カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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30日未明 南太平洋サモア近海で巨大地震発生 日本へも津波が 津波は地震発生のメカニズムが大きく左右

2009-09-30 21:22:01 | インポート

①30日未明発生の地震の震央位置図 気象庁HPより引用

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きょう30日02時48分ころ地震がありました。
震源地は、南太平洋(南緯15.3度、西経171.0度)で、地震の規模
(マグニチュード)は8.3と推定されます。

この地震で、サモア等アピア で 0・7m 米領サモア  パゴパゴ で1・6mの津波を観測した模様で、日本でも、30日午前9時、気象庁より、北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、北海道太平洋沿岸西部、青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県九十九里・外房、千葉県内房、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、静岡県、愛知県外海、三重県南部、淡路島南部、和歌山県、徳島県、高知県、宮崎県、鹿児島県東部、
種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、沖縄本島地方、大東島地方、宮古島・八重山地方 の各海岸に 津波注意報
が出されました。(引用図②)

②30日9時気象庁発表の津波注意報発表図 気象庁HPより引用

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津波は高いところで約50㎝程度と予想されましたが、30日昼過ぎに、宮城県石巻で22cmを観測した程度で済み、被害も皆無でした。

波と呼ばれるもの(海の波ばかりでなく、地震波や音波なども同様ですが) その周期が増すほど波としてのエネルギーは大きくなり、減衰しにくく、遠方まで伝播するようになるものですが、津波は、海底で地震発生時に海底が変動することで、発生します。そして、その海底の変動がゆっくりした変動で、かつ、広範囲に及ぶほど(地震発生の地殻の変動がゆっくりであり、かつ、広範囲に及ぶほど と言い換えられますが)、当該地震で発生する津波の周期は長いものとなり、かつ、より遠方まで、減衰せずに伝播するようになるものです。その結果、地震発生時の地殻変動で、地形や建造物に影響をおよぼせにくい、非常に周期の長い地震波が卓越しても、当該地震発生を受けての震央付近の海底の変動は広範囲であれば、凄い波高の津波が広範囲に伝播するようになってしまいます。発生する津波の周期も非常に長いものとなるからです。

こういう、非常に波高の高い津波を発生させるが、地震動の被害が比較的少ない地震を、津波地震 と呼んでいます。

通常の津波でも、およそ1000km程度伝播しても、ほとんど減衰しないもので、波としての周期が大きい分、波の立ち上がりは高く、波が崩れて陸に押し寄せる距離(遡上高)も、一般の波と比較すると大変に長いものとなります。

ですから津波は、波高が高くなくても、油断は禁物! 波としてのエネルギーが大きい分、その継続時間も長く、繰り返し何波も海岸に押し寄せてくるものです。


紀伊半島で局地的大雨 高気圧は南の縁にも要注意!

2009-09-28 12:07:55 | インポート

①9月28日9時の天気図 気象庁HPより引用

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②9月28日9時の近畿地方周辺レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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③9月28日9時の日本付近雲画像図(赤外画像で拡大版) 気象庁HPより引用

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④9月28日9時の日本付近ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用

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日本海にある低気圧や前線に向かって、西日本中心に暖湿流が入り込んでいるため、近畿以西の太平洋側を中心に、所々で強い雨が、昨日27日夜から降り続いています。

特に、紀伊半島の南東部では、雨雲が局地的に非常に発達し停滞気味となっているため、特に雨量が多くなっており、三重県の尾鷲では、28日午前11時までの24時間に170㎜を超す雨量を観測しています。

28日11時現在 三重県紀勢・東紀州に大雨・洪水警報が出されています。

28日9時現在、引用図②より、特に発達した雨雲がほぼ南東~北西方向へ帯状につらなり、紀伊半島にぶつかり、その雨雲がかかった地域で非常に強い降水を観測している様子がわかります。さらに、引用図③でも、紀伊半島南東部には、南東~北西方向へ連なるひときわ白く輝いた雲の帯が見られますし、引用図④(一番下部の上空1000m付近の風向風速図に注目!)より、当該特に発達した帯状の周辺部では、静岡ではほぼ東より風ですが、尾鷲では南東風で風速10m以上と強めに吹いています。

これらのことより、東海道沖で、北海道の東海上にある優勢な高気圧の南縁を廻るようにして流れ込んで来た東より風と南東風との暖湿流同士が、互いにぶつかり合って収束していていることが判りますが、当該収束した暖湿流が、紀伊半島の地形的特性(南東方向へ開いた山の斜面となっていて、その中でも、所々、南東~北西方向に小さな地形的鞍部が位置しています。)によって、収束した暖湿流が更に収束の度合いを増して、帯状に非常に発達した雨雲を形成した。ことが今回の大雨の原因でしょう。

