ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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自然と人間とのコラボレーション

2013-04-06 15:48:30 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「自然と人間とのコラボレーション」です。

一昨日のブログの冒頭で、「現代美術展」で見て話題にしたいと思った作品の事に触れましたが、その作品の写真が昨日手に入りました。それも、その作品の作者ご本人から頂きました。

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梶 みゆき 作  la deesse 天の声

この写真がその作品です。石川県立美術館の彫刻の部屋に入ってすぐ左にありました。

私はこの作品を見た瞬間に「これだ!」と思ってしまいました。

女性が何かを聴いているようなポーズをとっております。何を聴いているのでしょうか?作品タイトルは「la deesse 天の声」となっています。この女性は女神なのでしょう。この不思議なポーズも気になります。東洋的な仏像のようにも見えますし、西洋的な女神のようにも見えます。どうも聴いているのは天の声のようです。何だか神秘的で不思議な存在感があると思います。

この彫刻作品はFRP(繊維強化プラスチック)でつくられています。そして手に持っているのは両方とも天然の黄鉄鉱の結晶です。右手に持っているのは三日月の形をした黄鉄鉱と水晶で、左手に持っているのは黄鉄鉱の球状結晶です。

どうしてそんな事を知っているのか?と言うと、私は作者を知っており、その作品の事を事前に知っていたからです。実は、この作品の一部となっている黄鉄鉱は「石の華」出身なのです。

作者の梶みゆきさんとは「石の華」で知り合いました。最初の出会いの事はしっかり憶えております。このブログの「うれしいお客さん2」(2012.7.26)と「電気石2」(2012.7.27)でその事を少し書いておりました。さらに梶さんはポルテ金沢の関係者でもありました。

「自分の作品の一部に天然石を使いたい」という話に、私は妙な興奮をした記憶があります。

自然が造った芸術品である鉱物と人間が創る芸術とのコラボレーション、ワクワクした覚えがあります。

天然の樹木や流木等を使った作品は何度も見た事がありますが、鉱物の原石をそのまま使った作品はそれほど多くはないと思います。結晶をモチーフにした小林健二さんの作品やサルバドール・ダリの宝飾品の中で鉱物結晶の原石をそのまま使ったものがありましたが、記憶に残っている作品は極僅かです。

天然石と芸術行為との融合、自然と人間とのコラボレーション!何と魅惑的な事でしょうか!

今、ふっと思いましたが、「la deesse 天の声」とは自然の黄鉄鉱から聞こえてくる天=自然の声の事なのでしょうか?鉱物は地球が造り出したものとすると、それは地の声とも言えるとは思いますが、地=自然でもあり、天=自然とも言えるとすると、それは「石の声」という解釈が可能だと思います。

これは単なる深読みでしょうか?

芸術とは表現者あるいは表現物と、鑑賞者との相互作用であるならば、そのような解釈もアリだと思います。

「石の声」という言葉も意味深い言葉だと思います。

このブログでは「石の声」(2012.05.31)というタイトルで一度書いておりました。

今日はひとつの彫刻作品からひとり連想遊びをしてみました。

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鉱物図鑑

2013-04-05 12:27:57 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「鉱物図鑑」です。

先ほどまで、どうしようか?と迷っていましたが、「鉱物図鑑」というタイトルは初めてなので、今日書く事にします。

昨日、近くの本屋で「鉱物図鑑 美しい鉱物の世界」(ライブエンタープライズ発売)を見かけました。それはブック型のサムネイルボックス入りの標本付き鉱物図鑑です。水晶や紫水晶や瑪瑙等の種類がありました。それを見た瞬間に気になって手に取りました。ただ、標本そのもののレベルが低く、すぐに買う気にはなれませんでした。

最近は鉱物趣味も世の中に定着しつつあるのか、こういう商品が出て来た事に少し驚きを感じてしまいました。小学生くらいにはこういう商品は人気があるのかも知れません。

私も小学生の頃は鉱物図鑑を愛読していました。実際の標本を見る機会は少なかったので鉱物図鑑だけが頼りだったと思います。鉱物図鑑の情報は写真だけの情報でしたが、それでもその存在は貴重な情報源だったと思います。

最近はその鉱物図鑑のレベルもアップしています。最近の鉱物図鑑はどれもそこそこの内容になっておりますし、標本のレベルも高いと思います。今の子供たちをうらやましく思います。

