
街角の屋台で買った
二本のヤキトーキビに
その人はいたずらっぽく笑った
道行く人が振返って見ても
その人はいたずらっぽく笑った
小さな小さな冒険に
ヤキトーキビの香ばしさ
木枯し吹く夜道に
一本のヤキトーキビの温もりが
両手より腹中に沁み渡る
その人のあどけない望みの
小さな小さな冒険は
いたずらっぽい笑顔で
白い歯を一層美しくさせた
屋台のヤキトーキビにも
その人の秘めた夢がある
木枯し寒き夜道には
小さな温かさがいる
ヤキトーキビの温かさである
そしてそれは恋である
一本のヤキトーキビにも
恋が秘んでいる
私の気付かぬ事 それを
その人は知っていたのだ