カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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地表摩擦と地形的特性で、台風は七変化(平成30年台風21号の事例より)

2018-10-17 22:59:04 | 日記
① 9月4日12時の天気図と近畿地方周辺アメダス風向風速分布図
ⅰ:天気図 


ⅱ:風向風速 



② 9月4日15時の天気図と近畿地方周辺アメダス風向風速分布図
ⅰ:天気図 


ⅱ:風向風速 


③ 9月4日12時~15時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用
ⅰ12時:

ⅱ13時:

ⅲ14時:

ⅳ15時:

④ 9月4日13時30分~15時00分までの30分毎レーダー画像図 国土交通省 川の防災情報HPより引用


ⅰ13時30分:

ⅱ14時00分:

ⅲ14時30分:

ⅳ15時00分:

(参考)
近畿地方の地形図 国土地理院HPより引用




平成30年台風21号ですが、9月4日12時頃、徳島県沿岸を通過して、14時頃、兵庫県神戸市付近へ強い勢力のままで上陸しました。

台風21号は、徳島県沿岸〜近畿地方を、およそ時速55㌔~60㌔と速い速度で通過しました。

台風がもたらす風速ですが、台風自体の気流の渦+台風の移動速度で左右されます。なので、一般的に台風の進行方向右側が風速が強く、台風の移動速度が早くなるほど、台風の進行方向右側で風速はより増大します。(これはあくまでも一般論。台風は、周辺の気圧傾度が大きくなっている箇所で風速は強まり、偏西風帯のアシストを受けている状態ですと、台風の進行方向左側では、等圧線が混んでいて、進行方向右側よりも風速が増す場合もありますが。)ただ、台風の移動速度が早い場合、
時速50㌔程度ですと、台風自体の渦の速度+およそ14㍍毎秒
時速70㌔程度ですと、台風自体の渦の速度+およそ19㍍毎秒

の風速が台風で吹きますから、移動速度の速い台風ほど、風害がより顕著になるといえますね。


引用図①②より、台風の進行方向右側で、とりわけ風速が増大している様子がわかりますね。
和歌山では、4日13時19分、瞬間最大風速57・4㍍毎秒(南南西風)と観測史上1位となる 猛烈な暴風を観測しています。

さらに、引用図③より、台風が四国東部〜西日本を通過する様子ですが、上空3000㍍付近では、反時計回りの台風に伴う気流の渦巻きははっきりしていますが、下層と呼ばれる上空2000㍍付近や上空1000㍍付近、高度下がるほど、台風取り巻く渦巻きははっきりしなくなりました。

これは、台風に伴う気流渦巻きが、本州の地形的特性や地表付近の摩擦を受け変形たため
ですが、更に。引用図④より、この台風の変形のs詳細の様子を見てみましょう

引用図④では、台風21号の目を a で表記しました。ⅰ、ⅱ、ⅲ、ⅳとなるにつれて、台風21号の目が小さくなり、4日15時には、目ははっきりしまくなりました。
さらに、ⅲ、ⅳより、台風が近畿地方を北北東へ移動するとともに、山陰東部から近畿北西部で、北西〜南東方向、さらに、兵庫南東部から大阪北部での南西〜北東方向への地形的鞍部で顕著になった帯状雲が互いに京都府南丹から亀岡市付近で合流して、a とは 別に新たに、反時計回りの回転渦 b を形成してきました。

台風は、陸地へ上陸後、陸地の摩擦の影響を受けて、目が次第に小さくなりますが、実は、目が小さくなり始めるとともに、角速度保存の法則で、一定時期、目の狭まりと反比例して台風自体の気流の渦の回転速度は増大します。上陸する台風の中心気圧が低いほど、950hpa台以下ですと顕著になります。)このことは、地形的特性などで、台風の目とは別に新たな気流の渦が発生することがありますが(引用図内での b がそうですが)、この場合も、地表の摩擦と渦の角速度保存の法則との相乗効果で、渦の回転は一定時期増大するものですね※筆者確認

引用図④ⅰ,ⅱより、台風21号は神戸市付近後、目が小さくなりました。とともに、当初、台風自体の渦の回転速度が増大したことが考えられますが、さらに、台風取り巻く帯状雲は、淡路島や和泉山地での地形的鞍部通過で顕著になり、大阪府内付近で台風の中心付近へ合流するような状況となっております。
これらの相乗効果で、台風21号の気流の渦巻きは一層増大したと考えられ、この状態が継続されながら、台風が近畿地方を北北東へ移動した、4日14時30分頃にかけて、近畿中部各地域中心に、各地で瞬間50㍍毎秒以上 10分間平均でも、25㍍毎秒以上の記録的な暴風となりました。


大阪府内で、住家の破損40000棟以上!大阪で、最大瞬間で47・4㍍毎秒(南南西風で14時03分)10分間の平均の最大風速でも27・3㍍毎秒(南南西風で14時11分)を観測!この値は、東成区 市立本庄中学校屋上での観測で、周辺に高層建物が多く、府内周辺より風速値がやや低めに観測される特性があるようですから、大阪府内広範囲で、平均でも30㍍毎秒以上、瞬間では50㍍毎秒以上のすさまじい暴風が吹いたと推定されます。

さらに、④ⅲより、4日14時30分になると、前記した、地形的鞍部で顕著になった帯状雲が互いに京都府南丹から亀岡市付近で合流し始め、新た発生した回転渦 b がより顕著になり、京都府内亀岡市内では、4日14時20分に、瞬間最大風速44・5㍍毎秒(東南東風)※亀岡消防署観測 の猛烈な暴風を観測!亀岡市内だけでも破損家屋160棟以上の甚大な風害をもたらしました。

台風の上陸直後に発生する以上述べた特性には充分留意する必要がありますね!!