カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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浜松で国内観測史上最高タイ記録41・1℃を観測!2つの下降気流が要因

2020-08-20 01:44:18 | 日記
①ⅰ:17日12時の天気図 ⅱ:17日の日最高気温一覧画像(全国)ⅲ:17日の日最高気温一覧画像(静岡県周辺)
ともに気象庁HPより引用。

ⅰ:

ⅱ:

ⅲ:

8月になって、夏の太平洋高気圧はチベット高気圧のアシストをも受けて強まり、各地で猛暑となっていましたが、17日、静岡県の浜松で、昼の12時過ぎに気温41・1℃を観測!一昨年7月23日に埼玉県熊谷市で観測した日最高気温国内歴代1位タイ記録となりました。
引用図①ⅰ,ⅱより、猛暑日(日最高気温35℃以上)を観測した地点は本州の各地に散見しているものの、関東以西の太平洋側や瀬戸内地域に集中している分布をもしています。
静岡県内では、西部地域で日最高気温38℃以上の身体に危険というべき酷暑を観測している様子がわかります。

これらの日最高気温分布や、浜松での記録的猛暑の要因ですが


②ⅰ:8月17日9時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図 ⅱ:8月17日12時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図
ともに気象庁HPより引用

ⅰ:

ⅱ:

引用図②ⅰ、ⅱより、東北以西では、上空2000㍍、3000㍍まで時計回りの気流の流れ(高気圧性循環)がみられ、上空1000㍍では、風光は疎らで風速は弱めとなっています。背の高い優勢な高気圧に覆われている様子で、上空2000㍍と3000㍍の風向は東北、関東、中部、近畿、中国四国地方では、おおむね西北西〜北西風で、風速10㍍毎秒程度と強めになっています。こうなりますと、東北以西の太平洋側では、地形的に山越えフェーンの影響を受けて気温が上昇しやすい傾向にあるといえます。とりわけ、西北西〜北西に地形的鞍部になっている若狭湾〜濃尾平野〜愛知県〜静岡県西部にかけての地域では、上空2000㍍~3000㍍付近にかけて気流は収束しやすくなり、その結果岐阜県西部〜三重県北部の山地を超える気流が風下の濃尾平野〜愛知県〜静岡県西部の地域に、顕著なフェーン昇温を発生させやすかったといえます。

③ⅰ:8月17日9時の静岡県周辺アメダス風向風速分布図 ⅱ:8月17日12時の静岡県周辺アメダス風向風速分布図
ともに気象庁HPより引用

ⅰ:

ⅱ:


④静岡県の地形図 国土地理院HPより引用・加工



一方、とりわけ高温となった、静岡県西部周辺の地表付近の風向風速の様子を静岡県の地形図と見比べると、静岡県西部では、おおむね西南西や西寄りで風速は弱めですが、御前崎から静岡を含む駿河湾沿岸地域では、風速は弱めであるものの、風向は西部地域とな逆で、海風である南南西〜南東風となっており、県内中央部の山地へ気流が吹き付けている様子で、西部地域との風向のコントラストが大きになっていることより、県内中央部山地で気流が上昇していることが読み取れます。

県内中央部山地で気流が上昇している状態ですと、隣接する西部地域では、反対に気流は下降する場となりますので、静岡県西部では、前出の、濃尾平野〜愛知県〜静岡県西部にかけて顕著になっていたと推測されるフェーン昇温にプラス、県内中央部山地からの下降気流も加わってこと。そして15日から17日まで類似な気圧配置であったために、浜松を含む静岡県西部では顕著な高温が続いていたことも相まって、今回の浜松での記録的猛暑は発生したといえるでしょう。

静岡県西部では、

◆濃尾平野〜愛知県〜静岡県西部にかけてに顕著なフェーン昇温+駿河湾海風吹込みによる県内中央部山地からの下降気流 

を満たす気圧配置時に、例外なく記録的高温が観測されております。




線状降水域が発達しやすい静岡県内!どうがご用心を!!

2020-08-03 02:04:51 | 日記
①7月27日21時~24時までの1時間ごとのレーダーエコー図 国土交通省川の防災情報HPより引用

ⅰ:27日21時
 

ⅱ:27日22時 


ⅲ:27日23時 


ⅳ:27日24時


27日夜21時頃から静岡県中部の平野部で雨雲が線状に発達、その後、翌28日1時頃にかけて当該線状降水域は発達しながら東西方向へ広がり、その後、次第に弱まっていきました。

この線状降水域内では、所々、1時間に50㍉を超す非常に激しい雨を観測し、このため、付近を走る東海道新幹線や東海道本線では、雨量が運行中止規制値以上となったため、雨が小降りとなる、翌28日未明にかけて、運行がストップしました。


② ⅰ:27日21時の地上天気図 ⅱ:28日3時の地上天気図 ともに気象庁HPより引用
ⅰ:

ⅱ:

この線状降水域の発生原因ですが、引用図②ⅰ、ⅱより、地上天気図上では、東北地方から日本海にかけて停滞する前線が、Λ状になっている箇所(地上付近では低圧部に対応し、当該周辺の上空3000㍍付近では、上昇流が広範囲に分布しているものです。)
が、27日21時には、能登半島沖に、翌28日3時には、山形沖付近に見られます。 


③ ⅰ:27日21時の日本付近水蒸気画像図 ⅱ:28日3時の日本付近水蒸気画像図 ともに気象庁HPより引用
ⅰ:

ⅱ:

続いて、引用図③ⅰ、ⅱより、前記した前線上の低圧部に対応する、上空3000㍍付近の上昇流域 A が、27日21時には東海地方から近畿地方周辺、翌28日3時には東北地方南部〜関東地方周辺へと東方向に移動しています。

ちょうど、当該線状降水域が静岡県内で発達する時間帯に、上空3000㍍付近の上昇流域は静岡県内上空を通過していったことになります。


④ ⅰ:27日21時の静岡県周辺アメダス風向風速分布図 ⅱ:28日3時の静岡県周辺アメダス風向風速分布図 ともに気象庁HPより引用
ⅰ:

ⅱ:

さらに、引用図④ⅰ、ⅱより、前記した線状降水域が発達した時間帯である、27日21時と24時の静岡県周辺アメダス風向風速分布図を見ると、当該線状降水域が発生発達していた地域を挟んで、南側では、会場からの南寄り〜南西風、愛知県境付近からは西寄り風となり、逆に線状降水域の北側では、おおむね北より風か疎らで、風速は弱めとなっており、明瞭な気流のシアーラインが形成されており、このシアーラインに沿って、線状降水域が形成されて、前記したように、静岡県内を通過していった、上空3000㍍付近の上昇流域のアシストもうけて、当該線状降水域が発達していったというわけです。

静岡県内では、前線の南側や勢力の強い高気圧の縁に当たって、海上から南寄り〜南西風が入りこむ気圧配置時には、県内伊豆南部~駿河湾南部~中西部平野にかけて、明瞭な気流のシアーラインが形成されやすく、当該シアーラインに沿って帯状に雨雲が発達しやすい傾向がありますから、この点、注意が必要ですね。