キバナアマナ
4月に入って忙しい日が続いたと思っている。
それはただ、顔を出すだけの会議が多かったということなのだけれど。
雑事に追われっぱなしで、私の体はまだ冬から春の切り替えが終わっていないし、車のタイヤもまだ冬用のままである。
最後に残った会議が終わった後、春宵一刻、約4Kの道程を歩いて帰る事にした。
山の上の料亭を出て一人坂道を下り、ひなびた温泉街を抜けて田園地帯に出た。
確かこの辺に友人の家があった筈だと見回したけれど、すっかり家並が立て混んでしまって、その上に酒精の影響出て全く見当もつかない。
もしかしたらとんでもない方向錯覚を起こしていたのかもしれない。
道沿いに意地悪な犬が突然吠えかかってくる家がある、鎖に繋がれているけれど、それを引きちぎる勢いである。
多少遠回りになるが狂犬の家を避ける道を選んだ。
月夜でもないのに、暗い山ぎわに白木蓮の花群淡く白く浮き上がって見える。
春が来たのだと実感する。