カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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東北から九州までの広範囲で猛烈暑さ。これも台風の置き土産!

2014-07-25 23:46:22 | インポート

①7月25日22時までの全国各観測地点最高気温分布図 気象庁HPより引用

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②7月25日15時の天気図 気象庁HPより引用

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③7月25日15時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用

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                    ↑

?7月24日15時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図 気象庁HPより引用

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今週水曜日以降、西日本の各地で始まった猛烈な暑さは、25日には、とうとう東日本や東北地方まで広がり、岐阜県多治見市では最高気温39・3℃を観測したほか、名古屋、岐阜で38・2℃、甲府で37・7℃、大阪で37・1℃を観測、関東地方沿岸部でも、東京都心で35・6℃の最高気温を観測して本年初の猛暑日となりました。

ほかにも、横浜や千葉でも本年初猛暑日を観測し、全国で927地点ある観測地点のうち、最高気温が35℃以上となる猛暑日を、東北地方~九州地方までの広範囲にわたる187地点で観測しました。

この猛烈な暑さですが、引用図?→③と比較してわかるように、昨日より、西日本の上空3000m付近まで、反時計廻りの気流となる高気圧性循環となっておりましたが、25日には、この高気圧性循環、東北地方まで範囲が広がっております。つまり、本州上に、上空まで勢力を広げる高気圧にすっぽりと覆われたため、上空から地表まで気温が状上昇したためであります。

この、上空まで勢力を広げる高気圧、これは、中国大陸東岸を昨日から台風10号(25日15時には温帯低気圧に変わりましたが)が北上しました。台風の進行方向右側後方では、台風の渦巻に相反して下降気流が卓越して、この付近にある太平洋高気圧の勢力を強める働きをするために発生したもの。言ってみれは台風の置き土産といえるでしょう。

ちなみに、今回のように上空まで勢力のある高気圧に覆われる場合、日中、海上から内陸部に海風が入り込みますが、この海風は、せいぜい上空1000m程度までした及ばないため、当該海風が抑制されてしまい、このため、内陸部のみならず沿岸部での日中の気温をさらに上昇させてしまう作用があります。引用図①より、猛暑日観測地点が、東北以西の各地の内陸部のみならず沿岸部にもかなりみられることが、このことを物語ることなのです。


本州付近で上空寒気と暖湿流とが衝突!広範囲で強い雨!

2014-07-19 18:09:50 | インポート

①7月19日15時の天気図 気象庁HPより引用

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②7月19日15時の日本付近雲画像図(水蒸気画像で拡大版)気象庁HPより引用・加工

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本州付近には、上空の偏西風が蛇行して、上空に寒気伴った気圧の谷が大陸から本州付近へ接近、一方、暖湿流が上空の谷の外縁部と、太平洋高気圧の外縁部から本州付近へ流れこんできており、日本列島では、北海道から沖縄まで、大気が不安定になっています。

特に、大気が不安定な東北地方~中国地方の所々で、雷を伴った非常に激しい雨が降っており、東海道新幹線では、昼過ぎから、愛知県内や静岡県内で、運行中止規制雨量の1時間50ミリ以上の降水量を観測、断続的に運行が中止されて、運行ダイヤが大きく乱れました。

上空に寒気伴った気圧の谷(特に当該気圧の谷の進行方向前側)では、大気が不安定になり、一時的に強い雨や雷などの激しい気象現象が引き起こされるものですが、19日のように、上空の気圧の谷の前側に向かって、太平洋高気圧の外縁部からの暖湿流が流れ込んでくると、当該気圧の谷の前側では、大気不安定な状態がより一層顕著となり、広範囲で、強い雨や落雷、突風や竜巻、降雹などの激しい気象現象が一層発生しやすくなりますから要注意です!上空の気圧の谷の前側には、定常的に暖湿流が流れ込んできているもので、さらに、太平洋高気圧の外縁部からの暖湿流が合流する形となるためです。

さらに、上空の気圧の谷の前側に、太平洋高気圧の外縁部からの暖湿流が流れ込んで切る際には、当該気圧の谷に伴う暖湿流との合流地域で,とりわけ雨雲が発達して、当該気圧に谷の前側に、帯状に幾重にも雨雲が連なって発生するものです。そして、これら帯状に連なって発生した雨雲の集団、地表付近の気流の収束箇所で一層発達して、激しい降水を引き起こすようになるものです

