カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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北日本を寒冷前線通過 秋田能代では竜巻も 

2009-10-30 23:55:47 | インポート

①10月30日9時の天気図 気象庁HPより引用

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10月30日は、北日本を寒冷前線が通過しました。

このため、北海道地方や東北地方では所々で雷を伴なった強い雨が降りましたし、30日9時30分頃、秋田県能代市では竜巻と見られる(と言うより、漏斗上の雲も見られましたし、止まっている車が浮き上がった。と言う証言から考えて、竜巻と断定して良さそうです。)突風が吹き、民家の破損等の被害もありました。

竜巻発生当時の、アメダス能代のデータを見ると、30日午前9時には西南西7mを観測していましたが、30日10時には、風向が変化し、西北西5mとなり、竜巻発生当時の能代市付近には、風向の水平方向の不連続(シアー)があることが推定されますし、引用図にはありませんが、各種実況図より、秋田県付近上空1500m付近では、西より風で風速20m以上と、地表付近から鉛直方向に気流の不連続(これは鉛直シアーとなりますね)が認められます。

続いて、竜巻発生時刻直前空発生時刻までの、③10月30日9時10分、④10月30日9時20分、⑤10月30日9時30分 の東北地方レーダーエコー合成図(ペパーランド気象センターHPより引用)をご覧頂きましょう。

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③④⑤とも、能代市(男鹿半島の北北東約20km)付近には、ほぼ西南西~東北東方向へ連なるエコー(マルチセルからスーパーセルになりたてでしょう。)が見えますが、当該エコーの外縁部がほぼ小豆型をしてくっきりしており、エコーの中心部から外縁部にわたって、ほぼ一様に強いエコーとなっていますし、9時10分、20分、30分となるにつれて、時系列で当該エコーの強度は増しています。

実は、こう言う特徴を持つエコーと言うもの、典型的に、発達中の積乱雲を示すものなのです。このような発達中の積乱雲が、竜巻やダウンパーストと言った局地的な突風をもたらすことが多いものです。このような状況下で、今回の竜巻は発生したわけです。

ちなみに、エコー自体、外縁部の形がぎざぎざ上でくっきりしなくなると、当該エコーは、衰弱途上に入った積乱雲を示すものです。

このように、レーダーエコー合成図より、エコーの強度を読み取ることも重要ですが、エコー強度の時系列変化や、エコーの形状より、積乱雲が発達中が衰弱しつつあるか も読み取ることが重要と思いますね。


台風20号は伊豆諸島へ 意外と知られていない台風の素性についてPart8 台風と偏西風帯の谷との結び

2009-10-26 23:51:27 | インポート

①10月26日15時の天気図 気象庁HPより引用

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②10月26日9時気象庁発表のAXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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台風20号が本州の南海上を北東に進んでおり、26日夜遅くには伊豆諸島南部へ接近する予想です。

台風20号は、その後、27日にかけて、関東沖~東北地方東海上を北上する予想ですが、台風が北上して、本州付近の上空を流れる偏西風帯と結びつくようになりますが、その偏西風帯との結びつき方によって、台風は以下のような挙動をするようになります。

Ⅰ:台風と偏西風帯の谷がほぼ南北方向にて結びつく・・・・・上空1500m付近で、台風の東側で暖気移流が顕著、逆に台風の西側で寒気移流が顕著となる。→台風は次第に速度を上げて進み、台風の勢力は北上しても衰えにくい(かえって発達することもある)

Ⅱ:台風と偏西風帯の谷がほぼ東西方向か北西~南東方向にて結びつく・・・・・上空1500m付近で、台風周辺では寒気移流が暖気移流よりも顕著になることが多く、台風自体次第に衰えることが多い。ただ、台風の北西側から西側に位置する谷に前面に暖湿流が入りやすくなり、台風通過後も、新たに低気圧が発生して、当該低気圧が強い雨を降らせることも多い。

Ⅲ:台風と偏西風帯の谷とが結びつくと、前記Ⅰ、Ⅱに限らず、広範囲で風が強くなり、台風の進行方向左側でも強風被害は発生しやすくなる。

今回の台風20号ですが、引用図②の上側より、台風と偏西風帯の谷がほぼ南北方向にて結びついており、②の下側より、上空1500m付近で、台風の東側で暖気移流が顕著、逆に台風の西側で寒気移流が顕著となっていますね。よって、今回の台風20号、今後次第に速度を上げて移動し、広範囲で風が強まることが言えそうですね。

