カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
講演依頼等連絡先は、tenki@air.ocn.ne.jpへどうぞ

2月14日~15日のかけての関東甲信の記録的大雪についての総括

2014-02-20 01:33:18 | インポート

①2月14日1時~2月15日12時までの関東地方周辺主な観測地点の降水量と最大降雪一覧 気象庁HP参考にして、白地図HPよりダウンロードし加工 ※青字は降水量 赤字は最大降雪量を示す

26214215

2月14日~15日にかけて、関東甲信地方では、記録的な大雪に見舞われました。

特に、甲府(112㎝)河口湖(110㎝) 前橋(72㎝) 宇都宮(32㎝) 熊谷(62㎝) 秩父(98㎝)

は、観測開始以降最深となる降雪量を観測しました。

引用図①より、関東地方周辺では、14日1時~15日12時までの降水量は、勝浦で256・5㎜をはじめ、千葉県や茨城県の広範囲で100㎜以上を観測しています。さらに、関東西部山間部の各地や、埼玉県北西部、山梨県の広範囲で、降水量100㎜を観測しています。さらに、関東地方周辺では、総じて、降水量は、おおむね70㎜以上と、この時期としては、記録的とも言える降水量でした。

また、降雪量も、千葉県や茨城県では、15日未明から、降雪となった箇所も次第に雨に変わっていきましたが、関東内陸部や山梨県など、降水量の多さに比例して、降雪量が多くなっていることがわかります。

この原因ですが

②2月14日21時のⅰ:天気図と ⅱ:AUPQ78図 気象庁HPおよび日本気象予報士会HPより引用

ⅰ:                           

Z__c_rjtd_20140214120000_met_cht_jc

ⅱ:

Z__c_rjtd_20140214120000_met_cht__2

                          ↓

③2月15日9時のⅰ:天気図と ⅱ:AUPQ78図 気象庁HPおよび日本気象予報士会HPより引用

ⅰ:

Z__c_rjtd_20140215000000_met_cht_jc

ⅱ:

Z__c_rjtd_20140215000000_met_cht__2

引用図②ⅰ ③ⅰ より、14日21時から15日9時にかけて、低気圧が発達しながら紀伊半島沖から関東沿岸部を北東に進みました。さらに、②ⅱ ③ⅱのそれぞれ下側図より、空1500m付近では関東東海上から東より風が関東地方に強く吹き付けています。点線で示されている等温線ですが、天気図(地上天気図)の北東側の広範囲では、等温線が混んでおり、暖気移流と寒気移流とが激しくぶつかり合い、雪雲や雨雲が発達しやすい場とまっています。このため、関東地方周辺では、この時期としては記録的ともいえる降水量を観測したわけですね。

一方、②ⅱ ③ⅱの下側図より関東地方より北側に目を向けると、北日本から北陸、に東日本の日本海側にかけての広範囲で、おおむね寒気移流となっており、反対に、暖気移流の場は、地上天気図の低気圧の東側から南東側に広がって、14日21時から15日9時にかけて、低南~南東風となってかなり強まったものの(15日9時には、関東地方南部から東部にも、上空1500m付近で6℃の等温線がかなってきました。)範囲が狭く留まっており、当該関東南部や東部の暖気移流の場のすぐ北側から西側では、反対に寒気移流が局地的に強まり、等温線も関東地方周辺で非常に混みあっています。石川県輪島上空1500mでは、14日21時-4・9℃、 低気圧の西側に入った15日9時では-6・1℃と、気温が低下しているほどです。

低気圧が発達して本州南海上から関東地方を通過する際には、関東周辺の地形的特性などの影響で、低気圧の中心に吹き付ける暖気移流がいくら強くても、低気圧の進路は、神奈川県東部~東京23区~埼玉県南東部~千葉県北西部~茨城県中部より海側を必ず通過する経験則があります(筆者調べ)。今回2月14日~15日におきましても、前記より、関東内陸部や甲信地方では、寒気移流がずっと持続しており、暖気移流と寒気移流との境目付近で雪雲が発達して、さらに、上空1500m付近で、強い東より風が吹き、この東より風が、地形的特性で、関東西部山地や山梨県南アルプス山脈で強制上昇し、雪雲をより一層強めたことが、今回の記録的大雪につながった と私は考えます。

ちなみに、今回の、千葉県外房地域や茨城県の大雨ですが、関東南東海上からの暖気移流が、関東平野の相対的の気温の低い気流との間で、局地的な前線(沿岸前線)を発生させたためと思われます。

それにしても、関東西部山間部や山梨県山間部では、降水量はのきなみ110㎜以上。気温を勘案して雪に換算すると、おおむね1m50cm程度以上(一部2m程度)の降雪量となります。コモ方面では、如何に深刻な状況である事がわかります。なだれ や、屋根からの落雪、積雪により建造物の破損倒壊などには、暫く厳重な警戒が必要ですね!交通網が途絶えて孤立している地区も多数ありますが、一日も早く平穏な生活が戻りますように!