この、地表付近でも気流の収束箇所は、

具体的には、

ⅰ:日中内陸部で発生する海風の収束箇所

 のみならず、

ⅱ:暖湿流が流れこんでくる方向に開いた地形的鞍部

ⅲ:暖湿流が流れ込んでくる海岸沿いで、内陸部との気流の方向とが不連続になっている箇所

が挙げられ、前記ⅲに該当する地域では、日中のみならず、夜間から早朝にかけても発生する可能性ありますから、油断なりませんね。


次第に変形しつつある台風8号 鹿児島県に上陸 本州南岸から東日本へ向かう予想

2014-07-10 11:43:40 | インポート

①7月10日6時の天気図 気象庁HPより引用

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②7月10日6時の日本付近雲画像図(水蒸気画像で拡大版)気象庁HPより引用・加工

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沖縄本島等に、記録的な大雨や暴風をもたらした台風8号ですが、10日7時頃、鹿児島県阿久根市付近へ上陸しました。本年初の日本列島へ上陸台風となりました。

引用図①②双方比較すると、台風8号の雲の形は、発達中の台風に見られる、螺旋状雲が渦巻くような形ではなく、台風の眼もぼやけてしまっています。台風が衰えつつある証拠ということろです。

ただ、台風の進行方向右前側から右側、そして、右後側にあたる、東日本以西の各地や本州南海上の広範囲にかけて、帯状になった白画像域(帯状に発達した雨雲)が幾重にもに連なって、 一部は、ひときわ白く輝いており、広範囲に非常に発達した雨雲がある様子がわかります。

今回の台風のように、 台風の進行方向前側から右側 、右後側の広範囲に帯状に発達した雨雲(引用図②内 A。ちなみにBは梅雨前線に伴う発達した雨雲の集団です。)が現れているのは、実は、この数日、本州中部から本州南海上にかけて、上空5500m付近で-6℃以下の寒気が入り込んで、大気が不安定な状態が続いていました。そこに、台風が南西諸島に接近してきて、暖湿流が大量に本州南海上から本州へと流れ込んできましたので、本州南海上では、雨雲が発達しやすくなっており、7日夜頃から、本州南海上に帯状に発達した雨具が発生、それが、ほぼ東西方向へと広がり、一部、台風8号の外縁部の雲と合流、台風8号の雲の形は、次第に、螺旋状に渦巻く形から、台風の進行方向右 前側と右後側に帯状に発達した雨雲を伴うようになったことで、御玉杓子型と変化してしまいました。

台風の雲の形が、螺旋状に渦巻く形から、御玉杓子上に変化してしまうと、台風の渦を維持させる暖湿流が、御玉杓子の尾っぽにあたる帯状運の形成にも費やされてしまいますから、台風自体、発達は鈍ってしまう傾向にあります(筆者調べ)。このため、当初、台風8号は、沖縄近海で猛烈な勢力に発達する予想ではありましたが、非常に強い勢力が発達のピークで終わったわけです。

台風8号自体、衰えつつあるとはいえ、前記したように、台風の進行方向前側から右側 、右後側の広範囲に帯状に発達した雨雲の集団を保持しており、この帯状に発達した雨雲は、地形的特性と相まって、短時間に非常に強い降水や、竜巻などの激しい突風を所々で引き起こします。これから、台風8号は本州南岸から東日本へと進む予想で、台風の進路にあたる地域では、充分に警戒をして、早めの対応をお願い致します。


これから台風の季節 台風の進路による台風の個性を紹介

2014-07-04 17:41:13 | インポート

台風8号が発生して、進路予想見ると、よからぬ進路予想となっています。来週早々には南西諸島が影響を受け始め、来週中旬以降に、西日本にかなり接近しそうな予想となっています。不気味ですよね。

今回は、台風というもの、どの台風でも、大雨や強風を伴っています。

その上で、平成になってからの、暴風が顕著と思われた台風の経路と、大雨が顕著と思われた台風の経路を紹介して、台風がどういう経路をたどった場合、暴風に見舞われやすいか、大雨に見舞われやすいか紹介していきます。(引用図内●が午前9時の位置、○が午後9時の位置を示します。)

◆暴風が顕著であった台風

①平成3年台風19号

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この台風は、平成3年9月27日16時過ぎに、中心気圧940hpa 中心付近最大風速50m毎秒で、長崎県佐世保付近に上陸、その後、九州北部から山口県を通過して日本海に入り、次第に速度を上げて(おおむね時速60キロ~80キロ)日本海を北東へ進んで、28日8時前に北海道渡島半島へ再上陸しました。