進路に当たる、東日本や北日本など、広範囲にわたって強風や海上に高波には充分な警戒が必要ですね。

さて26日午後3時40分ごろ、米ダラス発成田行きアメリカン航空61便のボーイング777―200型機(乗客乗員228人)が成田空港の南東約70キロ、高度1500メートルの太平洋上で乱気流に巻き込まれ、3人が負傷した。とのニュースが入ってきました。

③10月26日12時~18時までの ウインドプロファイラー勝浦(千葉県)時間高度断面図 気象庁HPより引用

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④乱気流事故発生当時の千葉県周辺レーダーエコー合成図ペパーランド気象センターHPより引用。

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事故発生当時、引用図③より、千葉県周辺では上空1500m付近より下側で風速が強まっており、上空1500m付近にウインドシアー(風向風速の不連続部分)が発生している様子が判ります。

さらに、引用図④より、事故発生した千葉県南東沖には、強いエコーが帯状に発生しています。これは、関東平野に対流した冷気と、関東の東海上~関東平野に向かって吹き付ける、相対的に気温の高い東より風との間で発生した、件の 沿岸前線 に伴って発生した発達中の雨雲ですが、乱気流発生した千葉県南東沖では、当該、発達中の雨雲の影響で、局地的に、鉛直方向のみならず、水平方向にも気流の乱れが発生していたと考えられ、この気流の乱れが、前記したウインドシアーと相俟って、今回の乱気流を発生させた。と私は考えます。


意外と知られていない台風の素性についてPart7 台風の移動は実は複雑なんですよ!

2009-10-22 23:56:45 | インポート

①平成21年台風18号の経路図 気象庁HPより引用

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②10月8日4時の東海地方周辺アメダス風向風速分布図 気象庁HPより引用

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③10月8日5時の東海地方周辺アメダス風向風速分布図 気象庁HPより引用

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先日、本州各地に大きな被害をもたらした台風18号の上陸地点発表について、気象庁と民間気象会社ウエザーニューズ社との発表が異なることで、気象庁からウエザーニューズ社側に、口頭にて注意があったとのことで、物議を醸してしますよね。

気象庁は、8日午前5時頃、愛知県知多半島付近に上陸した と発表されているし、ウエザーニューズ社では、志摩半島に上陸した との発表をしていますが。

私自身の見解ですが、台風の上陸の定義がいまひとつはっきりしていませんし、両方とも妥当な発表であったのではないでしょうか?気象庁とウエザーニューズ社との発表が異なったことで、何のトラブル・混乱は発生していないはずです。

引用図②③より、気象庁から知多半島へ上陸したとの発表があった、8日5時には、知多半島南部に台風特有の反時計周りの気流の流れが見られますし、これより1時間前の8日4時には、三重県鳥羽では東南東風ですが、西側近隣にある伊勢市では東より風となっており、やはり、志摩半島付近に台風の中心が差し掛かっている様子が判ります。

実は、台風と言うもの、その移動は、Ⅰ:台風の上空を吹く気流(一般流と呼ばれています。)にのみならず、Ⅱ:台風の反時計回りの気流の流れ も左右し、移動方向は単純な直線で表現されるものではない と言うことです。

台風の移動と言うもの、前記 ⅠとⅡが組み合わさって、蛇行しながら一定の方向に移動するものなのは、皆さん、ご存知でしたでしょうか?

なので、台風が、何月何日の何時頃、どの地点に上陸したか?なんてことは、厳格に表現できない場合もありうることでしょうし。実のところ、伊勢湾周辺から東海地方北部にかけての地域では、台風が差し掛かると、台風の中心が分裂しやすい場所でもあります。

引用図②③より、台風18号が、伊勢湾口南部周辺で中心が分裂しているようにも見えますね。

よって、今回の、気象庁とウエザーニューズ社とのバトルですが、私は、両者ドロー と思います。ウエザーニューズさんも気象庁さんに喧嘩売るようなことをしなくてもよいのは?気象庁さんも、もう少し、温かい目で民間許可事業社を見守っていただきたいものです。


寒冷低気圧移動 新たに発生する降水域に注意!

