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鉱物の部屋へのいざない

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2013-04-01 14:23:54 | 日記・エッセイ・コラム

今日は4月1日、新年度の始まりです。金沢でも桜の花が開花しました。春です。何となく気分が一新します。

今日は午前中にポルテ金沢の地下1階アトリウム広場のリニューアルに伴うセレモニーがありました。そこで興味深かったのは「うまい門」の荒永社長のご挨拶でした。実は115年前の今日、金沢駅が開業したそうです。当時は金沢ー小松間だけの営業だったそうです。金沢ー東京間の北陸新幹線の開業は2年後に迫っています。新しい時代の息吹を感じます。

さて、今日は「イメージ」です。

昨日は「こぶり石」から、石と人間とは人間の石に対するイメージで繋がっている、というような事を書いて終わりました。今日はその事についてもう少し書き足します。

「イメージ」は難しいテーマです。「イメージ」(または「イマージュ」「心像」)は哲学、心理学、認知科学、神経科学の分野のテーマになり、そういうテーマへの深入りは避けます。

石のブログとしては、我々が石を見る時のその石に対する単純な印象からその石をどうイメージするか、という事について書きます。

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インカローズのビーズ

これは店に置いてあったインカローズのブレスレットの中にあったビーズの一粒です。インカローズの魅力はその美しいピンク色とその縞模様にあると思います。このビーズの縞模様は何となくハート模様のように見えます。その模様は偶然そう見えるように加工されてしまっただけの事だととは思いますが、それを見た人にとっては、特にハート好きの人にとっては、それは貴重な存在として映ると思います。その色・形状が愛らしく思ってしまうのだろうと思います。

ハートの形は人気のある形のひとつです。天然石をハートの形に加工したビーズやタンブルも人気があります。石の模様にハートの形が現れるものも幾つか見た事があります。自然界には偶然にハート形に見えるようになったものは数多くあります。そのような自然のハートをあつめたポストカードセットがあったり、「珍百景」なるTV番組ではハートが特集されたりしてもいます。

ハートのイメージは石の世界でも好感度が高く、ハートをイメージする石は高く評価されます。

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山入り水晶(ファントム水晶)

これはいわゆる山入り水晶です。ファントム水晶とも呼ばれます。水晶の中に過去の成長跡を残している水晶の事で、ファントムの入り方には個性があり、何種類かに分類されると思います。

この水晶の場合、富士山をイメージする白いファントムがあります。日本人にとっては富士山は特別な存在でもあり、富士山入りの水晶は存在価値が高く人気があります。

先日、TVで静岡県のデザイナーの男性が、街中や普段の日常生活の中で、富士山をイメージするものばかりを蒐集されている事を紹介していました。その人にとっては富士山のイメージは特別な存在のようで、その人は富士山イメージ・コレクターと呼べるかも知れません。

その人にとって、このような水晶は、単なる水晶ではなく、富士山入り水晶として、貴重なコレクションのひとつに成り得るものかも知れません。

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Long zhau mine,Shichuang PV,China 水晶・緑簾石(Quartz/Epidote)

これは中国産の水晶と緑簾石の共生体です。特徴ある水晶のクラスターにエピドートの結晶がくっついています。

先日、大阪からのあるお客さんがこの標本を見て、これが気になっているとおっしゃっていました。それがどう気になっているのか?をお尋ねしますと、「クマさんの顔がある」とおっしゃいました。私は最初、何を言っているのか分からなかったのですが、この水晶の中心部にエピドートの小さな結晶がつなっがていて、クマの顔に見えなくもない、と思いました。そう言われて、初めてそのように見えました。

そのお客さんは石をそのようなイメージで見ていたのです。それはそのお客さんとその石との特別な関係で、クマの顔のイメージで繋がっているのだと思いました。

そのようなイメージは心理学でいう錯覚の一種「パレイドリア」の現象のひとつかも知れません。雲の形が顔に見えたり、しみの形が虫や動物に見えたりする心理現象の事です。それは不定形の対象物が違ったものに見える現象です。人面魚や火星の人面岩も同じ現象と言えます。

ただ、その心理現象はただ単に錯覚の一種としては片付けられない重要な意味を持っています。

どうも、我々、人間の心理現象は錯覚とは避けては通れないようです。錯覚という言葉には何かネガティブな印象があるとは思いますが、実は、錯覚する事によって、日常をうまく過ごせるようになっているようなところが多々あるようです。その良い例が3D映像です。3D映像は左右の目による物の見え方の違いである視差を、脳が自動的に立体と認識してしまうという錯覚を利用しています。錯覚には他にも面白い現象がたくさんあるようです。

石と人間との関係は「パレイドリア」のような現象を通じて、それは単なるものとしてではなく、ある特別な意味を持ったものとして、付加価値を持った存在に成り得るのです。そのイメージはその人だけの特有な繋がりの場合もあれば、どんな人にも共感できる繋がりである場合もあると思います。

その事はスピリチュアルな世界の話をするまでもなく、それ以前に、誰にでも、普遍的に起きている現象なのだと思います。

そのような錯覚はむしろポジティブなもので、その事によって石との豊かな関係を持てるのだろうとも思います。イメージは石の方にではなく、こちらの人間の方にあります。

石との関係はこちらのイメージに係っているのです。

コメント
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