昨日はそんな事を想いながら、鉱物図鑑のサンプルとして「紫水晶」を購入しました。

「鉱物図鑑 美しい鉱物の世界 紫水晶」を購入して中を見ました。すると、美しい紫水晶の写真が載っていました。ページ数は少ないながらも、その造りが気に入ってしまいました。

それは小学生向けの鉱物図鑑ではありませんでした。付いている標本のレベルは初心者向けのものかも知れませんが、載っていた紫水晶の写真は非常に美しいと思いました。特にゲーサイト入りアメシストの写真は思わずイイネ!と思ってしまいました。その写真はウニのような形をしているゲーサイトの放射状結晶です。

これは初心者向けの鉱物図鑑というより、鉱物を美の視点から捉えたアートなものです。写真提供はインターネットの世界で有名なKUROさんとなっておりました。発売元にはZAKKA BOOKs事業部となっておりました。それを見て、この鉱物図鑑のコンセプトを理解しました。

それは本屋で購入しましたが、それは本ではありません。本の形態を装った雑貨本なのです。そのようなコンセプトと鉱物標本の相性は非常に良いと思われます。

私が東京に住んでいた頃、新宿の紀伊国屋書店のビルの地下1階通路に鉱物標本店がありました。私は鉱物趣味初心者の頃、そこへは良く行きました。鉱物標本の販売会は書店の催事で行われる事が多い事もあります。鉱物標本と本との相関性は非常に高いと思います。

本好きから鉱物趣味へ入ってくる人も多いと思います。

その鉱物図鑑はそういうマーケット・コンセプトが見えた雑貨本でした。

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新鉱物2

2013-04-04 12:45:48 | 日記・エッセイ・コラム

昨日は久しぶりのお休みでだったのですが、雨だったので、兼六園の桜をあきらめて、「現代美術展」を見に行きました。石川県立美術館と金沢21世紀美術館をハシゴしました。その会場で石のブログ的にも話題にしたい作品を見たのですが、写真を撮れなかったので、その話題は後日、あらためて書きたいと思います。

さて、今日は「新鉱物2」です。昨年、「新鉱物」というタイトルで一度書いておりました。

昨日のニュースの中に新鉱物「ランタンバナジウム褐簾石」のニュースがありました。

新鉱物の発表は今でも年に何度かニュースになります。新鉱物は国際鉱物学連合(IMA)の審査を経て承認されます。日本発の新鉱物は鉱物趣味の人にとってはうれしいニュースです。

Web上にあったニュース資料を読みますと、三重県伊勢市矢持町の山中からレアアースのランタンとバナジウムを含む褐簾石を発見し、その化学組成と結晶構造を調べたところ、新種の鉱物である事が判明したそうです。その鉱物は緑簾石グループの一種である褐簾石の新種です。緑簾石グループは複雑な結晶構造をしていて、レアアースのリザーバーとして非常に高い能力をもつ鉱物です。その構造には元素が存在する席が複数あり、それぞれの席にどのような元素が存在するかで鉱物種が変わります。緑簾石グループも大所帯で今後も新鉱物登場の可能性は大きいと言えます。

因みに、天然に存在する原子の組み合わせだけでも、鉱物種は理論上21952種類存在します。日本で発見された新鉱物としては新潟石、ストロンチウム緑簾石、上田石があるそうです。

今回のランタンバナジウム褐簾石の注目点はレアアースを含んでいる事でしょうか。レアアースは昨今話題性が高く、近年話題となっている南鳥島近海の海底で発見されたレアアースを含む泥も大きなニュースになりました。今回発見された場所も秩父帯に属する地質で、かつての海洋堆積物が変成作用を受けたのちに今は地表に上がってきた付加体という地質です。それは遠く離れた海洋底の泥に存在したレアアースが濃集し数億年かかって地表に現れたと考えられます。秩父帯の中にはレアアース鉱物がまだまだ眠っている可能性が高いと考えられます。

元素は簡単には変化しませんが、鉱物はダイナミックな地球の物質循環の中で変化します。レアアースはそのような変成した鉱物の中で新たな鉱物種として存在しているのだろうと思います。

緑簾石(エピドート)も好きな鉱物のひとつでした。今回の新鉱物のニュースは緑簾石グループの石は単に美しいだけではなく、レアアースという有益な存在をも取り込んでいる重要な鉱物でもあったのだ、と認識をあらたにしてくれました。

