暮れの仏壇掃除の折、手のひらに乗るほど小さな陶器製の置物を見つけた。
牛の尻尾につかまって走る、おばば様で、このおばば様は小諸の住人で、世評は芳しくないお方である。
あるときおばば様が千曲川の川岸で洗濯をしていると、牛がやってきて、大切な洗濯物を角にひっかけて走り出した。
洗濯物を取り返そうと、ばば様は牛の尻尾につかまって、わめきながら必死に走ったそうだ。
日暮れ近く、息も絶え絶えのばば様を引っ張って、牛は大きなお寺の山門を抜け本堂に入り、ばば様の手を振り払って奥に消えた。
山門には「善光寺」という大きな額が掛かっていた。小諸長野間は20里はありそうだ、牛に引かれたとはいえフルマラソンの距離に匹敵する。
尾っぽから手を放したばば様は倒れこんで起き上がれない。
翌朝 長い眠りから覚めてよろめく足を踏みしめながら洗濯物を捜し歩いた。
そして 安置された阿弥陀如来様の肩にかかって光り輝く洗濯物を見付けたおばば様はそこで開眼するのである。
今から67年前の修学旅行で私が買い求めたお土産だろうと思われる。
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