カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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日本海に低気圧 低気圧は個性いろいろ!

2012-10-28 16:53:48 | インポート

①10月28日9時の天気図 気象庁HPより引用

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②10月28日9時の日本付近雲画像図(水蒸気画像で拡大版) 気象庁HPより引用・加工

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28日日曜日は、低気圧が日本海へ進んできました。

気象の基本書を見ると、低気圧(ここでは温帯低気圧のことですが)は、温暖前線と寒冷戦線を伴い、双方の前線の南側は暖域と呼ばれていますが、この、低気圧の暖域は、実は、潜在的に雲が発達しやすい場(気象学上では対流不安定の場という場です。)で、条件次第で、強い降水をもたらしやすい区域でもあります。

低気圧の暖域の前側が、勢力の強い高気圧の外縁にあたる場合、当該低気圧の暖域には、暖湿流が大量に流れ込んで、暖気側に、帯状に降水域が発生・発達しやすくなりますし、水蒸気画像上で、白くぼやけた区域(中層以下に暖湿流が流れ込んでいる箇所でもありますが)が引用図②のように、山型になって反映されている場合、当該、水蒸気画像上で山型の画像域の中間に当たる区域では、とくに達した降水域(引用図②ではB)が見られます。

さらに、前記した、低気圧の暖域内に発生する発達した降水域は、低気圧の移動方向にそれ自体も沿って移動し、本州の太平洋側には大雨をもたらしやすいものですから、油断なりません!日本海の低気圧の閉塞点付近に発生しやすかったり、当該強い降水域に新たに低気圧が発生することもあります。

以上述べた、水蒸気画像上で白くぼやけた区域が山型になって反映されているカラクリですが、日本海にある低気圧の前側の高気圧の縁辺から入り込む暖湿流と、当該低気圧と結びすつく、500hpa(上空およそ5500m付近)の谷の前側に分布する、上空3000m付近の上昇流域に伴い流れ込む暖湿流とが衝突し、その衝突する箇所が、当該、水蒸気画像上での山型に当たる区域となるわけです。

今後は、本州の太平洋側では、引用図②での B に伴う降水域の動向に要注意!さらに、引用図①②より、日本海の低気圧に伴う寒冷前線に伴って、A という帯状に発達した降水域が反映されていますが、この A のすぐ西側では、水蒸気画像上では、暗域が大変明瞭となっています。こういった、西側や北側を水蒸気画像上の明瞭な暗域がある降水域が通過する際には、局地的に、突風や竜巻などが発生しやすくなりますから、この点も、どうかご留意ください!!


台風21号は未明に八丈島南海上を通過 意外と知られていない台風の素性についてPart13 台風の強降

2012-10-19 16:39:45 | インポート

①10月19日3時の天気図 気象庁HPより引用

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②10月19日3時の全国レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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③10月19日3時の関東周辺アメダス風向風速分布図 気象庁HPより引用

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④10月19日1時~7時までの八丈島ウインドプロファイラー時間高度分布図 気象庁HPより引用・加工

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大型の台風21号ですが、昨日18日から、速度を速めて本州の南海上を進んで、19日3時ごろ、八丈島の南海上を通過しました。

さて、引用図①より、台風21号の進行方向北側にあたる伊豆諸島付近には前線が停滞しています。

台風が本州の南海上を通過し、かつ、当該台風の進行方向北側に前線が停滞する場合、灯台前線は、伊豆諸島の三宅島付近を横切る場合が多く、台風の接近に先行して、まず、三宅島周辺で雨量が多くなるように見受けられます(筆者調べ)さらに、今回の台風21号のように、移動速度を早める台風と言うもの、台風周辺の鉛直シアーの強い部分(進行方向すぐ左前側)で特に強い降水域が発生するもの(筆者調べ。本ブログ内2008年9月18日記事を参照)でありますが、今回も、このシナリオ通り、まず、昨日18日夜遅くから三宅島周辺で激しい雨となり、八丈島では台風21号のすぐ北東側に入った19日1時~2時頃にかけて1時間75㎜もの猛烈な降水を観測しました。

また、この猛烈な降水がおさまった直後、10日3時頃を中心に、八丈島では特に風速が強まり、島内八重見ヶ原(八丈島空港)では19日3時05分に25・9m毎秒(北東風)、八丈島測候所では19日3時03分に22m毎秒の最大風速を観測したほか、最大瞬間風速では、八重見ヶ原(八丈島空港)で19日3時01分に38・6m毎秒 八丈島測候所でも19日2時59分に33・6m毎秒と言った暴風を観測しました。

ここで、引用図②③④より、、19日1時~7時までの、八丈島(八丈島測候所観測)の、ウインドプロファーラー時間高度分布図を見ると、1時間降水量75㎜を観測した、19日1時~2時では、上空3000m付近では南より風、地表付近では北東風と、鉛直方向のシアーが大きい状態となっております。その後、上空3000m付近の風向が南東~東へと変化するとともに上空2000mより下側では北東風が次第に強まってきて、前記した19日3時03分に、最大風速22m毎秒(北東風)を観測しております。

このことは、台風の進行方向すぐ北東側の鉛直シアーが大きな箇所に当たる、とりわけ発達した降水域を形成するため、当該降水域では強い上昇流が発生していたわけですが、当該強い上昇流を形成するため、周辺部から気流が集まり、なかんずく、地表付近~上空2000m付近まで風向が合致した北東風が特に強まられた結果 と私は見ています。

今回の事例に限らず、台風周辺で鉛直シアーが大きな箇所に発生する強い降水域の周辺域(特に進行方向後側)では、風速が強まりやすくなります。

台風に伴う強風の分布で、よく言われる、進行方向右側が風が強くなる(危険半円)ということは、必ずしも全ての台風に当てはまるものではありません。この点、以前、筆者自身、本ブログの記事内で紹介させていただいたことですが。


あらためて申す!前線とはこんな箇所!