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長石1

2013-04-02 12:25:17 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「長石1」です。

長石は好きな鉱物です。このブログでも長石は何度も登場していると思います。ただし、私の長石についての理解は不十分で、長石の話題は数多く、十分に整理できていないので、これまで独立したタイトルにして来ませんでした。

このところ、ミニチュアの話題やイメージについて書いてしまった事もあり、その流れで「長石」について書いてみようと思っています。

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ブラジル バイア州 ビトリア・ダ コンキスタ 産 天河石(Amazonite)

これは青緑色の微斜長石の一種で、古代エジプト等では宝石にされたとされるアマゾナイトの原石です。美しい青緑色が魅力的だと思います。アマゾナイトの名前の由来はブラジルのアマゾン川ですが、その流域では産出しないそうです。和名の天河石はアマゾン川の当て字だそうですが、天の川のイメージとも重なります。

このアマゾナイトの魅力は何と言ってもその家のような形状です。特に屋根に当たる部分はブラックトルマリンでコーティングされています。これはブラックトルマリン葺きアマゾナイトのミニチュアの家と言えるものだと思います。この石は非常に魅力的なのですが、実は、Nさんの取り置き中の石となっております。

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岐阜県蛭川村田原 産 カリ長石(Potash feldspar)

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岐阜県蛭川村田原 産 微斜長石(Microcline)

上の二つとも家のような形状をした長石です。切妻屋根のような形状が特徴的です。両方ともミニチュアの石の家といった雰囲気です。このようなイメージの長石は数多くあります。

実は長石は複数の鉱物種を総称する鉱物グループ名で、それらは連続した固溶体になり、中間的なものや準長石も含めると相当数の大所帯となります。それは一戸建てというよりも長屋や村落のようなものです。

石の家、で思い出すのは映画「千と千尋の神隠し」でしょうか。映画の冒頭部分で石の祠が出てきて「神様のお家よ」というセリフがあります。そのミニチュアの石の家は神域へ入った事を暗喩しています。ミニチュアの世界は神の領域なのです。

ミニチュアの村落、で思い出すのは東京のJR原宿駅にあった利用されていないもうひとつのホームの「ミニ原宿村」というミニチュアの家が並んだ村落です。それは今でもあるのでしょうか?山手線の車窓の中から見たその村落は不思議な存在だったと思います。それはもうひとつの世界であり、それを見ているとそれは神様達の住んでいる村落であるかのような思いになりました。

ミニチュアの家やミニチュアの村落の映像で思い出すのはロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督の「オリエンタル・エレジー」(1996)でしょうか。確かNHKで放送されたと記憶しておりますが、その幻想的な映像の中でミニチュアの日本の村落が出て来ました。(ソクーロフ監督は「ストーン」という作品を作っていますが、私はその作品を見ていません。」)

アレクサンドル・ソクーロフはアンドレイ・タルコフスキー監督に高く評価された監督だったそうで、そのアンドレイ・タルコフスキーの遺作となった「サクリファイス」(1986)も思い出されます。「サクリファイス」にもミニチュアの家が出て来ます。そのシーンでは確か本物の家の方は燃えてしまいます。タルコフスキーの映画を見ていると何故だかいつも眠くなり、映画を見ているのか?自分の夢なのか?その辺の虚実皮膜が面白いのですが、燃えてしまった家はミニチュアの家の方だったかも知れません。

今日は長石からミニチュアの家というイメージ幻想をしてみました。

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イメージ

2013-04-01 14:23:54 | 日記・エッセイ・コラム

今日は4月1日、新年度の始まりです。金沢でも桜の花が開花しました。春です。何となく気分が一新します。

今日は午前中にポルテ金沢の地下1階アトリウム広場のリニューアルに伴うセレモニーがありました。そこで興味深かったのは「うまい門」の荒永社長のご挨拶でした。実は115年前の今日、金沢駅が開業したそうです。当時は金沢ー小松間だけの営業だったそうです。金沢ー東京間の北陸新幹線の開業は2年後に迫っています。新しい時代の息吹を感じます。

さて、今日は「イメージ」です。

昨日は「こぶり石」から、石と人間とは人間の石に対するイメージで繋がっている、というような事を書いて終わりました。今日はその事についてもう少し書き足します。

「イメージ」は難しいテーマです。「イメージ」(または「イマージュ」「心像」)は哲学、心理学、認知科学、神経科学の分野のテーマになり、そういうテーマへの深入りは避けます。

