タイトル----知を磨き明晰にし、物事を正確に理解しよう。 第199号 21.10.13(火)
知を致すは物に格るに在り。
〈明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、先ずその国を治む。〉(宇野哲人著『大学』講談社学術文庫)
通訳「天下のすべての人をして明徳を明らかならしめんと欲すれば、まず教化をもって人々を治め、善にすすませ天下、すなわち一国を平安に治めた。」(前掲書)参照。
〈その国を治めんと欲する者は、先ずその家を斉う。その家を斉えんと欲する者は、先ずその身を修む。〉(前掲書)
通訳「その国を治めんと欲すれば、必ずまず己の家族を和合させた。家族を和合、かつ斉えるためには、まずもって自分自身が修養し、模範となった。」(前掲書)参照。
〈その身を修めんと欲する者は、先ずその心を正しくす。その心を正しくせんと欲する者は、先ずその意を誠にす。〉(前掲書)
通訳「己の身を修めんと欲した者は、まず自分の心を正しくした。その心を正しくせんと欲するには、それに先だって心の発するところの意(おもい)を誠実にして少しも自ら欺くことがないようにした。」(前掲書)
〈その意を誠にせんと欲する者は、先ずその知を致す。知を致すは物に格るに在り。〉(前掲書)
通訳「自分の意を誠実にしようとしたものは、それに先立ち自らが研鑽し、知を極めて明晰にした。人間の良知を完全に磨き上げようと思う方法は、事物に直接体験し、人の性を正しく精確に認識することにあった。」(前掲書)参照。
『大学』は、『小学』を学び然る後、人格識見等々認められた人々が学ぶための学問であるという。いわゆる大人の学問である。これを今日的に換言すれば、国政に携わる政治家の学問というふうに解釈してもよかろう。
政治となると、八月末の総選挙が思い起こされる。半世紀以上も政権の座に君臨してきた自民党政権がはしなくも大敗を喫し、野党・民主党にとって変わられた。これは何が原因なのか、ということである。以後自民党は総裁を選出し、政権奪還をしなければならないという共通認識のもとに動きだした。
ここで大事なのは、政治は誰のものであるか、ということである。政権交代した民主党がマニュフェストに掲げた全てがいいなどと思っている人は、多くはいまい。一見、バラマキの感が否めないのも事実である。が、過去、自民党が執行してきた政治に国民が不信を抱いているのも枚挙に暇がない。それは、天下りと特別会計の無駄遣いではないかと思う。平成21年10月の世論調査で明確にその数字が現れている。
自民党が政権を奪還したいのなら、過去の政策を大きく転換し、無駄遣いの部分に大きく踏み込み改善しさえすれば、早期に復帰出来ると考える。
その為には、西郷隆盛の精神を吐露した『南洲翁遺訓』に学ぶのが一番の良策であろう。これ程明快な回答を教え示したものはないからである。これは偏に、西郷隆盛の言々肺腑より出ずる士魂を記録しただけに止まらず、庄内という地域的風土が産んだ所産なのである。いわゆる西郷南洲翁と、酒井忠篤公の命を受けて遺訓刊行に携わった菅臥牛翁の合作だと私は理解しているのである。政治家も、そして老いも若きも『南洲翁遺訓』に学ぶに如かずである。