ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

孤高のブナ「孤高のブナ」

2020年08月16日 19時57分37秒 | Weblog
毎年7月末に出かけている劔岳。
今年も予定通りになるはずだったが、想定外の長梅雨の影響で叶わなかった。
劔沢テン場で一泊したのみで、アタック日は初日よりも風雨が強くそそくさと下山。
残念と言うよりは悔しい思いでの下山となった。

本格的な夏山は潔く諦め、秋の北アルプスへと目標を変更しよう。
・・・とその前に、春に登った日帰り低山の思い出を綴ってみたい。

以前から一度登ってみたいと考えていた山がある。
正確には山に登ると言うよりも、一本の樹木を見てみたいという思いだった。
その樹木の名は「孤高のブナ」。
いつ頃から、そして誰が名付けたのかも分からない。
画像でしか知らなかったその木を見に、旧足尾町(現日光市)にある中倉山へと向かった。



「孤高のブナ」とは・・・。

嘗て、足尾銅山として栄えた足尾町。
しかしその「公害」とも呼べる影響は自然界にも大きく及んだ。
旧足尾銅山精錬所から出ていた亜硫酸ガスにより山の樹木は枯れ、山肌はむき出しとなった。
幸いに煙害を逃れた一部の斜面だけは今でも樹木は生き生きと育っているが、山の稜線を分けて今でも植物が育たない不毛の地がある。
その稜線上にたった一本だけ生き残ったブナの木がある。
樹齢は100年以上とも言われており、精錬所の操業開始が1884年だから、煙害が収まった1956年までの間ずっと厳しい環境を耐え抜いてきたことになる。
いつ頃から「孤高の・・・」と呼ばれるようになったのかは知らない。
ただ、地元の栃木県であるだけに見るべき、知るべき価値はありそうだ。

心配なことがあった。
中倉山に登る為の登山道は無いということだ。
よくよく調べると3本のルートがあるようなのだが、その3本ともバリエーションルートであり正規の登山道ではない。
果たしてどのルートが最も安全なのか、どれだけのルートファインディング力が必要なのかは未知数だった。
そしてもう一つ気になる情報があった。
熊の出没情報だった。
ちょうど冬眠から覚めて間もない時であり、空腹を満たすためにあちこち歩き回っているという事前情報を得ることができた。
同行者は「是非とも一緒に!」という本人の強い要望もあり、N君と一緒。
熊出没の件もあり、心強い仲間を得ることができた思いだ。

事前の下調べにおいて最も念には念を入れたのは地図作りだった。
一般登山道ではないが、地元の山ガイドブックには一応の登山道が記されていた。
そしてネットで念入りに調べたルートとほぼ一致している事が分かった。
標高は2000m未満であり決して高山ではない。
だからこそいつの間にか幾つものルートっぽい道が出来上がってしまい、それが道迷いへと繋がる可能性は侮れないものがある。
北アルプスのバリエーションルートとはまた違った不安はあったが、「あの木を見てみたい」という強い思いも更に高まった。
いざ、中倉山へ!