カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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日本海で低気圧発達 各地で強風 低気圧の暖域は実はこんな特徴が!

2013-03-18 23:55:24 | インポート

※記事内風速表示値は毎秒値です。

①3月18日12時の天気図 気象庁HPより引用

13031812

②3月18日10時~18時までのウインドプロファーラー時間高度分布図(勝浦) 気象庁HPより引用

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③3月18日10時~18時までのウインドプロファーラー時間高度分布図(熊谷) 気象庁HPより引用

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④3月18日10時~18時までのウインドプロファーラー時間高度分布図(水戸) 気象庁HPより引用

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3月18日は、日本海に低気圧が発達しながら進んできて、低気圧の中心から延びる寒冷前線が、西日本から東日本へと移動しました。

このため、東北~九州にかけて南~南西風が強まり、所処で瞬間で30mを超す台風並みの暴風を観測した箇所があり、この寒冷前線に向かって暖湿流が入り込み、前線付近では大気が非常に不安定となったため雨雲が発達、南西諸島の一部では、1時間に90㎜を超す猛烈な降水を観測した箇所や突風で駐車中の乗用車が吹き飛ばされた被害も発生しています。

引用図②③④に、18日日中、低気圧の暖域に入った関東地方の勝浦、熊谷、水戸の各観測地点のウインドプロファイラー時間高度分布図を取り入れていますが、程度の差あれ、鉛直方向に、いずれの各観測地点で、上昇流域と下降流域とが交互に発生している様子が解ります。

つまり、低気圧の暖域では、上昇流域と下降流域とは隣接しながら分布している気流の状態という特徴があることを示すもので、特に、上昇流域から下降流域に移行し、下降流は強まりつつある箇所で風速が強まる傾向があります。

各観測地点での最大風速を観測した時間は 勝浦で8時23分(南南西12・3m) 熊谷で13時57分(南南東9・0m) 水戸で12時37分(南南西12時37分)となっていますが、勝浦の最大風速観測時は引用図には網羅されていないものの、他の、熊谷、水戸とも、おおむね、下降流が強まりつつある時間帯に最大風速が観測されている様子が解りますね。

ちなみに、暖域内で、上昇流域が卓越する箇所は、雨雲が発生・発達しやすいポテンシャルが大きい箇所で、当該暖域内の対流不安定が大きくなり、地形的上昇など、地表付近での気流の収束上昇があるほど、雨雲はより発生・発達しやすくなります。


本日12時より 新しい津波警報システムがスタート!

2013-03-07 00:39:25 | インポート

東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)発生から、まもなく2年を迎えようとしています。

地震発生当時、地震発生より約3分で、大津波警報が宮城県沿岸(6mと予想) 岩手県沿岸と福島県沿岸(それぞれ3mと予想)にだされましたが、実際には東北地方の太平洋沿岸には、軒並み高さ15mを超える巨大津波が押し寄せて、北海道~東北~関東の太平洋沿岸に甚大な津波被害が生じてしまったことは周知の通りです。

これは、

ⅰ:従来の地震観測・震源地や地震規模算出に基ずく津波予報・警報発表が速報性を重んじていたため東北地方太平洋域地震のような巨大地震の場合、当該地震の震源域の一部しか把握できないまま、津波警報を発表せざるをえなかった

ⅱ:津波併用発表時の津波予想高さが、第一報時から数値で細分化したため、沿岸住民に方々から、当該予想高さから非難の必要がないと誤解された節もあった。

などの、課題が突きつけられていたことも事実であります。

そこで、新しい津波方法の改善内容ですが 

気象庁ホームページhttp://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/tsunami_keihou_kaizen/about_kaizen_gaiyou.html

を参照頂ければ と思いますが、

改善のポイントを、私なりに列挙して見ました。(気象庁HPより引用)

まず

Ⅰ:巨大地震による津波予想規模の過少評価をなくしたこと

地震波の長周期成分の大きさや震度分布の拡がりなどから、巨大な地震の可能性を評価・判定する手法を取り入れたこと。 地震の発生直後、即時に決定した地震の規模が過小であると判定した場合には、その海域における最大級の津波を想定して、 大津波警報や津波警報を発表。これにより、津波の高さを小さく予想することを防ぐというもの 。

地震規模発表時に従来の震源地・地震規模算出方式で、巨大地震(マグニチュード8以上)と算出されなくても、地震波の長周期成分の大きさや震度分布の拡がりなどから、巨大地震(マグニチュード8以上)と推定される場合は、「規模:巨大地震と推定」と言う情報文が出され、その海域における最大級の津波を想定して大津波警報・津波警報などが出されるとのことです。

Ⅱ:第一報で、大津波警報は「巨大」 津波警報は「高い」と定性的表現を取り入れたこと

まだ地震の規模が制度よく決定できない第一報(地震発生後3分)では、避難を迅速に行わせるためでしょう。津波高さを定性的な表現にして、より切迫性を感じさせる内容としています。

Ⅲ:約15分ほどで地震のモーメントマグニチュードを算出して、当該モーメントマグニチュードを利用することで精度よく地震の規模が求められた場合、予想される津波の高さを、1m、3m、5m、10m、10m超 の5段階に

地震発生から15分ほどで地震のモーメントマグニチュードを算出し精度のよい地震の規模が把握できたら、その時は、予想される津波の高さを「巨大」「高い」という言葉での表現から、5段階の数値での発表に切り替ること。

<参考>津波警報・注意報の分類と、とるべき対応

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さらに、津波観測には、◇津波観測計   ◇GPS波浪計   ◇沖合水圧計   ◇ブイ式海底津波計 を活用して、沖合いからも、津波実況監視に当たり、津波予報・警報発表に役立てるようになりますね。

これにより、津波地震 と呼ばれる、観測される地震の揺れが比較的小さいが、大きな津波が引き起こされる地震時の津波も、監視可能となるわけでしょうね。

<参考>日本付近各観測点一覧、※● 津波観測計   ▲ GPS波浪計   ▼ 沖合水圧計   + ブイ式海底津波計

Japan

Ⅳ:更に、大津波警報、津波警報、津波注意報発表時で、沿岸で津波が観測された場合

◆大津波警報は、1mを超えるまで ◆津波警報は20cm以上 となる波高に満たない場合、「観測中」と言う表現を用い、注意喚起を怠らないようにすること。※津波注意報発表地域は、観測津波実況値をそのまま発表とのことです。

Ⅴ:沖合水圧計やブイ式海底津波計の観測を基に、

◆大津波警報では沿岸で3mを超えると見込まれる場合

◆津波警報では沿岸で1mを超える見込まれる場合に 

予想される津波の高さ(沿岸)を数値で発表することにして、津波は沖合で観測したが、沿岸では、前記した津波の高さにならないとならない場合は、沖合の観測点では「観測中」 沿岸の観測点では「推定中」と言う表現で発表することで、注意喚起を怠らないようにすること。※津波注意報発表地域は、観測津波実況値をそのまま発表とのことです。

なお、沖合の観測点の津波波高から、沿岸の観測点の津波波高を推定する方式ですが、津波が深さの4乗根の反比例する ※深さ100mの観測点で2mの波高の津波は、深さ25mになると4mの波高となることですね。 と言う定説を取り入れるのでは、と私は考えています。

このように、新しい津波警報システムでも、状況に応じて、警報および情報は更新されうるもの 情報は常に最新のものを活用すると言うことが防災活動には鉄測であるわけです!!