カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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地震で暴かれる隠された危険、それは埋没谷。

2006-09-01 23:57:09 | インポート

本日9月1日は、防災の日。83年前の今日、あの関東大地震が発生して東京や横浜などを中心に14万人以上の方が亡くなる未曾有の大震災となった日です。

よく、地震で揺れやすい地盤として、今かた1万年前より後、縄文時代に海面だった地域が、砂や河川の堆積物で埋められて形成された、沖積層が挙げられています。日本列島で、東京や名古屋、大阪と言った大都市は、例外なく、この沖積層である平野に広がっているのでです。

ただ、この同じ沖積層分布地域でも、当該沖積層の厚さが複雑に異なる分布をして、特に沖積層の厚い地域で、地震の揺れが局地的に大きくなるものです。

そういう地域は、今から2万年ほど前のエルム氷河期に川や谷だった箇所が、その後、1万年前にかけて、間氷期となって、海水が入り込んた地域で、この地域を、埋没谷、または、溺れ谷 などど呼んでおります。

当然、この埋没谷の地域では、氷河期から、軟らかい地層が堆積されていることは、一目瞭然で、、沖積層が薄い地域(この地域を海盆などど、呼ぶ場合もあります。)と比較しても、一見、同じ平野に外見上見えますが、地震発生時の振動は、海盆と比べると、震度が大きくなります。

Mk_map Kantokiteicolors 引用図は、YAHOO、HPより引用の、東京23区拡大図(左側)と沖積層基底面図 (単位:m) 〔遠藤ほか,1983,1988に基づいて作成〕(右側)日本大学文理学部HP内、自然災害と環境問題より引用です。

東京を例にとると、前記した埋没谷は、大きく見て まず①渋谷区広尾付近から港区白金から一の橋を通り、芝浦付近に抜けるもの ②港区赤坂・溜池付近と文京区水道付近からものが日比谷付近で合流して、西新橋付近を通過し、浜松町付近に達するもの ③上野広小路付近から神田須田町付近を通過して、中央区大伝場町付近から八丁堀、入船、湊を通り、月島付近を通るもの ③足立区西部から亀有付近を通って、現在の荒川放水路付近を通過し、江東区砂町から辰巳付近を通るもの があります。

このうち前記③の部分については、今から2万年前 大きな川だった箇所で、地質学上 この地域を、古東京川 と呼んでいます。この古東京川だった地域の、江東区砂町や辰巳付近が、沖積層が都内で最も厚く、地表から70メートル以上に及んでいます。

このほか、名古屋や、大阪周辺でも、この埋没谷 の存在が 報告されています。

東京の、前記した、この 埋没谷の地域では、関東地震のときに家屋の倒壊率が40パーセント以上の地域(現行の震度階級では、震度7となりますね)と一致し、埋没谷から外れて、海盆と呼ばれる地域に位置する、現在の中央区役所付近や、銀座付近では家屋の倒壊率が5パーセント以下となっていました。

また、昨年7月23日の強い地震の際には、中央区役所では、計測震度は3・8(震度4)でしたが、前記した埋没谷の地域では、計測震度がおおむね4・4以上(震度4から震度5弱への境界付近)を観測しており、この埋没谷上に位置する、足立区伊興では震度5強、江戸川船堀では震度5弱をを観測しました。さらに、現地の聞き取り調査から、江東区辰巳や砂町付近でも震度5弱程度の揺れであったことが推定されています。