カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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東北太平洋側や関東平野に北東気流 北東気流の発生・維持の要因のひとつに意外なことが!

2010-05-29 20:10:44 | インポート

①5月29日9時の天気図 気象庁HPより引用

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5月29日は、梅雨前線の影響で、南西諸島では雨天となり、特に沖縄本島では激しい雨も降りましたが、西日本を中心に晴天に恵まれました。

が、東北の太平洋側や関東地方では曇天となり、弱い雨がぱらついた所もありました。東海上からの湿った気流(北東気流)が流れ込んできたためです。その様子を、引用図② (5月29日9時の日本付近可視画像での雲画像図 気象庁HPより引用)を参照ください。

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引用図②をご覧になって気が付かれた事があると思います。まず、雲に覆われているのは、東北地方太平洋側から関東平野であることですが、東海道沖と新潟佐渡沖にも雲の塊があることがお解かりでしょうか?

更に、引用図③(5月29日9時の日本全国ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用)をご覧いただきましょう。

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引用図②の一番下側の図(上空1000m付近の風向風速分布図)を見ると、引用図②で雲の塊があったエリアである、東海道沖と新潟佐渡沖には、低気圧性循環(気流の流れが反時計回りとなっている)があるのが解りますよね。

これは、地形的に鞍部となっている地域が、東北地方では東西方向に、若狭湾から伊勢湾周辺にかけて、北西から南東方向にあり、上空1000m付近での風向が、東北地方東海上から関東地方南東沖にかけて、北東から南東風となっている場合、ほぼ例外なく、前記した、東海道沖と新潟佐渡沖には、低気圧性循環が発生しています。言ってみれば、当該地域に低気圧が隠されている訳ですね。

これら、東海道沖と新潟佐渡沖には、低気圧性循環が発生することと、もうひとつ、三陸沖から関東東海上での海流(親潮)の影響も加わり、東北地方太平洋側から関東平野には、東海上からの湿った気流(北東気流)が卓越・維持されるようになります。

東北太平洋側や関東平野の各地に悪天をもたらす代表格と言える、北東気流ですが、当該北東気流を発生・維持させる要因の一つに、本州の地形的特性 が挙げられる ことはあまり知られていないのではないでしょうか?


暑かった!! 東京で本年初真夏日30・9℃

2010-05-21 23:52:35 | インポート

①5月21日12時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月21日9時気象庁発表のAXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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5月21日は、関東や中部、近畿地方中心に晴天に恵まれて気温が上がりました。

最高気温は、群馬県館林で33・4℃ 埼玉県鳩山で33℃を観測したほか、東京(気象庁のある千代田区大手町)でも、12時19分に本年最高気温で初真夏日となる30・9℃を観測しました。

高温になる気象条件として、風下側に山地がある地域の場合、当該山地を越える気流が吹いている場合、当該気流が山越えの気流となってフェーン現象を引き起こすことによる高温が多いものですが、更に次の事項が要因として挙げられます。

Ⅰ:地表付近が乾燥していること

Ⅱ:上空3000m付近で下降流が卓越していること(更に、地表付近で、隣接地域で局地的に下降気流となっている地域であれば尚更です。)

Ⅲ:上空1500m付近に暖気が流れ込んでいること

Ⅳ:沿岸部の場合、日中、海風が卓越しにくい気圧配置となっていること(総観場で、海風が吹く方向とは正反対の、陸地から海上に気流が流れる場となっていること。)

ですね。

関東平野の各地に限って言えば、どうも、今回の高温、山越えフェーン現象と言うよりは、前記、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを満たしていること(更に東京など沿岸部では、前記Ⅳを満たしていること)が原因であると言えそうですね。

現に、東京の場合、最高気温発生時刻(午後12時19分)までは、風向が疎らで風速は3m以下と弱めでしたし、12時の湿度は23%と乾燥していました。

引用図②の下側より、関東地方から中部地方、近畿地方にかけての広範囲で、上空3000m付近では下降流が卓越していましたし、上空1500m付近では関東地方以西の各地では、おおむね14℃以上と、この時期としては高めとなっていました。

実は、日中、特に海風が発達する関東平野の沿岸部の場合、前記Ⅳの気象条件を満たす高温が多いものです。


沖縄本島で大雨 天気図上の前線の位置だけに固執しないことですね!

