一挙手、一投足が注視されているといっても過言ではない。まして前任者の「評価」が高かったりすると、露骨に「変わって残念」感が漂っているかもしれない。まさに、「アウェイ感」であろう。

 着任当初は記録読みに追われ、ゴールデンウイークなどないに等しいが、そうした中、プレッシャーをはねのけ、自分らしさを徐々に発揮し、地元の弁護士の信頼を勝ち得ながら、多くの裁判官に、おのが「花」を咲かせていただきたい。そう願っている。

 PS 「カーネーション」のDVDは、第8週までの分が既に発売されている。私も早速買い求め、あまり熱心に見ていなかった初期を復習し始めている。7月に全巻が発売される頃には、ひとかどのマニアとなっている所存である。


「キネマの天地」

2011年11月21日 | くまちん

  今年の9月30日,新宿紀伊国屋サザンシアターで,こまつ座の「キネマの天地」を鑑賞した。

 井上ひさし初期作品で,同名の山田洋次監督の映画とは設定も筋立ても異なり,ミステリー仕立てで始まる。戦前期の設定だが,そうした社会背景が出てくることもない。純粋に四人の女優の個性,相互の争いと連帯感?を楽しめる喜劇になっている。

 井上ひさしが役者論を語った舞台と見ることもできる。映画俳優と舞台俳優の演技の仕方の違いなど,改めて意識させられる示唆も散りばめられている。

 登場人物の脇役俳優に印象的なセリフがある。「役者は,役をもらえてこそ役者」といったニュアンスを切々と訴えるのだが,今時の社会は,若者にも,そしてお年寄りにも,なかなか腕を振るう「役」,「場(舞台)」を与えるのが難しくなっている。個人の色々な努力も,それを発揮する「場」と,それを的確に批評し育てる「観客(育て手)」がいないと,なかなか結果には結びつかない。今見ると,初演当時と違ってすっかり世知辛く余裕を失ってしまった我々の社会について,そうしたことをホロリと感じさせる作品である


児玉清さん追悼都々逸

2011年05月18日 | くまちん

 児玉清さんが亡くなられた。

 当ネットワークで,児玉さんに一番ゆかりの深い方と言えば,何と言っても「アタック25」に弁護士時代に出演された竹内浩史判事である。ここはひとつ,竹内さんのブログから追悼都々逸が発信されるのをお待ちしようと思っていたら,お忙しい竹内さんは,訃報を知らずに別ネタを既に発信されていた。

 そこで,ここは競作をしようと,不肖私が試作してみた。

 「四角四面の パネルの上で 角の立たない 名司会」

 「ブックレビューが 心に響く こだまでしょうか 清し朝」

 どうも作りなれないので,駄作しかできない。

 某ベテラン裁判官からもひとつ頂いた。

 「『ご存じない』の 一声受けて 物知りたちも 悔し顔」

 そこにいよいよ日付変わって真打ち登場

 5×5のマス目にかけて,各区切りの頭文字を「ご(こ)」にするというワザを見せていただいた

 「5年ルールで ご無沙汰をして 『ごめん』会えずに 児玉さん」

 http://blog.goo.ne.jp/gootest32/e/93dd76afe9d75f937a6a7562aa8cd080

 竹内さんの「アタック25」出場時のエピソードはこちらに

 http://www.nagoyananbu.jp/news/020421-170414.html

 今度は裁判官として出場したいという竹内さんの夢が,児玉さんの生前に叶わなかったのは,誠に残念である。

 (くまちん)


家族法廷

2011年05月05日 | くまちん

 NHK-BSの「グッド・ワイフ」が終了した後,夫婦で楽しめるドラマがないなあと思っていたら,先月末に始まったBS朝日の「家族法廷」に夫婦ではまりかけている。

 http://www.bs-asahi.co.jp/kazokuhoutei/

 ホームページを見ると,日本の裁判官は使わないトンカチが目についてしまうので,どうかなあと思って見始めたのだが,昭和の良きホームドラマの香りが心地よい(ただ,冒頭の法廷シーンの法律監修は詰めた方が良くはないか。地裁と家裁がゴチャゴチャになっているとしか思えず,気になってしまう)

長塚京三さんが演じるベテラン裁判官は,家庭を顧みない仕事人間で,家事・育児万端を委ねていた妻を失ったばかり。そこにミムラさん演じる訳ありげな家政婦さんがやってくる。長女夫婦と二女・長男と同居する大家族内の紛争に,ベテラン裁判官が毎度頭を悩まされる物語である(と書くと,耳の痛い人が多そうだ。)。現に長塚裁判官も,法廷で家事紛争の当事者を諭しながら,ハッとして言葉につまるシーンがある。

 昨夜放送の第二回は,離婚届用紙がもたらすドタバタ劇で,ミムラの熱演に涙がこぼれた。「相棒」の鑑識役として存在感をましている六角精児さんが,存在感の薄い長女の夫役として良い味を出している。長女役の松永玲子さん,二女役の岩崎ひろみさん,親戚のおばさん役の岡本麗さんと芸達者が脇を固めている。

 これから,毎週水曜日の夜が楽しみになりそうだ。(くまちん)