カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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暖湿流 いろいろな点で厄介者

2009-11-27 23:55:58 | インポート

①11月27日9時の天気図 気象庁HPより引用

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②11月27日9時の日本付近雲画像図(可視画像で拡大版) 気象庁HPより引用

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③11月27日9時の日本付近ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用

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11月27日は、本州付近には南から暖湿流が流れ込みました。

このため、最低気温、最高気温ともほぼ全国的に高めで、1ヶ月、季節を後戻りさせたような、小春日和の1日よなって箇所が多かったですね。

南から暖湿流が流れ込むと言うと、低気圧や前線が接近・通過中であったり、上空に寒気が流れこんでいたりすると、途端に雨雲が発達して、大雨をもたらしやすくなることは周知の通りですが、もいひとつ、厄介な現象が発生しやすくなります。

それは、濃霧です。27日朝方、本州の広範囲で濃霧に見舞われて、交通機関の運行ダイヤに乱れが生じたりしました。

暖湿流の収束している箇所では、特に雨雲が発達しやすいということは以前にも本ブログで紹介しましたが、大気の状態がさほど不安定ではなく、上空1000m付近より上側で、風向が南よ分を帯びているが、地表付近では風向が疎らか、風向が北分を帯びて風速が比較的弱めの場合(地表付近で気流が澱んでいる状態の場合)、朝晩を中心に濃霧となってしまいます。

特に、外海に面していて、内陸部に対流する冷気と海上からの暖気とがぶつかり合いやすい、関東地方東部や南部沿岸部や東海地方沿岸、それに、南からの気流が地形的に澱み易い瀬戸内地域など、濃霧がとりわけ発生しやすいものです。

引用図②より、瀬戸内地域に、煙のようなぼやけた状態になっている箇所は、濃霧が発生している箇所です。


おお寒い~! 東京は真冬並みの陽気。

2009-11-19 23:55:12 | インポート

①11月19日15時の天気図 気象庁HPより引用

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②11月19日15時の日本付近ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用

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11月19日は、本州上空を気圧の谷が通過しました。

引用図①より、高気圧の中心が、ひとつ、三陸沖に進んで、関東地方には件の北東気流が流れ込む気圧配置となってしまったこともあり、関東地方(特に南部)では天気が愚図つき、冷たい雨が降りしきる1日となってしまいました。

このため、東京では、最低気温が日中(14時12分)に7・0℃を観測し、まるで真冬のような、底冷えする1日でしたね。

関東平野に北東気流が吹きつけて悪天になってしまう場合、北東気流(細かく言えば、関東平野では、北東~北より風となっていますが)はせいぜい上空1000m~1500m付近まで。引用図②より、上空2000メートル以上は決まって南~南西風で、暖気移流となっているものです。

下層では寒気移流となっているのに、上空2000mより上側では暖気移流となっているわけですから、下層の気流を上から蓋をする格好(語弊があるかもしれませんが)となるため、下層、特に地表付近では冷気が対流しやすくなります。さらに、当該状況下に降水があれば、蒸発で気温が更に低下してしまいます。

関東地方では、北東気流+悪天の場合、日中の気温が低下する ことが定石ですね。

ちなみに、11月19のように、東京で最高気温でも10℃未満(午前0時39分に9・4℃)だったのは、平成4年11月28日以来、17年ぶりのことです。


紅葉盛りは、ようやく都心周辺にも

2009-11-18 23:14:15 | インポート

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東京都内 渋谷駅前、街路樹の色付き具合 11月18日 筆者写す。

11月も半分を過ぎて、紅葉前線も、ようやく関東の平地、東京都心のすぐそばまでやってきたようですね。

紅葉と言うもの、気象庁では、①イロハカエデの紅葉(葉が赤く色ずくもの) と②イチョウの黄葉(葉が黄色く色ずくもの)とに分けて、各気象台や測候所で、観測基準となる木(標本木)を決めて、

Ⅰ:当該標本木の葉の大部分が色付いた→紅葉(イロハカエデ) や 黄葉(イチョウ)になった。と発表し

Ⅱ:当該標本木の色付いた葉の大部分が落葉した→それぞれ、イロハカエデやイチョウの落葉があった。と発表されます。

各地点の、イロハカエデの紅葉日を算出する式を紹介しましょう。※気象庁使用の式に、筆者がアレンジしたものです。

Ⅹ・・・・・10月1日からの経過日   Y・・・・・9月の平均気温  Z・・・・・紅葉平年日までの平均気温 とすると

イロハカエデの紅葉日 Tは 東京や横浜など関東南部平野部では

T=10月1日+Ⅹ=-43・61+3・99Y-4(紅葉平年日までの日平均気温の平年値-Z)小数点以下は切り上げ の関係があります。

前記式に±7日を加えた期間日数以内が、紅葉の見ごろである と言えます。

なお、イチョウの黄葉日は、東京の場合ですと、およそ、イロハカエデ紅葉日より、7日~10日前となるようです。


和歌山で観測史上最高 1時間119・5㎜の豪雨

2009-11-11 20:28:13 | インポート

①11月11日3時の天気図 気象庁HPより引用

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②11月11日3時の日本付近ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用

