北海道新聞11/02 05:00
アイヌ民族の彫刻家、故砂澤ビッキさんが作った存在感のある大型の木彫が、洞爺湖芸術館の展示室でスポットライトを浴びる。
「私もここで仕事する前は、そんなすごい人の作品があるとは知らなかった」。芸術館を運営する洞爺湖芸術館友の会の久保田章子(62)さんは苦笑する。
■企画展で入館増
芸術館は2008年、洞爺湖町が合併前の旧洞爺村役場を改修して開設した。翌年、町の臨時職員として受け付けで働き始めた久保田さんは「お客は来ないし、芸術館を知らない地元の人は多かった」と当時を振り返る。08年の入館者数は2546人と町の計画を下回り、10年は1740人にまで落ち込んだ。
「芸術館を盛り上げよう」と、久保田さんや旧洞爺村に移住していた元東京都庁職員の故佐藤安弘さんら地域住民15人が09年、友の会を設立した。佐藤さんが会長に就いた。作品の展示替え作業を手伝ったり、敷地内に花を植える活動などから始めた。
さらに、画一的な常設展示だけでは魅力がないと、後志管内倶知安町や黒松内町の画家から作品を借り、企画展を開いた。「芸術館祭り」を開催し、写真展やビッキさんの作品の制作体験講座などを行った。こうした活動で12年の入館者数は2479人に回復した。
■地元認知度増す
13年から友の会は指定管理者として、芸術館を運営するようになった。その年、佐藤さんが体調を崩したため、設立当初から会員だった三島邦代さん(72)が友の会会長と芸術館の館長に就いた。
指定管理者になってからは年5回ほど企画展を開いてきた。展示するのは「私たち素人が見て良い作品」を基準に選んできた。ただ、美術品の扱いなどに専門知識は必要で、三島さんは自費で70歳の時、東京の大学で半年間講座を受け、学芸員の資格を取得した。
コンサートや講演会などの催しも積極的に開催し、17年の入場者は4152人にまで増えた。三島さんは「やっと地元で認知度が広がってきた」と話す。
ところが、友の会は今年限りで芸術館の運営を止める。現在の会員64人のうち、地元住民約30人は60代後半から70代が中心。三島さんは「事前に作品を見に行ったり展示作業があったり、企画展は体力勝負。高齢化で難しくなってきた」と運営継続を辞退した理由を説明する。
町は来年から芸術館を直営に戻す方針。芸術館担当の学芸員として山本みどりさん(36)が採用され、10月から引き継ぎを受けている。山本さんは「友の会がもり立ててきたすてきな芸術館。これからも町民に愛してもらえるようがんばりたい」と意欲を示す。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/244020
アイヌ民族の彫刻家、故砂澤ビッキさんが作った存在感のある大型の木彫が、洞爺湖芸術館の展示室でスポットライトを浴びる。
「私もここで仕事する前は、そんなすごい人の作品があるとは知らなかった」。芸術館を運営する洞爺湖芸術館友の会の久保田章子(62)さんは苦笑する。
■企画展で入館増
芸術館は2008年、洞爺湖町が合併前の旧洞爺村役場を改修して開設した。翌年、町の臨時職員として受け付けで働き始めた久保田さんは「お客は来ないし、芸術館を知らない地元の人は多かった」と当時を振り返る。08年の入館者数は2546人と町の計画を下回り、10年は1740人にまで落ち込んだ。
「芸術館を盛り上げよう」と、久保田さんや旧洞爺村に移住していた元東京都庁職員の故佐藤安弘さんら地域住民15人が09年、友の会を設立した。佐藤さんが会長に就いた。作品の展示替え作業を手伝ったり、敷地内に花を植える活動などから始めた。
さらに、画一的な常設展示だけでは魅力がないと、後志管内倶知安町や黒松内町の画家から作品を借り、企画展を開いた。「芸術館祭り」を開催し、写真展やビッキさんの作品の制作体験講座などを行った。こうした活動で12年の入館者数は2479人に回復した。
■地元認知度増す
13年から友の会は指定管理者として、芸術館を運営するようになった。その年、佐藤さんが体調を崩したため、設立当初から会員だった三島邦代さん(72)が友の会会長と芸術館の館長に就いた。
指定管理者になってからは年5回ほど企画展を開いてきた。展示するのは「私たち素人が見て良い作品」を基準に選んできた。ただ、美術品の扱いなどに専門知識は必要で、三島さんは自費で70歳の時、東京の大学で半年間講座を受け、学芸員の資格を取得した。
コンサートや講演会などの催しも積極的に開催し、17年の入場者は4152人にまで増えた。三島さんは「やっと地元で認知度が広がってきた」と話す。
ところが、友の会は今年限りで芸術館の運営を止める。現在の会員64人のうち、地元住民約30人は60代後半から70代が中心。三島さんは「事前に作品を見に行ったり展示作業があったり、企画展は体力勝負。高齢化で難しくなってきた」と運営継続を辞退した理由を説明する。
町は来年から芸術館を直営に戻す方針。芸術館担当の学芸員として山本みどりさん(36)が採用され、10月から引き継ぎを受けている。山本さんは「友の会がもり立ててきたすてきな芸術館。これからも町民に愛してもらえるようがんばりたい」と意欲を示す。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/244020