カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
講演依頼等連絡先は、tenki@air.ocn.ne.jpへどうぞ

台風11号が関東目がけて北上中。台風の雨風は地形的特性を受けやすいもの。教科書通りにはいきません!意

2009-08-30 19:59:33 | インポート

①8月30日15時の天気図 気象庁HPより引用

09083015

②8月31日9時の予想天気図 気象庁HPより引用

09083009

台風11号が関東地方目がけて北上してきました。

台風の進路予想図(引用図にはありませんが)によると、31日昼過ぎ頃、房総半島にかなり接近して、場合によっては関東地方上陸の恐れもでてきました。

もし、台風が関東地方に上陸 と言うことになれは、平成19年9月7日の台風9号が神奈川県小田原市付近に上陸して以来、2年ぶりということになりますね。

台風接近と言うわけで、私自身が、過去の台風の経路、被害状況等を定性的に見ての、台風の雨、風の癖を紹介していきましょう。

まず、始めに、よく気象の教科書などには、台風の進行方向右側が危険(危険半円)で、左側が比較的被害が少ない(可航半円)などど書かれていますが、このことを過信してはいけません。!!

まず、台風の周囲の高気圧の張り出し状況に注意して、等圧線の分布状況がどうなっているか?見極めましょう。

その上で

Ⅰ・台風の周囲で、等圧線が混んでいる地域は要注意!

・・・・・たとえ、台風が比較的離れた箇所にあったり、台風の進行方向左側に入っても、当該地域では、強い風の被害を受けやすくなります。

Ⅱ・台風を取り巻く上空1000m~1500m付近の風向が地形的に開いた斜面にあたるか?山の斜面と垂直か?

・・・・・当該風向が地形的に開いた斜面にあたる場合、台風の周辺を廻るようにして流れ込んでくる暖湿流が山の斜面で強制上昇し、大雨を降らせやすくなります。さらに、暖湿流が山の斜面で強制上昇している状態が長時間持続すれば、当該山の斜面にあたる地域では雨量は一層多くなり、、河川の降水など、深刻な大雨災害の元凶となってしまいます。

当該風向が山の斜面と垂直方向になっている場合、当該地域の地表付近では、内陸部で対流する相対的に気温の低い気流と、海上から海岸に吹き付ける相対的に気温の高い気流との間に局地的な前線(沿岸前線)が発生しやすく、当該局地的な前線の周辺では特に雨雲が発達して大雨を降らせやすいものです、特に、地形的に山地囲まれた平野部が広範囲に分布している地形(関東地方などでは典型的ですよね)のあたる地域は、この傾向が顕著に現れます。

さらに、

Ⅲ・台風の周囲に、上空5500m付近の気圧の谷がどこにあるか?にも注目。

・・・・・台風の進行方向左前側から左側に、当該上空5500m付近の気圧の谷があって東進してくる場合、台風通過後に、台風の持ち込んだ暖気と当該上空5500m付近の気圧の谷が持ち込む暖気とが重なり合って、当該上空5500m付近の気圧の谷の進行方向前面の地表付近には低気圧が新たに発生し、当該低気圧の周辺では、局地的に雨雲は非常に発達して、大雨を降らせることもあります。当該上空5500m付近の気圧の谷が寒気を伴っていると、この傾向は一層顕著なものになります。

平成3年9月10日に、台風15号が本州の東海上へ去った後に、東海道沖に新たに低気圧が発生して、伊豆諸島に局地的に激しい雨をもたらしましたが、前記した状況下で発生したものです。

※追伸ですが 意外と知られていない台風の特性について ですが Part1 とPart2は、平成18年7月分の記事で紹介しています。どうぞ、ご参考ください!


24日夕方 東京や神奈川で強雷 でも今回も定石通り 

2009-08-24 23:53:53 | インポート

①8月24日15時の天気図 気象庁HPより引用

09082415

②8月24日15時の関東地方周辺アメダス風向風速分布図 気象庁HPより引用

20090824150000

③8月24日16時の関東地方周辺レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

200908241600

④8月24日16時30分の関東地方周辺レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

200908241630

⑤8月24日9時のAXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

111

8月24日午後から夕刻にかけて、東京都23区西部から多摩東部 それに、神奈川県や千葉県の一部では、雷を伴なった激しい雨に見舞われました。

東京都23区の世田谷区内では1時間の降水量が50mmを超えましたし、神奈川県横浜川崎には、一時、大雨・洪水警報も発表されました。

TVのニュースでは、時ならぬ強い雨に、傘を持参せずに右往左往する方々が放映されていましたが、今回のこの強雷は、定石通りに発生した と言えそうです。

まず引用図⑤をご覧いただきますと、24日9時現在、関東地方は、上空5500m付近の谷の前面にあたり、上空3000m付近では、帯状に上昇流の卓越した状態となっています。また、引用図にはありませんが、24日9時には、関東地方から中部地方上空5500m付近では、軒並み-6℃以下となっておましたが、関東地方南部の地表付近では、24日は、最高気温があちこちで30℃以上となり、地方付近と上空5500m付近の温度差が大きくなっていました。

そういう状態で、かつ、関東地方の地表には、引用図②より、鹿島灘方面より東より風が入り込んでいますが、伊豆諸島方面からは南より風が入り込んでおり、24日15時現在、東京都23区西部屋千葉県北西部では、双方の気流が衝突して、明瞭な風向のコントラスト(シアーラインと言い、こが大きくなった部分で、上昇気流が局地的に強まるものです。)を形成しています。