雨か雪か?降雪となる場合の特徴について 

2014-02-13 23:18:11 | インポート

①2月14日9時の予想天気図 気象庁HPより引用

14021309

今月8日~9日、東北地方以西の太平洋側では降雪に見舞われ、東北地方太平洋側や関東地方では、記録的な大雪となりましたが、14日~15日にかけて、低気圧が発達しながら本州南海上から関東南岸を進み、関東以西の太平洋側の各地では、再び大雪の恐れがでてきました。

こういう気圧配置の場合、雨か雪かの区別が気になるところですが、僅か1℃程度の差で、みぞれ から 積雪 となったりします。油断なりません。

◆(筆者自身の調査による)降水量をX(単位㎝とすること に注意!) 湿度90%とすると そのときの積雪量Y(単位㎝)の間には、以下の法則があります。

気温2・5℃以下で・・・・・みぞれ

気温1・5℃以下で・・・・・降雪となる

気温1・25℃・・・・・Y=5X

気温0・75℃・・・・・Y=7X

気温0・25℃・・・・・Y=10X

気温-0・25℃・・・・・Y=15X

気温-0・75度・・・・・Y=20X

となります。

この法則から、同じ降水量でも、気温が低いほど積雪量は増えることになりますが、仮に湿度90%で、降水量が10㎜とすると 10㎜は1㎝ですので

気温1・25℃・・・・・5cm  

気温0・75℃・・・・・7cm

気温-0・75℃・・・・・20cm  の積雪となるわけです。

さて、

◆今回のような南岸低気圧による降雪時ですが(以下筆者調べ)

◇上空1000m~2000mの風向に注目!この風向に開いた山の斜面のあたる地域では、降水量が増えますので、積雪量も増大すると言うことになります。

※特に関東甲信地方の場合ですが、個性ある現象となりますね。

ⅰ:上空1000m~2000mの風向が、関東地方東海上から東北東風~東より風となっている場合・・・・・日本海側佐渡沖から能登半島沖にかけて、地形的特性で低圧部が発生しやく、当該低圧部に吹き付ける気流が、関東山地や南アルプスにぶつかり、関東北西部や山梨県、長野県中部周辺で、積雪量が増えることになります。

ⅱ:上空1000m~2000mの風向が、関東地方東海上から北東風~北北東風となっている場合・・・・・千葉県内陸部で積雪が増える傾向があります。

更に、関東地方の場合、上空1000m~2000mの風向が、八丈島で南~南東となっている場合、関東南東沖から千葉県に東~南東風の暖気が張り込んで、千葉県沿岸部で局地的な前線(沿岸前線)を発生させて、この沿岸前線の暖気側では雨、寒気側(関東内陸側)では、みぞれや雪となり、この状態下では、さらに寒気側(関東内陸側)での、北より風と北北西風との衝突箇所より内陸側で、積雪となるものですね。

この、内陸側に発生する、北より風と北北西風との衝突箇所は、南岸低気圧が関東沖に接近とともに、前記沿岸前線が千葉県内陸側に移動して強まるとともに、それ自体も東側へ移動し、沿岸前線に吸収されるようになりますが、その際に、当該衝突箇所出の降雪域も東側に移動すると言う特性があります。


2月8日の記録的大雪について 関東周辺の総括

2014-02-11 02:14:22 | インポート

①引用図は、2月8日の関東地方(山梨県も含む)の各観測地点最大降雪(赤字)と総雨量図(青字)です。白地図HPよりダウンロードして、気象庁HPよりデータ参照。※各観測地点最大降雪量が※印は、翌9日にかけても降雪となり、積雪が上乗せされた地点です。

260208

2月8日から9日にかけて、低気圧が発達しながら本州南海上を通過し関東沖から三陸沖へと進みました。本州上空には大変強い寒気が流れ込んできていたため、2月8日から2月9日未明にかけて、関東地方周辺の各地では記録的な大雪となり、千葉では観測開始以来最高となる33cmの積雪を観測したほか、東京(気象庁所在の千代田区大手町)でも積雪が27㎝と、昭和44年3月以来46年ぶりの大雪となりました。