このため、全国的に暴風が吹き荒れて、最大風速(10分間)が毎秒30m以上を観測した気象官署は4か所 毎秒25m以上を観測した気象官署は20か所となり、戦後では、昭和34年9月の伊勢湾台風(台風15号)に次ぐ記録となりました。

特に、広島では、最大風速36・0m毎秒 瞬間最大風速では58・9m毎秒を観測して、この最大風速の値は、いまだに歴代1位となっております。

この台風では、主に風や高潮による被害が多く、死者・行方不明62人、負傷者1261人、住家全半壊3274棟 浸水家屋16675棟(警察庁調べ)の甚大な被害でした。

②平成16年台風18号

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この台風ですが、引用図①の平成3年台風19号とほぼ同様な コース、平成16年9月18日昼前に九州北部に上陸、そのご、山口県を通過して、日本海を、やはり速度を次第にあげて(時速60キロ~70キロ)北東へ進んで、翌9日午前中には、北海道西部沿岸に進んで、その後、温帯低気圧に変わりました。

この台風で、ほぼ、全国的に、瞬間で30m毎秒を超す暴風が吹き荒れて、広島では、観測史上最高となる60・2m毎秒の最大瞬間風速を観測、さらに、勢力を維持しつつ北海道へと進んだため、札幌でも最大瞬間風速50・2m毎秒と、観測史上最高となる記録的な暴風を観測。住家全半壊957棟 一部損壊42183棟 さらに、満潮時に台風が接近して記録的暴風に見舞われた瀬戸内地域では、高潮に見舞われ、瀬戸内地域(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県、香川県)だけで、住家の床上浸水1487棟、床下浸水5344棟(総務省消防庁調べ)といった、これまた、甚大な被害を引きおこしました。

 

◆大雨が顕著であった台風

③平成23年台風12号

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この台風は、平成23年8月30日から本州南海上をゆっくりと北上、関東以西の太平洋側の各地に暖かく湿った気流を大量にかつ継続的に送り込み、台風自体は9月3日午前中に、中心気圧980hpa 中心付近最大風速30m毎秒と、並の勢力で四国東部に上陸しました。

このため、暴風による被害は目立ったものはありませんでしたが、前記したように、上陸数日前から、関東以西の太平洋側では、台風の進行方向右前側に入り、台風と、太平洋高気圧の外縁を回るようにして入り込む暖湿流の大量に、かつ、継続的に入り込んでしまう結果となり、とりわけ、暖湿流の流れ込んでくる方向に開いた山の斜面にあたる、関東西部~甲信越山間部、東海地方北部や西部、紀伊半島南部から東部、四国山地東部では、総雨量が軒並み500ミリ以上、紀伊半島や四国の一部では、総雨量が 1000ミリを超す、記録的な豪雨に見舞われて、紀伊半島や四国中心に、深層崩壊となる大規模な土砂災害があちこちで発生、3年たった現在でも、鉄道や道路の不通などの影響がでております。

◆さらに、大雨・暴風双方顕著であった台風

④平成25年26号台風

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この台風、大陸から進んできた上空の気圧の谷の、いわば、後押し受けや格好となり、雨ですが、周知のとおり、伊豆大島で観測史上最高の、24時間降水量806ミリを観測、伊豆大島内だけでも、死者・行方不明者34人、伊豆大島に多数の土砂災害をもたらしたことは記憶に新しいところですが、この台風の接近で、千葉県内、茨城県内では、軒並み24時間降水量で300ミリを超えて、千葉県内、茨城県内(おもに南部)で、多数の浸水家屋が生じました。

又。風ですが、この台風26号、偏西風の谷の接近に合いまって、台風の進行方向左側にあたる地域でも、かなりの強風に見舞われて、台風が最接近した千葉県内では、軒並み、観測史上最高の暴風を観測し、中心からかなり離れた、中国地方や九州地方においても、瞬間で30m近い暴風が吹き荒れ、高速道路の不通など、交通機関に大きな影響を及ぼしました。

以上、引用図よりいえることですが(他、筆者調べもよりますが)

◇暴風顕著になる場合の台風は、

・・・・・本州付近で、速度を速めて通過する場合や、速い速度で通過する場合※この場合の早い とは、台風の移動速度で、おおむね時速50キロ以上ですね。時速50キロで秒速おおむね10メートル程度、時速60キロで秒速およそ16~17m程度となり、台風で経験する風速というもの、台風自体の渦巻の速度(台風情報などでの中心付近最大風速や暴風域、強風域ですが)に、この台風の移動速度が加わったものとなるからです。