2012-10-17 23:08:24 | インポート

①10月17日18時の天気図 気象庁HPより引用

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②10月17日18時の日本付近雲画像図(水蒸気画像で拡大版) 気象庁HPより引用・加工

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③10月17日18時全国レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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10月17日は、西日本の太平洋側の所処で大雨となり、宮崎県の日向では、24時間降水量が300㎜を超えた所もあります。大雨の区域は次第に東へと移動しており、17日18時現在、近畿地方から四国地方東部で激しい雨となっている様子です。(引用図③より)

引用図①で、本州南岸と日本海に前線が描かれておりますが、この前線の位置と、引用図②の水蒸気雲画像図の画像分布を見比べると、

ⅰ:日本海の前線は、水蒸気画像上で白くぼやけた区域と暗域との境界部分にほぼ位置しており、前線の東側には、帯状に幾重にも白く輝く区域(中層や下層での上昇流が特に強い区域、発達した降水域を形成しています。)がありますが、

ⅱ:本州南岸の前線は、台風17号の東側に広がる、水蒸気画像上で白くぼやけた区域の北縁に描かれております。

こう見ますと、地上天気図上の前線とは、水蒸気画像上での濃淡の境界付近に描かれていることが解ります。以前、本ブログで記事でも取り上げたことですが、前線(地上天気図上に限らず)と言うもの、単に、気温の明瞭なコントラストがある箇所と言うより、明瞭な温位のコントラスト(すなわち、水蒸気画像上での画像の明瞭なコントラストを形成している箇所)と言うことになります。

水蒸気画像上で、前線の暖気側に、帯状に白く輝く区域が幾重にも連なっている場合、当該前線の暖気側では暖湿流が大量に流れ込んでいて、雲が発達しやすい箇所となりますが、◆当該、水蒸気画像上での帯状の白輝域や白淡域が互いに相交わっている箇所では、特に雨雲が発達しやすく強い雨や落雷、突風などをもたらしますから、要注意です!(引用図②でのAの区域、引用図③より、当該Aの区域では、非常に強い降水域を形成しています。)

前記した Aの区域では、水蒸気画像上で、日本海の前線に沿って南西~北東方向へと にんじん状の白く輝く区域(テーパリングクラウドと呼ばれるものです。)を形成しています。降水域が非常に発達している区域を示す典型的なものです!

引用図①②より、今回のように、前線上に、前記したテーパリングクラウドが発生する場合、当該テーパリングクラウドが発生区域の前線上に、新たに低気圧が発生して、当該低気圧周辺では、非常に強い降水のみならず、一時的に強風が吹きやすくなりますから、この点も油断なりません!


台風17号は本州縦断から北海道の東へ 台風の持ち込む暖気の境は決まって?

2012-10-01 23:58:55 | インポート

①10月1日15時の天気図 気象庁HPより引用

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②10月1日15時の日本付近雲画像図(水蒸気画像で拡大版) 気象庁HPより引用・加工

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台風17号は、昨日9月30日19時頃、愛知県東部に上陸し、その後、本州を縦断して、30日15時には、北海道の東海上へ進んでいます。

東京など首都圏始め、中部地方や東北地方、北海道東部などのあちこちに瞬間で30毎秒を超す暴風が吹き、東北地方や新潟県の一部などで、1日15時までの24時間雨量が200㎜を超す大雨をもたらし、更には、東海地方~関東地方~東北地方の沿岸にかけて、台風の接近と満潮時刻が重なったため、所によっては通常水位より1mを超す高潮をももたらしました。

台風が去った1日、関東や東北地方太平洋側では、台風が持ち込んだ暖気が残り、これに、山越えのフェーン現象も重なったため、日中、気温が上昇し、東京では、10月としては、平成17年10月2日以来7年ぶりの真夏日を観測したほどです。

台風が通過後、よく、1日のように台風から持ち込まれた暖気が残り、日中、気温が上昇することが多いものですが、気温が上昇した後、決まって当該暖気の明瞭な境の部分がやってきます。

当該、暖気の境目の部分では、地上天気図上、前線として表現されないことも多く、このような場合、雲画像図でしか表現されません。これは、台風が持ち込むような暖気は勢力が強いため、後続の相対的に気温の低い気団が西から進んでくる場合、前側の暖気域に、幾重にも(私の調査の経験上、2~3本が多いですね)帯状の上昇流が発生するためです。

当該、暖気域に帯状に発生する上昇流域の一番暖気側の部分が、地上天気図上の前線として表現されることが多いように見受けられますが、こと気温の明瞭な変化については、暖気側からは最後尾の部分(水蒸気画像で暗域との明瞭なコントラストで写しだされています。)の通過後となります。

引用図②では、前線として上限されている上昇流域は A 、気温の明瞭な変化を示すのは、Bの通過後となりますね。

言ってみれば、 引用図②内 Bの箇所も、いわば、天気図上で表現されない前線 と言えそうで、隣接する、水蒸気画像で暗域にあたる地域で寒気移流となっています。当該、温帰途の境目付近では、中層から上層では気流が乱れていることが多く、航空機が当該箇所を通過する場合、機体が非常に揺れやすいものです。

さらに、関東地方や東北地方太平洋側で注意する点は、前記、B は前線としての性質を備えているものですから、暗域が北方向へ広がる分布をする場合は、東海上からの気流が入り、雲が多くなりやすくなります。北高型となるわけですからね。