ほぼ週刊イケヤ新聞ブログ版

コピーライター・ミュージシャン池谷恵司の公式ブログです。
私的メールマガジン「ほぼ週刊イケヤ新聞」のブログ版です。

映画『さくらん』の映像と音楽に酔いしれる。鈴木清順の遺伝子か?<★★★★☆>

2007年03月28日 23時52分43秒 | 映画レビュー

『さくらん』

監督:蜷川実花
出演:土屋アンナ、椎名桔平、成宮寛貴、木村佳乃、菅野美穂、永瀬正敏、
石橋蓮司、夏木マリ、市川左團次、安藤政信

編集部内で、まだ誰も見ていないのに、「いい」だの「よくない」だの
話題になっていた映画ですが、先日編集部を代表して見てまいりました。
実際に見るまでは、大人気の土屋アンナの魅力を借りたアイドルものかと
侮っていたところもあったのですが、とんでもない!
素晴らしい映像世界が楽しめる、いい作品でした。

この映画を作ったのは、原作が安野モヨコ、監督が蜷川実花、
音楽が椎名林檎という、まさに当代切っての才能の持ち主の女性たち。
女性でなければ作れなかったであろうこの映画は、
今の日本を代表するガーリームービーと言っていいかもしれません。

そんな彼女たちが物語の舞台として吉原の花魁の世界を選んだのが面白い。
でもその理由も、映像を見ると分かります。
とにかく映像そのものの色彩感覚がスゴイです。
セットも、着物も、とてもモダンな極彩色。これはもう、
パンクロックな吉原です。ここまで強力なビジュアルイメージは、
現実から遠く遊離した遊郭という場所を舞台にしないと、できないのかも。
極彩色の着物を着た花魁のアップに、パンクロック調の
激しいギターの音がかぶってくるシーンでは、ちょっと鳥肌がたちました。

ストーリーはこれから映画を見る方のために言えないのですが、
正直言って筋そのものよりも、映像を楽しむ映画ではないかと思います。
このクラクラするようなビジュアルイメージを大画面で見ていて、
僕は唐突に、鈴木清順の映画を連想しました。
『陽炎座』とか『ツィゴイネルワイゼン』とか。
この映画の監督にして、強烈な色彩の作品で有名なカメラマンでもある蜷川実花
は、鈴木清順が作り上げた映像美の遺伝子を受け継いでいるのかもしれません。

キャストも良かった!
遊郭の主人の石橋蓮司や女将の夏木マリは、流石の貫禄。
花魁陣では、菅野美穂の意地悪なのか優しいのかわからない感じが、
とても印象に残りました。

最後に音楽! 椎名林檎はかなり知的に精緻にこの映画の音楽を作っています。
全体にロックなテイストを感じさせますが、
実際にはロックっぽい音は限られたシーンでしか使われておらず、
むしろオーケストラやバンドネオンなど、
アコースティックな音を多用しています。

いちばん気持ち良かったのはラストシーンだな。
ネタバレになるので内容は言えませんが、とてもカタルシスがあって、
なんだかアメリカンニューシネマの名作『明日に向かって撃て』の
ラストシーンみたいでした。そこに椎名林檎が歌うエンディングテーマ
『この世の限り』が流れてくるのですが、これは本当に素晴らしいです。
ぜひ映画館のでかいスクリーンと大きな音でご覧いただきたい作品です。

映画『さくらん』のオフィシャルサイトは以下です。
予告編や上映劇場の情報がご覧いただけます。
このサイトにいくと再生される椎名林檎の曲が、すでにもうカッコいいです。


音楽配信サイト「マイサウンド」で『さくらん』のエンディングテーマ
「この世の限り」(椎名林檎×斎藤ネコ+椎名純平)がダウンロードできます。
試聴もできますので、ぜひ聴いてみてください。いい曲です。


「おとなを、休む日」では「映画を、楽しむ日」で
鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』を取り上げています。
そちらもぜひ、ご一読ください。

平成風俗(初回限定盤)
椎名林檎×斎藤ネコ, コマエノオーケストラ, ノラネコオーケストラ, アノヨノオーケストラ, ナダタルオーケストラ, マタタビオーケストラ
東芝EMI

このアイテムの詳細を見る


名作写真館 30 新世代の六人―The Photography Pavilion 写真を楽しみ、写真を語る (30)

小学館

このアイテムの詳細を見る




さくらんの美術が広告批評に掲載されていました。
いずれも蜷川美花のカメラによるものです。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