前記した、暴風が顕著になる場合の台風の本州付近での移動速度ですが、おおむね時速60キロ以上※引用図内●や○の間隔が1000キロ以上)となっていますね。

一方

◇雨が顕著になる場合の台風

・・・・・移動速度が比較的遅く(時速30キロ以下)で、本州の広範囲で、台風の進行方向右前側に長時間入っている場合(台風の進行方向右前側ですと、台風が隣接する太平洋高気圧の外縁部を流れる暖湿流を、台風自体の渦で、一層、引き込みやすくなるからですね。)。

◇雨・風双方顕著となる場合

・・・・・台風の北上とともに、偏西風帯の谷が進んできて、台風と相まみえる状態になる場合、台風の進行方向左側では、下降気流が卓越する場となりますので、広範囲で強風が吹きやすく、このようば進路をとる台風は、進行方向前側に前線を伴っている場合多く、こうなりますと、台風の進行方向前側の前線付近を中心にして、相当な大雨に見舞われやすいものです。

以上の事柄踏まえて、台風シーズンの折、台風情報などを活用なさってください。ただ、台風の接近・通過前から、雨台風とか風台風とかいう予断を抱くのは極めて禁物!台風というもの、強い雨、強い風双方兼ね備えていることは忘れずに!


上空寒気で大気不安定なため雷発生!他にもこういう外的要因があってこそ発生するもの

2014-07-02 01:33:26 | インポート

6月は、上空の偏西風が蛇行して、低気圧が停滞気味となったり、上空に寒気が入りやすくなったりして、東京と含めた関東地方や甲信越地方では、とりわけ雷の発生が多かった月でした。

月変わって7月になっても、この傾向は変わらず、1日も、関東地方や甲信越地方、東北地方一部中心に、あちこちで雷や一時的な強い雨に見舞われました。

このように、よく、天気番組などで、「上空に寒気が入って大気が不安定になり雷が発生する恐れがあります・・・」などの言い回しをよく耳にしますが、上空に寒気が流れ込んできて気象条件時、雷発生する箇所には、さらに、以下のような外的要因があります。

まず、引用図①ですが、

東京都心部が一時、時間雨量50ミリ前後の激しい雷雨に見舞われた、6月29日9時の、AXFE578図(上側・・・500hpa※上空5500m付近の渦度と等高度船分布図 下側・・・850hpa※上空1500メートル付近 の風向風速と等温線図と700hpa※上空3000m付近の、斜線部分が上昇流域 白抜き部分が下降流域 を示します。)をご覧ください。

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引用図内、青丸線で、上側を500hpaの顕著な正渦度 を示していますが、 この正渦度、実線で示した等高度線とおおむね交差する位置にあり、こういう位置にありますと、この正渦度の集団、実線の等高度線に沿って移動している状態を示しています。

一方、下側を青丸線で、500hpaの正渦度の移動方向前側(移流に伴う と呼びますが)に分布する、上空3000m付近の顕著な上昇流域をしめしていますが、正渦度の移流とともに、この顕著な上空3000m付近の上昇流域も東へ移動することが考えられます。

この、引用図①の青線部分と、以下に図示する ②6月29日9時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 と ③6月29日15時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 とを比較してみましょう。

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引用図①の青丸線・・・発達した降水域(発達した雷雲の集団ですが)500hpaの正渦度移流域に伴う、帯状に分布する上空3000m 付近の顕著な上昇流域に沿って、帯状になって本州を移動しており、引用図③より、29日15時になると、前記したように、帯状に分布しながらも、関東山地北部や西部あたりで、局地的に降水域が一層強まっている様子がわかります。

雷を引き起こす積乱雲というもの、上空(目安となるのが上空5500m付近となりますが)に寒気が入って、地表付近との気温差が大きくなる状態は、まず、必要条件となりますが、

さらに、外的要因として(以下、筆者調べ)

Ⅰ:上空3000m付近の上昇流域(500hpa※上空5500m付近の正渦度移流域にともなうもの)

Ⅱ:地形的特性や、海陸風の収束箇所、海陸風の変わり目部分に発生する海風前線 などの、地表付近の気流の収束箇所

が加わり、十分条件となって、雷雲を発生。発達せしめるものなのです。

前記、Ⅰ、Ⅱがより顕著になるほど、雷雲はより発達するようになりますね。

ちなみに、引用図③での、関東にかかる帯状の発達した降水域は、さらに強まりながら東京都心部を、29日16時~17時ごろにかかて通過し、都心部に落雷を伴った激しい降水をもたらし、都心部に、交通機関の混乱や、低地の浸水被害などもたらしました。