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  今年の9月30日,新宿紀伊国屋サザンシアターで,こまつ座の「キネマの天地」を鑑賞した。

 井上ひさし初期作品で,同名の山田洋次監督の映画とは設定も筋立ても異なり,ミステリー仕立てで始まる。戦前期の設定だが,そうした社会背景が出てくることもない。純粋に四人の女優の個性,相互の争いと連帯感?を楽しめる喜劇になっている。

 井上ひさしが役者論を語った舞台と見ることもできる。映画俳優と舞台俳優の演技の仕方の違いなど,改めて意識させられる示唆も散りばめられている。

 登場人物の脇役俳優に印象的なセリフがある。「役者は,役をもらえてこそ役者」といったニュアンスを切々と訴えるのだが,今時の社会は,若者にも,そしてお年寄りにも,なかなか腕を振るう「役」,「場(舞台)」を与えるのが難しくなっている。個人の色々な努力も,それを発揮する「場」と,それを的確に批評し育てる「観客(育て手)」がいないと,なかなか結果には結びつかない。今見ると,初演当時と違ってすっかり世知辛く余裕を失ってしまった我々の社会について,そうしたことをホロリと感じさせる作品である



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