らんかみち

童話から老話まで

それぞれの死に支度

2013年08月12日 | 暮らしの落とし穴
 死に支度は早いほうが良いんじゃないかって書いたけど、平櫛田中という彫刻家は100歳の誕生日を迎えるに当たって、向こう30年分の材料を買い込んだという。普通なら、惚けてたんじゃない、と思われそうだが、亡くなる107歳まで彫刻を続けたというから驚く。

 ケアマネさんと一緒におじさんを訪ねたけど、頭は実に確りとしている。本人は100歳まで生きるつもりで、それにはもう少しだけ時間がかかる。「碁が弱くなったときがワシの死ぬときじゃ」と、今もアマチュアトップレベルの棋力をキープし続けているから恐れ入る。

 おじさんの場合は死に支度が完了していると見た。碁を教えて欲しいと来る人に稽古を付けることにしか興味がない。死んだら葬式も墓も必要ない、戒名も供養も必要ないという。
 碁を打ったからといって棋譜を残しているわけじゃないから、自分の存在が対局者の記憶に残っていればそれで良い、ということだろうか。

 う~ん、潔いといえばそうだけど、この田舎で葬式をしないのが許されようか、散骨だけで済ませて後ろ指を指されまいか。こりゃあ遺言が要るなぁ。