低気圧が発達したため、関東各地では、風も強まり、沿岸部では、瞬間で30m以上の暴風を観測した地点もあちこちで見られ、大雪と強風のため、吹き溜まりができたり、信号が見えなくなったりして、首都圏の交通機関は、一時大混乱しました。

この関東の記録的大雪ですが、原因として、ます、

◆大変強い寒気が関東地方に流れ込んでいた(8日9時茨城県館野上空1500mで気温-8・6℃)ため、関東各地の各観測地点の気温が大変低かったこと(8日日中、関東平野内陸部でおおむね-1℃以下、東京や横浜、千葉あたりでも、0℃未満の状態が続いた)

◆低気圧が発達しながら本州南海上から関東南岸を通過したため、関東地方の各地で、この時期としては、まとまった降水を観測したこと。

となりますが、その降水量の分布が、ちょっと個性ある降雪量分布をしていました。

引用図①より、山梨県、埼玉県 千葉県一帯で、降雪量が多くなっていましたね。

山梨県、埼玉県で降雪量がまとまった原因ですが、まず、

②2月8日12時の天気図全国ウインドプロファイラー風向風速分布図 ⅰ:は8日12時の天気図 ⅱ:は同時刻の、全国ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁Hpより引用

ⅰ:

Z__c_rjtd_20140208030000_met_cht__4

ⅱ:

20140208120000_2

引用図②より、8日12時現在、紀伊半島の南に低気圧がありますが、佐渡沖から能登沖にかけて、等圧線がくぼんで解析されています。ウインドプロファーラーでは、上空2000mと1000mでの、高田の風向は南よりで風速は10m以上と強まり、このことから、同時刻、佐渡沖から能登半島沖に、低圧部がありことが解ります。

引用図にはありませんが、8日9時の茨城県館野では、上空2000m以下が、ほぼ東より風でした。

茨城県館野の上空2000m以下で東より風の場合、本州中央部の脊梁山脈の地形的特性で、佐渡沖から能登沖にかけてでは、上空2000m以下で低圧部が解析されるのは定石と言えること(筆者調べ)で、この低圧部に向かって、関東平野上空2000m以下では東より風、山梨県付近では、東~南東風となっていたものと推測され、当該気流の流れが、関東山地や南アルプス山脈へ衝突して強制上昇気流をもたらした(地表付近では、風向がまばらかであったですが、この地表付近の風向と上空1000m~2000mの気流との間で鉛直シアーが大きくなったことも加わった)ため、埼玉県や山梨県では降水量がまとまり、降雪量も多くなったと言うわけです。

なお、千葉県周辺ですが、引用図②より、低気圧が紀伊半島の南にあり、かつ、八丈島上空1000mと2000mで、南より風が強まると(引用図②のごとく)、関東南東~南沖から房総半島沿岸には相対的に気温の高い気流(南東~東より風)が流れ込んで、千葉県内に、局地的な前線(沿岸前線)を発生させて、当該沿岸前線周辺で雨量がまとまります。

さらに、沿岸前線が発生すると、県内沿岸前線発生地点の西側に北風と北西風との風向の不連続部分が発生して、この不連続部分でも雨量がまとまります。前記、沿岸前線とこの気流の不連続部分との降水域、沿岸前線を発生させている低気圧が、房総半島へ接近とともに、千葉県内を南東~南よりへ移動するに伴い、前記気流の不連続部分は東へと移動して、これに伴う降水域が強まったり、沿岸前線の降水域とドッキングして降水域自体広がるようにもなりますね。(筆者調べ)

③8日18日の関東周辺レーダーアメダス解析雨量図ⅰ:と20時の関東周辺レーダーアメダス解析雨量図ⅱ: 気象庁HPより引用

ⅰ:

201402081800

                           ↓

ⅱ:

201402082000_2

④8日18日の関東周辺アメダス風向風速分布図ⅰ:と20時の関東周辺関東周辺アメダス風向風速分布図ⅱ: 気象庁HPより引用

ⅰ:

020818

                           ↓

ⅱ:

020820

引用図③より、8日18時現在 房総沿岸には、沿岸前線に伴うまとまった降水域があり、その西側、千葉市付近にも、小さいもののややまとまった降水域がみられ、当該千葉市付近の降水域、引用図④より、北西風と北より風との気流の不連続部分で発生している様子が解り、④のⅱ:で、当該気流の不連続部分が東へ移動すると、③ⅱ:より、当該不連続部分の降水域は、房総半島沿岸部の沿岸前線の降水域とドッキングして、まとまった降水域は千葉県内北部一帯に広がっています。

千葉県(北西部中心)の大雪は、この、房総半島沿岸の沿岸前線と、千葉県北西部を東へと移動した、北風と北西風との気流の不連続部分に発生した双方の降水域同士の、相乗効果により、もたらされたもの と言うわけです。


これから東日本 西日本の広範囲で大雪の予想 降雪と降雨の差はまさに紙一重!

