埴(はに)さんは名を沙萠(しゃぼう)といいます。これはペンネーム。肩書きは“植物生態写真家”。もちろん現役です。年齢は82歳。
若いときにサボテン研究家の影響を受け,以来シャボテンにぞっこん。今は身近な植物との付き合いに没頭し続けていらっしゃる方です。名の由来は,このシャボテンを文字っているということです。経緯は本に書かれています。先に,NHKで何度か特集番組が組まれたとかで,埴さんのことをご存知の方が多いのではないでしょうか。
下写真は,埴さんの著書『足元の小宇宙』(NHK出版/初版2013(平成25)年11月30日)の表紙です。この姿勢と表情が,言うに言われぬ見事さを感じさせてくれます。こんなにひたむきに自然と対話ができる人生って,なんてあっぱれなことよと感じ入ります。
この本には,ほんとうにすてきな写真が収録されています。アッと驚くような一瞬の切りとり方にこころを引き付けられます。こんな瞬間の出来事を,こんなに巧みに写し撮れる腕ってスゴイ! どんなふうに鍛えたら自分のモノにできるのだろうと思うばかり。読んでいくとよくわかりますが,とにかく想像できない次元の歩みを重ねてこられた結果なのです。
解説文なり随想なりは,けっして小難しくはありません。おしゃれで,軽妙で,それでいて品格に満ちています。齢を重ねても,こんなふうにことばを生き生きと綴れるって,わたしはこころからあこがれてしまいますね。
徹底した生き方の一例が7年をかけた日本一周撮影旅行です。子どもの夏休みを利用して,ジープにテントを積み,足かけ7年というわけです。それに,植物をテーマにした著作物のスゴイこと!
中身についてはこれ以上触れませんが,チャームな“おじいさん”にお出会いできたことをとにかくうれしく感じています。昆虫を中心に生態を観ていこうとしているわたしには,あこがれの人になりました。こういうふうに,“若く”“生き生きと”老いていきたいなあと思うのです。