2009-10-14 23:29:50 | インポート

①10月14日9時の天気図 気象庁HPより引用

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②10月14日9時の気象庁発表AXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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③10月14日9時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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④10月14日15時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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⑤10月14日21時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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10月14日は、上空に寒気を伴なった低気圧(寒冷低気圧)が西から本州上を通過しました。

このため、本州の所々で雷や、一時的な強い雨が降りました。

寒冷低気圧が日本付近に接近・通過時には、寒冷低気圧に対応する地上天気図の低気圧の位置と、その低気圧に伴う降水域の動向に注意が行きがちと思いますが、寒冷低気圧の言うもの、上空5500m付近では、正渦度として表現されて、寒冷低気圧に移動方向の前側上空3000m付近では、上昇流域として表現される(引用図②参照)、谷の一種に他ならないことが判ります。当たり前なようですがね。

でありますから、寒冷低気圧が本州付近を移動中、地表付近の気流の収束等、降水雲を発生・発達させる一要因が存在している箇所があれば、新たな降水域が当該地域に発生し(場合によっては発達)するようになることは当然の結論なのです。

ここで、引用図①と③④⑤をご覧いただきましょう。

引用図①③より、14日9時には、日本海西部に、低気圧に対応する降水域(寒冷低気圧本体の降水域といって良いでしょう。)があり、14日15時には山陰沖から中国地方(引用図④) 14日21時には若狭湾付近から近畿地方周辺へと移動し、弱まりつつありますが、引用図④⑤より、14日15時には、関東地方西部から甲信越東部にかけて新たな降水域が発生して、14日21時にはこの降水域が関東地方付近で強まっていて、14日22時30分には、千葉県山武長征に大雨・洪水警報が発表されています。

この降水域は、14日日中、関東平野や甲府盆地から秩父山系を海風が吹き込んで、収束して発生したもの(一部は富士山東部に海風が収束して発生した降水域がありますが)ですが、14日夕方から夜にかけて、ほぼ東方向へ移動し、活動が強まったものです。


台風18号は8日早朝愛知県知多半島へ上陸 意外と知られていない台風の素性についてPart6台風接近時

2009-10-08 13:01:01 | インポート

①10月8日6時の天気図 気象庁HPより引用

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②10月8日6時の日本付近雲画像図(赤外画像で拡大版) 気象庁HPより引用

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台風18号は、8日午前5時頃、愛知県知多半島付近へ上陸しました。

台風の本州上陸は、平成19年9月6日に神奈川県小田原市付近へ上陸した台風9号以来2年ぶりとなります。

台風18号は、上陸後、本州を縦断しており、8日午前中、首都圏のJR各線がほぼ運転見合わせとなるなど、交通機関に大きな影響をもたらし、強風などで、民家の破損や怪我人の被害も発生しています。

台風接近時は、台風の勢力や暴風域、強風域の範囲などに注意がいってしまいますが、あまり、暴風域、強風域の位置に固執しないほうが良さそうですね。と言うのは、台風の強い風も、究極的には、気圧経度が大きくなることで起こるものですから。暴風域や強風域以外の地域でも、強い風に見舞われることも多いものです。

台風接近時には、地表付近の風向風速のみならず、上空(1500m程度)の風向風速の状態にも注意!地表付近が比較的風速が弱めであっても、風向のコントラストが大きくなっていて、上空1500m付近の風速が強く(おおむね40ノット以上、風速で22~23m以上 となっている場の所へ、台風を取り巻く雲の帯(アウターバンドなどと呼ばれていますね。発達したものであればな尚更です。)が通過する場合は、局地的に竜巻や突風が吹きやすくなるから要注意です!!

これは、気流の鉛直シアーが地表付近にかけて大きくなっている状態(地表から鉛直方向へ気流が上昇している部分と下降している部分とが交互に発生している状態)のところに、上空を台風のアウターバンドが通過すると、当該台風のアウターバンドの発生箇所も気流の鉛直シアーだ大きくなっている箇所ですから、気流の鉛直シアーが一層増大し、局地的に気流が収束する場(その隣接部分では気流が局地的に発散下降する場となります。)を形成し、狭い範囲に竜巻や突風を発生させるようになります。

8日5時頃、茨城県土浦市~龍ヶ崎市付近と、千葉県九十九里町付近で突風被害が発生しましたが、次の引用図をご覧ください。

④10月8日5時の関東地方周辺アメダス風向風速分布図 気象庁HPより引用

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⑤10月8日5時の日本付近ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用

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⑥10月8日5時の関東~東海地方周辺レーダーエコー合成図 気象庁HPより引用

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引用図④⑤より、突風発生当時、茨城県土浦市~龍ヶ崎市付近では東~北東風と南より風とが、千葉県九十九里町付近では、南西風と南東風とが風向の明瞭なコントラストを形成している様子が判りますが、引用図⑥より、これら、風向の明瞭なコントラストが発生している地域に、台風の発達したアウターバンド(外縁の雲)の一部が掛かっていることが判りますよね。

実は、関東平野や濃尾平野~伊勢湾岸、静岡県沿岸や四国平野、宮崎平野など、海岸に向かって平野が発達している箇所は、今回と同様な原因で発生する竜巻や突風災害が頻繁に発生している、まさに常襲地帯 と言えます。