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③11月11日4時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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11月11日は、低気圧や前線を含む気圧の谷が本州付近へ進んできました。

本州付近には、暖湿流が大量に流れ込んで、あちこちで、24時間雨量が100㎜を超しましたし、11日4時には、和歌山県和歌山市で、前1時間降水量が119・5㎜と、観測史上最高の降水量となる、猛烈な雨となってしまいました。

引用図①より、地上天気図だけを見る限り、和歌山市がある近畿地方周辺では大雨が降るとは考えにくいですよね。

ところが、引用図②をご覧いただきますと、上空1000m付近の画像データに注目です。南西風と南より風とが紀伊水道付近で衝突して、風速20m以上と強まっています。さらに、引用図②③とを見比べると、南西風と南より風とが衝突している箇所で、強い降水域が分布しており、紀伊水道から紀伊半島北西部付近では、1時間に80㎜以上の猛烈な降水域が分布しています。

この、引用図②での、上空1000m付近の風向は、大雨の基となる、南海上からの暖湿流の流れ込んでいる様子を示すもので、南西風と南より風とになって流れ込んだ暖湿流が高いに衝突して収束した箇所に、強い降水域が帯状に発生している訳です。

さらに、引用図にはありませんが、和歌山市を含む、大阪湾岸から紀伊水道沿岸の地域では、11日1時以降、北東の風がやや強まっており、所によっては風速10m程度まで達していました。この、地表付近と上空1000m付近との風向のコントラストが大きい(鉛直シアーが大きい)状態も関与されて、今回の和歌山市の猛烈な雨が生じたと言えるでしょう。

暖湿流が本州付近に大量に流れ込んでくる場合は、

Ⅰ:上空1000m~1500m付近の風向の注意しましょう。当該、上空1000m~1500m付近で気流が集まって風速が強め(おおむね風速20m以上となっている箇所は要注意!帯状に強い降水域が発生するようになります。

Ⅱ:さらに、前記Ⅰの状況下で、地表付近との風向風速の状況にも気をつけましょう!地表付近と上空1000m付近とで、風向のコントラストが大きかったり、地表付近で、風向の不連続部分がある箇所では、前記Ⅰで紹介した帯状の強降水域はより一層発達し、局地的に相当な雨量を観測するようになります。

本年も、8月9日夜、兵庫県作用町や翌8月10日朝方、千葉県佐倉市周辺で猛烈な降水を観測しましたが、前記ⅠとⅡの状態が双方同時に発生したためです。


天気図上の低気圧位置と雲画像とのずれに注意!新たに低気圧発生の兆し!

2009-11-10 23:29:42 | インポート

①11月10日9時の天気図 気象庁HPより引用

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②11月10日9時日本付近雲画像図(赤外画像で拡大版) 気象庁HPより引用

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③11月10日9時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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日本付近を覆い、広範囲に小春日和をもたらした優勢な高気圧でしただ、次第にその勢力を東海上へと移しつつあります。

優勢な高気圧の進行方向後面の縁に入ると、南海上から暖湿流が入り込んできます。その兆候として、朝晩中心に、本州の太平洋側(特に北日本や東日本の太平洋沿岸。関東では千葉県内や茨城県内ですね。)では濃霧に見舞われやすくなりますし、当該高気圧の後続で本州付近に接近してくる気圧の谷では、大雨をもたらすやすくなります。

事実、10日朝、関東地方の千葉県内や茨城県内では濃霧に見舞われて、千葉県内のJR総武線など、ダイヤが大幅に乱れましたし、引用図①②③より、西から本州付近に低気圧や前線を含む気圧の谷が接近してきて、この気圧の谷は、所々に発達した雨雲を伴い、強い雨が降っているのが解りますね。

まさに定石通りと言ったところでしょうが、さて、ここで、引用図①の東シナ海西部の低気圧の位置と、引用図②③の発達した雨雲がかかる位置とを対比してみましょう。

引用図①の天気図(地上天気図)上の低気圧より東側に離れた(直線距離で500㎞~600㎞  でしょうか。)箇所で先行して発達した雨雲が発生して、強い雨を降らせており、引用図②③より、当該強雨域には、南西方向と南東方向とに、帯状に雨雲が発達して、この2つの帯状に発達した雨雲が合流した箇所で、広範囲に強い雨を降らせている様子が解りますね。

実は、この現象、九州の西で、暖湿流が南西方向と南東方向とから大量に流れ込んで互いに衝突して、ひときわ発達した雨雲を形成したもので、特に、本州付近が優勢な高気圧に覆われて、その後面の外縁部に入った後、西から低気圧が本州付近に接近してくる気圧配置時に、頻繁に発生するものです。

そして、低気圧の進行方向前面に先行して発生した強雨域には、新たに別の低気圧が発生して、この新たに発生する低気圧が発達しながら東進する。と言ったシナリオを取るようになります。

天気図(地上天気図)上の低気圧の位置のみに固執しては駄目です!かならず雲画像等と対比させて、天気図上の低気圧の位置と雲画像の発達した雨雲の位置とのズレに、目を光らせなくてはなりません。!!