大村君は、そして肉親愛を詠ふ古今獨歩の詩人である、家庭愛を詠ひ家庭生活を歌ふ。
例へば詩集「春を呼ぶ朝」にある59篇中、肉親愛家庭愛を歌ったものが22篇を算する。
眠むるもの の如く客観的に凝視し乍ら溢れ出る涙を押へ、切實に哀感を脈うたせてゐるあたり、思はず襟を正さずに居られなくなるものがある。
大村正次論 中山 輝
大村正次著「春を呼ぶ朝」
眠むるもの
書き終わり
ふと見る この子は
追ひ退けた筈の この子は
わが出した足の先に
くつついて寝てゐる
無心に。
「春を呼ぶ朝」の目次は「眠るもの」とあるが、ページを開くと詩のタイトルは「眠むるもの」になっている。校正ミスかもしれない。わざとかもしれない。