通常、高気圧の縁を廻るようにして流れ込む暖湿流は、高気圧の北縁や西縁の部分を流れ込んでくることが多いものですが、今回のように、高気圧が本州の東海上にあり、高気圧の勢力が優勢であるほど、当該高気圧の南縁からも、暖湿流が東~南東風となって大量に流れ込んで来るものです。

さらに、暖湿流が東~南東方向から流れ込んでくる場合、紀伊半島南東部や四国東部など、地形的特性で暖湿流が一層収束しやすく、その状態が長時間持続しやすくなる特性があります。これは、日本の東海上で高気圧が優勢になると、勢力を西側や南側に広げて、容易に東へ退かないからですね。

このため、このタイプの大雨が発生すると、紀伊半島南東部や四国東部では、かなりの雨量となってしまいますから、防災上、看過できません。


伊勢湾台風襲来より50年 未曾有の大被害は台風の移動速度も一要因か?

2009-09-26 00:45:31 | インポート

①伊勢湾台風中京地区へまさに襲来の、昭和34年9月26日21時の天気図 名古屋地方気象台HPより引用

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②昭和34年9月26日紀伊半島へ上陸後の伊勢湾台風の進路図 名古屋地方気象台HPより引用

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※この他、台風災害を防ごう(日本気象協会) を参考文献としました。

50年前の今日 昭和34926日午後6時過ぎに、非常に強い大型の勢力である台風15号は、和歌山県潮岬の西約16㎞に紀伊半島へ上陸しました。台風15号の上陸時の最低気圧は9295ミリバール(現在ですと9295ヘクトパスカルとなりますが)と、当時でも歴代3位の最低気圧を観測しています。

この台風こそ、東海地方を中心に、死者行方不明者5041人、全壊流失家屋4万棟余、他浸水家屋36万余と言う未曾有の大被害をもたらした、伊勢湾台風です。

この伊勢湾台風は、伊勢湾岸を中心に甚大な高潮被害をもらたらしましたが、東北から中国、四国地方の広範囲にわたって、あちこちで最大瞬間風速が30m毎秒を超えて、10分間の最大風速でも、30m毎秒となった気象官署が全国で8箇所と、典型的な風台風でした。

この伊勢湾台風の特徴は、紀伊半島へ上陸後、移動速度を時速60㎞~70㎞と高速で伊勢湾岸西方を通過しましたが、このことが、台風の進路の右側に入った東海地方では、記録的な暴風を引き起こし、名古屋で10分間の最大風速が毎秒37m(最大瞬間風速が457m)を観測したほか、小牧航空測候所や岡崎平野矢作川河口、それに、三重県大王埼灯台では、最大瞬間風速が毎秒60m以上を観測しました。

この記録的な暴風と海岸部の満潮(大潮でした)とも重なって、前述の甚大な被害をもたらしたと言えそうです。

引用図①より、台風の進行方向右前方に前線があり、台風の進行方向前側から右側で高気圧の張り出しか強まって等圧線が広範囲で混んでいる場合、台風を押し流す上空の風速(一般流と呼ばれます)は例外なく強まっており、、台風は速度を速めて移動するようになります。このような台風は、特に台風の進行方向右側で広範囲に暴風が吹き荒れます。これは、本ブログの平成189月の台風13号の記事で申し上げましたように、台風自体の渦巻きの風速に、当該台風の移動速度が加わるためと、高気圧の張り出しのため広範囲で等圧線が混んでいる(等圧線の幅が狭まる)ためです。

このため、伊勢湾台風の進行方向右側に入った、甲信越地方や関東地方などでも、猛烈な風が吹き荒れて、甲府で10分間の最大風速が毎秒298m(最大瞬間風速が372m) 台風の中心からおよそ320㎞離れた東京でも、10分間の最大風速が毎秒27m(最大瞬間風速が37m)を観測しています。

さらに、高潮ですが、海岸部の潮位もさることながら、海岸から約10キロ上流に入った河川沿いのほうが高い水位を観測(海岸と比較すると30cm40cmも高くなっていました)し、当該最高水位発生時刻は、海岸とほぼ同時刻~15分ほど早まっていた事も特筆するべき点ですね。これは、河川沿いは上流部に降った降水が下流部へ流れ込んでくるところへ、海岸の水位が上昇して、海水が河川へ逆流するためですが、高潮災害を論じる際に、ややもしますと、この、海水の河川への逆流の部分が軽視されているようにも思われますね。この点、防災上看過するべきではないと思いますね。


