ミスター・ピーノの【見るが勝ち通信】その46
イケヤの知人のピーノさんが
いつも私を含めたご友人の方に送られているメルマガのお裾分けシリーズ。
『ミスター・ピーノの【見るが勝ち通信】』です。
海外滞在が長く、外国語にもご堪能な方です(日本人です)が、
一週間程度で物凄い量のものを見る、読む、聴く。とにかく私もビックリ。
私も見習いたいと思っております。
というわけで読者の皆様、感想等ございましたら、
私が責任を持ってお伝えしますので
ぜひコメント欄にお願いします。
では、レッツゴー。
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◇ 浜松祭り(5/3~5)が今年はなぜ中止になったのか? 震災後の一連の
「イベント自粛」の流れで市が決定、と思っていましたが、どうも浜松署から
の要請に従う形だったようです。被災地支援のため浜松からも東北地方に
警察官が派遣されており、浜松祭りが開催されると、昼の凧揚げ会場周辺
の交通整理や、夜の山車と練り歩き、観光客と酔っ払いの対応など、十分
警備ができないという安全上の理由からです。地元テレビ・新聞メディアは、
さすがに警察官が手薄になっている現状を、あまり報道できないでしょうね。
◇ 先週末たまたまフランス人が脚本・演出する演劇と映画を観たんですが、
書かれた時期も時代背景も全く異なりながらテーマは同じでした。 それは、
「金持ち(ブルジョア:大人)がいかに貧しい若者たちを駄目にしてしまうか」
で、決して多くを望んでいない若者が、エピキュリアン(快楽主義者)たちの
エゴに翻弄されるという内容で、まさに、今の日本にも当てはまることなの
では?と改めて考えさせられました。 バブル崩壊後、「成長」の名のもとに
市場経済を推し進めた結果、再度バブルがはじけ(リーマン・ショック以降)、
その間一番の被害者は10代、20代の若者たちではないかという教訓です。
【演劇】
■北京蝶々「パラリンピックレコード」<シアタートラム、11/04/09 ★★★>
東京でオリンピック開催中に、テロが起きるという近未来SF。義足を高機能
化して早く走れるように改造した身体障害者のアスリートたちが立ち上がり、
テロを阻止する、荒唐無稽なお話。イベントそのものを自分の宣伝と政治に
利用する「イシハラ知事」(流山児祥)が滑稽で可笑しく、アホな石原軍団 :
ワタリ・タチ・カンダ・ユウジロウとの噛み合わない会話に、思わず苦笑です。
“マイノリティ”に光をあてる試みは面白いものの全体的に大味で説明不足。
http://pekinchocho.com/next-act.html
■「交換 L'Echange」 <こまばアゴラ劇場、11/04/09 ★★★★>
1921~27年、駐日フランス大使として、日本に滞在したポール・クローデル
の戯曲(1923年に初訳)を、フランク・ディメックが演出。 欧州から夫を追い
新大陸にたどり着いた若い妻。 愛し合う彼らの前にお金と誘惑が提示され、
最後まで夫を愛し続けて子どもを身ごもる妻と、そんな彼女に別れを告げて
立ち去る夫。冒頭と中盤の数十分間を真っ裸で演技するルイ役、綾田將一
の鍛え抜かれた筋肉。 4人で2時間半の緊迫感のある濃厚な舞台でした。
http://www.komaba-agora.com/line_up/2011/04/franck/
【映画】
■引き裂かれた女 <原題 La fille coupee en deux>(★★★★)
クロード・シャブロル監督(仏:1930-2010)による恋愛サスペンスものです。
美人お天気キャスターと中年作家のカップルに、金持ちのドラ息子が加わる
三角関係の一部始終。 主人公の女性以外は、登場人物がすべて“強欲”
なエゴイストたちで、話の展開も「えっ、どうしてそうなるの?」という一筋縄
ではいかない観客への裏切り(驚き)で満ちています。「愛すること」は自己