石のブログとしては、我々が石を見る時のその石に対する単純な印象からその石をどうイメージするか、という事について書きます。

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インカローズのビーズ

これは店に置いてあったインカローズのブレスレットの中にあったビーズの一粒です。インカローズの魅力はその美しいピンク色とその縞模様にあると思います。このビーズの縞模様は何となくハート模様のように見えます。その模様は偶然そう見えるように加工されてしまっただけの事だととは思いますが、それを見た人にとっては、特にハート好きの人にとっては、それは貴重な存在として映ると思います。その色・形状が愛らしく思ってしまうのだろうと思います。

ハートの形は人気のある形のひとつです。天然石をハートの形に加工したビーズやタンブルも人気があります。石の模様にハートの形が現れるものも幾つか見た事があります。自然界には偶然にハート形に見えるようになったものは数多くあります。そのような自然のハートをあつめたポストカードセットがあったり、「珍百景」なるTV番組ではハートが特集されたりしてもいます。

ハートのイメージは石の世界でも好感度が高く、ハートをイメージする石は高く評価されます。

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山入り水晶(ファントム水晶)

これはいわゆる山入り水晶です。ファントム水晶とも呼ばれます。水晶の中に過去の成長跡を残している水晶の事で、ファントムの入り方には個性があり、何種類かに分類されると思います。

この水晶の場合、富士山をイメージする白いファントムがあります。日本人にとっては富士山は特別な存在でもあり、富士山入りの水晶は存在価値が高く人気があります。

先日、TVで静岡県のデザイナーの男性が、街中や普段の日常生活の中で、富士山をイメージするものばかりを蒐集されている事を紹介していました。その人にとっては富士山のイメージは特別な存在のようで、その人は富士山イメージ・コレクターと呼べるかも知れません。

その人にとって、このような水晶は、単なる水晶ではなく、富士山入り水晶として、貴重なコレクションのひとつに成り得るものかも知れません。

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Long zhau mine,Shichuang PV,China 水晶・緑簾石(Quartz/Epidote)

これは中国産の水晶と緑簾石の共生体です。特徴ある水晶のクラスターにエピドートの結晶がくっついています。

先日、大阪からのあるお客さんがこの標本を見て、これが気になっているとおっしゃっていました。それがどう気になっているのか?をお尋ねしますと、「クマさんの顔がある」とおっしゃいました。私は最初、何を言っているのか分からなかったのですが、この水晶の中心部にエピドートの小さな結晶がつなっがていて、クマの顔に見えなくもない、と思いました。そう言われて、初めてそのように見えました。

そのお客さんは石をそのようなイメージで見ていたのです。それはそのお客さんとその石との特別な関係で、クマの顔のイメージで繋がっているのだと思いました。

そのようなイメージは心理学でいう錯覚の一種「パレイドリア」の現象のひとつかも知れません。雲の形が顔に見えたり、しみの形が虫や動物に見えたりする心理現象の事です。それは不定形の対象物が違ったものに見える現象です。人面魚や火星の人面岩も同じ現象と言えます。

ただ、その心理現象はただ単に錯覚の一種としては片付けられない重要な意味を持っています。

どうも、我々、人間の心理現象は錯覚とは避けては通れないようです。錯覚という言葉には何かネガティブな印象があるとは思いますが、実は、錯覚する事によって、日常をうまく過ごせるようになっているようなところが多々あるようです。その良い例が3D映像です。3D映像は左右の目による物の見え方の違いである視差を、脳が自動的に立体と認識してしまうという錯覚を利用しています。錯覚には他にも面白い現象がたくさんあるようです。

石と人間との関係は「パレイドリア」のような現象を通じて、それは単なるものとしてではなく、ある特別な意味を持ったものとして、付加価値を持った存在に成り得るのです。そのイメージはその人だけの特有な繋がりの場合もあれば、どんな人にも共感できる繋がりである場合もあると思います。

その事はスピリチュアルな世界の話をするまでもなく、それ以前に、誰にでも、普遍的に起きている現象なのだと思います。

そのような錯覚はむしろポジティブなもので、その事によって石との豊かな関係を持てるのだろうとも思います。イメージは石の方にではなく、こちらの人間の方にあります。

石との関係はこちらのイメージに係っているのです。

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