2010-05-16 20:34:33 | インポート

①5月16日9時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月16日9時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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③5月16日9時気象庁発表のAXFE578図  日本気象予報士会HPより引用

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④5月16日15時の天気図 気象庁HPより引用

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⑤5月16日15時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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5月15日夜から沖縄本島中心に強い雨が降り続いて、16日16時30分までの24時間に、沖縄本島中部の宮城島では294・5㎜もの降水量を観測しています。

この大雨、下層の暖湿流が収束したところへ、500hpa(上空5500m付近)の正渦度の極大域が移動してきた(正渦度移流域)ため、上空3000m付近の上昇流が活発になったことで、下層の暖湿流をより一層上昇させしめて、強い雨雲を発生させたため と 私は考えますね。

引用図②と、③の下側をご覧いただきましょう。

16日9時現在、沖縄本島のすぐ南の海上には、上空1500m付近で15℃以上(引用図にはありませんが湿数3以下となっています)の暖湿流が、南西風と南東風とになって流入(収束していますね)しています。

さらに、引用図③の上側より、沖縄本島の北西には、正渦度極大域があり、沖縄本島付近へ接近しており、当該正渦度極大域では、引用図③の下側より、上空3000m付近での上昇流が顕著になっていて、前記、上空1500m付近の南西風と南東風との収束した部分では、とりわけ上昇流は強まっています。引用図②より、当該、上昇流の強まった区域で、帯状に強い降水域が見られます。

当該、強降水域に長時間入ってしまった沖縄本島(特に中部を中心に)、大雨となった訳です。

引用図①②と④⑤を比較すると、沖縄近海の梅雨前線の位置は殆ど変化ありませんが、強い降水域は、西から東へと移動しています。これは、500hpaの正渦度極大域の移動に伴い、正渦度移流域に対応する、上空3000m付近の顕著な上昇流域も東へと移動したためと考えられますね。

天気図(地上天気図)上の前線の位置ばかりに固執しては駄目!と言う所以が、今回の大雨の事例より解ると言うものです。


今日も各地で真夏のような暑さ この暑さの源は?

2010-05-05 18:41:07 | インポート

①5月5日9時の天気図 気象庁HPより引用

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5月4日に続いて、本日5月5日も、本州上を高気圧が覆い、東北南部から近畿地方を中心に、気温が上がり、所によっては、7月下旬~8月上旬並みの真夏のような暑さとなりました。

岐阜県神岡で32・3℃ 長野県上田で32・2℃ 兵庫県和田山で32・1℃の最高気温を観測したほか、福島 甲府 熊谷 秩父 前橋 松本 京都 奈良 などで 最高気温が30℃以上となる真夏日となりました。

さらに、東京(気象庁のある千代田区大手町)で27・6℃ 名古屋で29・2℃ 大阪で28・0℃と 本年最高となる最高気温を観測しています。

昨日から本州の広範囲で高温状態となっていますが、このカラクリを早速説明しましょう。まず、引用図②③をご覧ください。

②5月4日9時気象庁発表AXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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③5月5日9時気象庁発表AXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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引用図②③の上側 500hpaの等高度線にまず注目です。どちらとも、北緯45度~50度付近で等高度線が混んでおり、5月4日と5日は、この方面で帯状に風速が強まっている様子が判りますが、当該、帯状の強風域の南側では、500hpaの負渦度移流域となっていますね。500hpaの負渦度移流域は イコール 上空3000m付近の下降流域とも言い換えられます。(渦度方程式より)

さらに、②③の下側に目を向けますと、前記 500hpaの負渦度移流域(イコール 上空3000m付近の下降流域)に対応して、中国大陸東部から本州上空1500m付近にかけて、15℃以上の高温域(地上で30℃以上になりうる状態と言えます。)が広がり、②③を比較すると、当該高温域は、中国大陸東部から本州上空へと西から東へと移動し広がった様子が判りますね。

どうやら、今回の高温、中国大陸東部で発生し、本州上空へ広がってきた高温域が原因であると言えそうです。

この高温域を突き詰めると、

先月下旬、500hpaの偏西風帯が本州付近で蛇行し、4月29日に、当該偏西風の谷の部分が本州上空を通過しました。

→その後、5月1日以降、当該偏西風の谷の西側にあった、偏西風の峰の部分(前記した、500hpaの負渦度移流域に対応するものですね。)が中国大陸から本州付近へ残りましたが、

→偏西風帯の蛇行は、一旦弱まり、偏西風帯は、中国大陸奥地のチベット高原の北縁を沿う流れ(500hpaで、北緯45度~50度付近で等高度線が混んでいる部分に対応します。)と、本州の南海上とに分断されて、中国大陸から本州付近上空にかけ500hpaの負渦度移流域が分布するようになり

→500hpaの負渦度移流域は イコール 上空3000m付近の下降流域 となりますから、地形的に、中国大陸東部で、当該 上空3000m付近の下降流が卓越し、チベット高原からの山越え気流がフェーン現象をも呼び込んで、この地域の上空1500m付近の高温域を形成させて

→当該、上空1500mの高温域は東へと広がって、本州付近上空へ5月3日以降到達し、今回の、連日にわたる各地の高温となった訳です。

このように、当初、500hpaの偏西風帯が蛇行し、当該偏西風の谷が本州上空を通過した後で、本州付近上空で偏成風帯の蛇行が弱まる場合には、中国大陸東部の上空1500m上空の動向に要注意!ですね。