責任であるという皮肉が貫かれており、結末のオチと原題が結びつきます。
公式HP ⇒ http://www.eiganokuni.com/hiki/
■ザ・ライト エクソシストの真実 <原題 THE RITE>(★★★☆)
実話をベースにした話で、従来の“オカルト映画”とはちょっと違っています。
神への“信仰”に悩むアメリカ人の神学生が、バチカン市国で行われている
「エクソシスト(悪魔ばらい)」の講座に参加して、異端ともいえる神父と知り
会い、彼の助手として現場に立ち会うところから話が展開します。神父役の
アンソニー・ホプキンスの演技を観るだけでも価値はあり、“父と子”の関係
は「教える者と教わる者」でもあり、最後の字幕で二人の今が語られます。
公式HP(音声注意) ⇒ http://wwws.warnerbros.co.jp/therite/index.html
【Book】
■井上ひさし 「 日本語教室」(新潮新書、11/03/20 ★★★☆)
2001年10月から毎月一回上智大学で行われた4回の講演をまとめた内容。
「“JR”はいけない」(アルファベット読み)から始まり、日本語の成立過程で
出雲は「東北弁だった」と言い「やまとことば」を説明。明治政府が標準語を
作り、日本語は全部母音で終わるためきちんと発音するととても大きな感じ
がして美しく、同音異義語が多い=駄洒落の生まれやすさまで。 10年前の
時点で、「カタカナ言葉の氾濫」と漢字変換の容易さから「漢字の使い過ぎ」
を懸念していますが、日本語における「カタカナ倒れ」は拡大の一途ですね。
http://www.shinchosha.co.jp/book/610410/
日本語教室 (新潮新書) | |
井上 ひさし | |
新潮社 |
■広瀬隆 「 原子炉時限爆弾」(ダイヤモンド社社、11/08/20 ★★★★☆)
昨年夏に出版され、「3.11」以降、急に売れ出した本。 第一章(71ページ)
で浜岡原発(東海大地震)の危険性を指摘し、その中で“津波のこわさ”の
例として、明治三陸地震津波(1896年:3万人の死者・行方不明者)を挙げ
ています。 日本列島を形成した大陸移動から、活動する地層(活断層)と
原発の立地に耐震性の問題、放射性廃棄物の危険性を説明した上、電力
会社に対して徐々に原発を“廃炉”にする選択を薦め、国民は自ら調べて、
行政や他人任せにせず、頭を使いもっと考えるべきであると主張してます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=978-4-478-01359-5
原子炉時限爆弾 | |
広瀬 隆 | |
ダイヤモンド社 |
【オマケ、今週の気になった言葉】
■ なんで、あんなことをしたのか。 海洋に放射能汚染水を流すなんて信じ
られませんよ。誰がそんなバカなことを決めたのか。 これで日本は世界中
を敵に回した。恥ずかしい。せっかく信頼のある国だったのに、本当になん
てことをしてくれたんだ (by 上原春男、「週刊・上杉隆」 11/04/07より)
http://diamond.jp/articles/-/11786
上原春男氏は元佐賀大学学長で、“福島第一原発 3号炉”の設計に関係
し、外部循環式冷却装置の開発者です。ジャーナリストの上杉氏は、日本
が「海洋汚染テロ国家」になると指摘し、「低濃度の汚染水」の「低濃度」と
いう言葉は電力会社の造語で、通常の環境基準の100倍以上であり普通
に考えれば“高濃度”の汚染水を放出したと。 一番重要なことは、震災後
「被害国」だった日本が一転して「加害国」となってしまった点で、汚染水が
海に漏れていた事実をフリージャーナリストが追求して、慌てた電力会社
が独自の判断で更に垂れ流してしまったことです。 汚染水が海流に乗り
すべて拡散するのではなく、海底に蓄積される有害物質もあるわけです。