台風14号小笠原近海を通過 台風からのうねりは海岸地形と波周期に左右されるもの

2009-09-19 23:59:07 | インポート

①9月19日18時の天気図 気象庁HPより引用

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②9月19日9時の気象庁発表AWJP図(波浪実況図) 日本気象予報士会HPより引用

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9月19日は、台風14号が小笠原諸島近海を通過しました。

このため、父島では最大瞬間風速42・9mを観測し、伊豆諸島南部でも瞬間で30mを超す、大人でも吹き飛ばされるような猛烈な風を観測しています。

19日夕方には、台風の中心からおよそ600キロ以上離れた、静岡県由比海岸付近を走る東名高速道路では、高波のために一時通行止めとなりました。

台風が南海上から本州付近へ接近すると、本州の太平洋沿岸には、一足先に、うねりがおし寄せますが、この うねり(台風以外時に発生するものもそうですし、波そのものも同様です) と言うもの、海岸部の局地的な地形の特性や、うねりの周期によって、海岸に打地寄せる際には、非常に局地性の強い振る舞いをします。

まず うねり(波)は、以上の特性があります。

Ⅰ:うねり(波)は、海岸の地形が、その移動方向に垂直方向となっている箇所で高まるもの・・・・・これは、このような海岸の地形ですと、海底が浅い部分でうねり(波)の移動速度がおそくなり、波が屈折するためです。

Ⅱ:うねり(波)の周期が大きくなるほど、海岸部での裂波(磯波)が高まりやすい。・・・・・波の周期が大きくなるほど、水深深くまで海水が回転運動をするようになり、当該海水の回転運動が海底に差し掛かると、海底の摩擦で波がたかまるようになり、その結果、裂波(磯波)はより高まるようになる。

Ⅲ:うねり(波)の周期は、同一風速の風向が持続するほど、吹き渡る距離(吹走距離と言いますが)が長くなるほど、大きくなる。・・・・・波高も同様ですね。

したがって、高波が予想される際には、波高のみならず、波の周期にも注意する必要があります。

天気図上では、同じような気圧配置が何日も続いた場合は要注意ですね(まさに今回がそうですよね。)。 波の周期は、おおむね12秒以上になると、今回のような局地的な高波が襲来する危険性が増すと見られます。引用図②より、19日は、関東以西の太平洋岸では、波の周期はおおむね15秒程度となっています。このような時は、特に満潮時(大潮の時は尚更ですね)には高波災害にはご用心!!


台風は周辺部の水平方向のみならず鉛直方向の気流の動向にも左右されます。 意外と知られていない台風の素

2009-09-17 23:56:24 | インポート

①9月17日18時の天気図 気象庁HPより引用

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②9月18日9時の予想天気図 気象庁HPより引用

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秋の大型連休が間近となってきましたが、大型で非常に強い勢力の台風14号が南海上から北上してきています。

台風は通常、南海上の水温の高い海上を通過すると発達することはよく知られていることです。台風のエネルギーは、水蒸気が蒸発する際に放出される潜熱であるからです。

潜熱を得られやすい場が台風が発達する場であるわけで、潜熱を得られやすい箇所(暖湿流が大量に分布する箇所)は、海水温の高い会場付近ばかりではありません。台風が発達する場と言うもの、海水温の高い海上付近ばかりでなく、鉛直方向に目を向けると、下層での暖気移流が著しい場も当てはまると言えます。

上空1500m付近での気温が、おおむね18℃以上の気温で暖気移流が顕著な気流の場を台風が通過する際には、殆ど衰弱しないといって良いでしょうね。

さらに、下層の暖気移流が著しい場と言うのは、台風を移動させる働きをする気流(一般流と呼ばれていますが)が強まっていることが多く、こういう気流の場は、上空3000m~5500m付近の気流の風速が強まっている場所であることも多いものですから、台風の周辺が暖気移流が顕著であり、台風の移動速度が速い場合は、台風が勢力を維持しながら急に接近してきますから、特に注意が必要です。

逆に、台風の周辺で寒気移流の場が次第に顕著になる場合は、台風自体、次第に衰弱する運命にあると言えますね。潜熱が得られにくくなりますから。

以上のことをも踏まえて、台風情報を聞かれ、防災活動に役立てて欲しいものです。