2014-02-07 18:12:15 | インポート

①2月7日15時の天気図 気象庁HPより引用

14020715

                           ↓

②2月8日9時の予想天気図 気象庁HPより引用

14020709

本州上空には、大変強い寒気が流れ込んできている所へ、低気圧が九州南海上から本州南海上を発達しながら北東へ進む予想で、西日本ではあす午前中まで、東日本ではあさって9日未明まで、まとまった降雪となり、大雪となる恐れが強まってきました。

降雪となる場合、上空1500mの気温が、おおむね-6℃以下、南岸低気圧(今回のような)接近時の関東平野各地ですと、おおむね-3℃以下というのが、一つの目安となっていますが、降雪が積雪となるか否か、が一番重要な問題。私自身の調べですと、地表付近の気温と湿度と降水量との間には、以下の法則があることが解りました。

◆降雪時の湿度は一律90%、降水量を10㎜とすると、

 ⅰ:気温1・5℃未満で完全な降雪となり

→ⅱ:気温1・25℃で、5cmの積雪

→ⅲ気温0・75℃で7・5cmの積雪

→ⅳ:気温0・25℃で10cmの積雪

→ⅴ:気温-0・25℃で15cmの積雪

→ⅵ:気温-0・75℃で20cmの積雪

となります。

また、気温がおおむね3℃以上ですと、雨  2℃台で みぞれ となります。

ご覧のように、雨から降雪となる気温差は1・5℃程度、降雪となって、わずか0・5℃差で5cm積雪となってしまうこともあるということです。

現在の数値予報でも、1℃~1・5℃は、通常頻繁に発生しうる誤差の範囲。いかに降雪となって積雪となるかの見極めは難しいということです。

さらに、関東平野では、北側と南側を山地に囲まれている地形的特性上、下層に冷気が対流しやく、降水時の蒸発作用も加わり、内陸部中心に下層では、事の外気温が低下し、思わぬ降雪となることも珍しくありません。

③昨年1月14日東京都渋谷区内(筆者自宅そば)での、坂道をスリップした乗用車 筆者撮影

25011401

このような光景に出くわすのも、まさに 紙一重の世界 と言うこと。東日本や西日本(特に太平洋側)の皆さん!油断されないように!


関東平野一帯に降雪 天気図にははっきり表れない曲者が原因

2014-02-04 23:22:07 | インポート

①2月4日15時の天気図 気象庁HPより引用

14020415

②2月4日15時の日本付近雲画像図(水蒸気画像で拡大版) 気象庁HPより引用・加工

20140204150000

2月4日午後からは、普段雪が殆ど降らない関東平野周辺の各地で降雪となり、秩父で10㎝、宇都宮で9㎝の降雪を観測したほか、東京都心でも、植え込みなどがうっすら白くなり、今季初めての積雪を観測しました。

この原因は?ですが、引用図①より、地上天気図上には、天気を悪くするような低気圧や前線は、4日15時現在、関東地方周辺には解析されていません。

が、引用図①より、等圧線が関東周辺には袋型(低圧部)となっており、引用図②より、4日15時現在、水蒸気雲画像上には、まるで猫の引っかき傷のように北北東~南南西方向に糸状に白く輝く画像域が幾重にも重なっています。(引用図②内 A)

引用図②内、Aのように水蒸気画像上で表現される箇所は、上空3000m付近の上昇流域(500hpaの正渦度移流域)であり、寒気移流の先端に見られるものです。

上空3000m付近が上昇流となりますので、その下側の下層(おおむね上空1500m以下)での気流の合流による収束箇所での雲の発達に寄与する結果となり、当該下層の気流の収束箇所に対応して降水域が形成されるということになります。

この現象は、本ブログ本年1月9日や1月22日の事例と同様ですが、まさに、天気図(地上天気図)には見えない曲者の仕業で、4日の関東平野周辺の降雪は引き起こされたといえますね。