引用図③④より、前記した風向のコントラストが大きくなった部分で降水域は発達し、伊豆諸島方面からの南より風が吹き込んでいる部分(相対的に気温が高くなっている部分)へ更に発達しながら広がっている様子がわかりますね。

雷雲が発生・発達しやすい気象状況

Ⅰ・上空5500m付近の谷の前面=上空3000m付近の上昇流域 + Ⅱ・上空に寒気が入り、地表と上空5500m付近の気温差が大 ですが、

さらに、関東南部では

Ⅳ・鹿島灘方面からの気流と伊豆諸島方面からの気流が衝突する状態 が加わって、

Ⅰ + Ⅱ + Ⅲ + Ⅳ を満たす気象状態となると、よりいっそう雷雲が発達する。ことは定石なのです。


今度は八丈島で震度5弱

2009-08-13 23:47:00 | インポート

引用図は8月13日7時49分発生の地震の震央と各地震度分布図(関東地方周辺)です。気象庁HPより引用・加工

12_2

13日07時49分頃伊豆諸島南部で強い地震がありました。震源地は八丈島東方沖 ( 北緯33.0度、東経140.8度)で震源の深さは約40km、地震の規模(マグニチュード)は6.5と推定されます。

この地震で、八丈島内の三根で震度5弱を観測しました。

この地震は、伊豆諸島が載っているフィリピン海プレートの下側に沈み込む、太平洋プレートの内部で発生した地震と推定されます。

陸側のプレートの下側に沈み込むプレートの内部で発生した地震は、本ブログで昨日の記事で記載しましたように、比較的に周期の短い地震波が卓越するのが通常で、今回の地震でも、多聞にもれず、八丈島内で崖崩れが数箇所発生したものの、家屋等の建造物の被害は殆ど皆無だった様子です。


11日の静岡地震 揺れ方が幸いした?

2009-08-12 23:52:13 | インポート

引用図は8月11日5時07分駿河湾で発生の地震の震央と震源分布図です。気象庁HPより引用・加工

20090811052120391110507_2

地震のマグニチュードは6・5 震源の深さは20km

8月11日早朝に駿河湾で発生した地震ですが、静岡県内で最大震度6弱を観測し、東名高速道路が路肩崩壊で不通になる区間が発生したり、家屋の破損や屋内での家具などの転送などで、人的被害も発生しました。

が、被害に遭われた方々には語弊ある表現ですが、今回の地震は、揺れ方が幸いしていると言うか、人的被害を多数発生させるようなゆれ方ですなかった。と言えるでしょう。

それは、今回の地震の揺れ方は周期が小さい揺れ方をした ことが特徴で、日本列島の陸側の下側に沈み込むプレート内で発生した地震の典型的な特性なのです。

来るべき東海地震や、宮城県沖地震、さらには、関東地震など、日本列島の陸側のプレートとその下側に沈み込むプレートとの境界部分で発生する地震(プレート間地震と呼ばれていますが)は、当該プレート同士の擦り合いで発生することから、比較的周期の長い地震波が卓越し、ユサユサと揺れるような感じになります。

更に、我々のいる地球上に現存する物体(建造物もそうですし、地面も同様です。)は、共鳴して揺れやすくなる特定の地震波の周期(これを固有周期と呼びます。)を持っており、軟らかい地盤や高さが高くなる建物ほど、その固有周期は大きくなりますね。

おおむね、我々が居住する家屋は周期1秒以上(高層建造物になるほどよりいっそう固有周期は大きくなります。)の固有周期となります。

ところが、今回の地震は、防災科学研究所HP内の記載から、周期0・3秒程度の地震波が卓越しており、建造物の固有周期とはかけ離れています。

平成7年1月に、多数の建造物が倒壊して、死者6500名余の未曾有にの大被害をもたらした、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)には、神戸海洋気象台(神戸市内中区元町付近)では卓越周期0・7秒 他神戸市内では、周期0・8秒~1秒程度の地震波が卓越した箇所が多くなり、前記した建造物の卓越周期と共鳴を起こして、激しい揺れを発生させて、建造物の倒壊を多数発生させて、人的被害も増大させてしまったわけです。

地震災害を左右するものとして、その土地の地盤の硬軟や、地形的特性による地震波の増幅が上げられますが、もうひとつ、地形や建造物の卓越周期に共鳴しやすい地震波がやってくるか否か?も重要な要素です。


11日早朝 静岡県内で震度6弱

2009-08-11 06:22:25 | インポート

20090811052120391110507_2

引用図は、11日5時07分に発生した地震の震央と各地震度分布図です。気象庁HPより引用・加工

11日5時07分頃、静岡県内でかなり強い地震がありました。

震源地は駿河湾 ( 北緯34.8度、東経138.5度、御前崎の北東40km付近)で震源の深さは約20km、地震の規模(マグニチュード)は6.6と推定されます。

この地震で、伊豆市市山 焼津市宗高 牧之原市相良 牧之原市静波 御前崎市御前崎 御前崎市白羽の各地点で震度6弱を観測したほか、静岡市内や富士宮市で震度5強を観測しました。

この地震後、気象庁からは、静岡県沿岸と伊豆諸島に津波注意報が発表されました。

この地震で、東海沖地震の発生か?と言うイメージが湧きあがりますが、この地震は、地震の震央と震源の深さを勘案すると、東海地方が載っているユーラシアプレートの下側に沈み込む フイリピン海プレート(伊豆半島や伊豆諸島が載っています)の境界部分で発生したか、フイリピン海プレートの内部で発生した地震と推定されます。

まだ地震が起きて間もないですから、気象庁発表の地震震源地情報にも誤差があることも考えられますけどね。