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「死刑の基準」

2010年04月04日 | くまちん
 先日再放送されたETV特集「死刑囚永山則夫」のディレクター堀川惠子さんが,「死刑の基準」(日本評論社)という本を出されている。再放送の後に読了したが,番組をご覧になって永山事件に関心を持たれた方には是非手に取っていただきたい。若い法律家の方々にも読んでいただきたい。
 1時間半のドキュメンタリー番組というのは,テレビ的には決して短いものではない。しかし,番組の主旋律となった永山死刑囚の元妻和美さんに関しても1時間半では伝えきれなかったエピソードが一杯あることに,この本で驚かれるだろう。テレビドキュメンタリーという表現形式の難しさも感じさせられる。あの番組を作るために膨大な永山死刑囚の書簡に全て目を通され,色んな方に会われた堀川さんの努力にも頭が下がる。
 この本で注目されるのは,番組ではわずかにしか触れられていないこの事件に関与した元裁判官たちに対して,堀川さんが綿密に取材されていることであり,また,元裁判官側も取材に応じておられることである。
 高裁無期懲役判決の船田三雄裁判長について,当初弁護人からかつてチッソ川本事件で「弁護人抜き裁判」を強行したタカ派裁判官として警戒されていたこと(「弁護人抜き裁判って何?」というそこのお若い法律家の方,是非読みなさい),若い時期に経験した二つの事件から死刑判断のあり方について疑念を抱いていたこと,永山判決直後に別の事件で永山判決との均衡にも触れながら死刑を言い渡していることなど,世評言われたのとは異なる複雑な実像が描かれている。主任裁判官であった櫛渕理裁判官が,退官後の弁護士人生を引き受け手の乏しい外国人の国選弁護に費やされたこと,何より元妻の和美さんを自宅に招いて対面されていたことに驚かされた。
 私が感銘したのは,一審死刑判決に関与された豊吉彬・元判事,最高裁差戻判決での担当調査官であった稲田輝明・元判事が堀川さんの取材に丁寧に応じておられることである。稲田さんは刑事裁判官から民事裁判官に転じた理由まで,堀川さんに率直に語っている。稲田さんの「9つの量刑因子だけを取り出して,これをもって『永山基準』と呼ぶのは判決の精神を理解しないものではないでしょうか。」という指摘は重く受け止められるべきであろう。
 高裁判決当時,船田判決に激怒したという土本武司・元検事が,今日,死刑についての裁判官の全員一致を要求することを示唆した船田判決を再評価すべきであると考えておられることも注目される。
 惜しむらくは,やや誤植が目につくところが残念である。
(くまちん)

2 コメント

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