ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

やっぱり登りたい!:「残念だが・・・」

2019年08月03日 14時12分38秒 | Weblog
午前3時30分に起床した。
空はまだ暗く、テントの外へ出ればかなり寒さを感じた。
「天気は・・・まぁまぁかな」と、一人でニヤニヤしながら一服する。
天候に恵まれると言うことは、マイナスに考えれば雪崩が起きやすいと言うことに他ならない。
この時期の雪山は天候に関係なく起きる時は起きる。

珈琲を飲み朝食を済ませ、アタックザックの中身を最終確認した。
他の二人のことを考慮し、万が一のために予備のピッケル一本と、20mのザイルも入れた。
「使わないにこしたことはないけどなぁ・・・」
そう思いながらもやはり万が一だ。

5時にスタートするために小屋へ行き歯磨きを済ませて戻ると、KMさんが暗い表情で近づいてきた。
「ひょっとして・・・」と思ったが、予感は当たった。
どうにも体調が優れないとのこと。
このまま登ればかえって迷惑を掛けることになるので、テン場で待機したいと言ってきた。
即答ではなかったが、無理に登頂を目指すには厳しいルートだけに彼女の気持ちを尊重し「わかった。途中で引き返すにも結構辛いからね。残念だけど二人で行ってくる。もし体の具合が悪化したらすぐ小屋へ行って状況を説明すること。俺たちにはメモか伝言を残しておけばいいから、自分の体を優先すること。いいね。」

本音を言えばここまできて残念である。
三人で一緒に登頂したかったし、てっぺんからの絶景を見せてあげたかった。
だが無理も禁物。
体調が悪い時に無理をしても良いことなど何もない。
それは自分が一番分かっていることだ。


準備は整った。


KMさんには何か申し訳ないような思いだったが二人で登頂を目指す。


ザイテングラードの北ルートをとりながら登るが、ザイテンの取り付き口までをどうルートファインディングするかはまだ決めていなかった。
斜度は厳しくなるが直登にするか、やや斜度の緩い右から登るか・・・。
滑落停止訓練を兼ねて登りたいというN君の希望もあり、斜度の厳しいコースをとることにした。

時折振り返りKMに手を振った。
「もうテントに戻っていいよ」というサインを出したがなかなか戻りそうにもない。
まぁ自分たちは自分たちで行こう。


ピッケルを用いての滑落停止訓練の開始。
このように現場で訓練することは極めて大切だし、何よりも緊張感がある。
もちろん周囲の安全を確認してから始めたが、あまり時間を掛けてしまっては予定が立たない。
30分程で基礎訓練を終わりにし、再びザイテングラードを目指した。

N君には自分より先に登ってもらい、途中途中で自由に停止訓練をしてもらった。
自分は後方からそれを見て評価をした。


先を登っているN君が撮ってくれた画像。
実はこの斜度はけっこう厳しかった。




さすが若さ溢れる青年だ。
みるみると差が開いていった。
羨ましい限りだが自分はマイペースで登らせてもらった。

やっと追いつき、振り返れば太陽が・・・。

嬉しいことは嬉しいのだが、気になるのは雪崩・・・。
それが証拠に、ザイテングラードの反対側(南側)からは「シャーーー」という嫌な音が聞こえ始めていた。
「もうこんな時間から始まったのか・・・。下山がやばいなぁ。」
N君の不安を仰ぐことだけはしたくなかったので口には出さなかった。


吊り尾根と前穂高をバックに写真を撮った。


初めて見る北アルプスの雪景色に感動しているようだ。
若者にはその新鮮な気持ちをいつまでも忘れないでいてほしい。
登山人生はまだ始まったばかり。
彼が20年、30年先にどの山を登っているかは分からないが、今日初めて見たこの絶景を、感動を忘れないでいてほしい。

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