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北海道美術ネット別館

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■SPRING 吉田英子-旅のいろどり、吉田ひかり-森の小さな生命 (4月13日で終了

2008年04月14日 09時45分22秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 札幌の吉田英子さんは、もともとインスタレーションなど、現代美術の作家で、このような淡彩スケッチを発表するのは、意外な感じがします。ご本人も、そのように言われると話しておられました。
 さいとうギャラリーのオーナーにスケッチブックを見せる機会があり、「発表すべきだ」と言われて、今回の展覧会の運びになったそうです。

 夫の吉田功さんも現代美術のアーティストで、海外での発表の機会が多かったことから、展覧会の期間中にあいた時間を利用して、近場でスケッチをしていたのだとのこと。
 スペインのマドリッドなど各地、メキシコのチワワ、米国のダラス近郊など、36点が展示されています。

 ただ、実際にならんでいる作品を目にすると、一見よくあるタイプのスケッチに見えても、やはり吉田さんらしさを感じます。
 それは「完成されていない」ということです。
 ふしぎなことに、隅々まで線がひかれ着彩されている絵よりも、空白が残されている絵の方が、見ていると、映像を喚起する力があるようなのです。
 なぜなんでしょうか。
 
 吉田さんによると、マドリッドでスケッチの最中、変な男につきまとわれて、描くのを中断してしまったそう。
 あとで続きをかかなくては-と思いましたが、画面を見て「これでもいいか」と感じたのだそうです。
 冒頭画像も、マドリッドのあたりで、これはバスを待っている時間に筆を走らせていて、バスが来たのでスケッチブックを閉じた-という1点です。

 西洋の絵画で、ドローイングはともかく、ペインティングのほうは、タブローの一部が塗りのこされているようなことは、セザンヌ以前にはありえませんでした。
 一方、日本の絵画は、空白が残っていることに頓着しません。また、大和絵などでは、空白部に雲をたなびかせることもよくありますし、水墨画では霧にけぶる部分が紙の白で表現されることは普通のことです。
 西洋美術のわくの中で制作されているかに見える吉田さんのスケッチですが、やはり日本美術の残響がそこかしこに聞き取れるといえるのかもしれません。

 それにしても、さきほど「映像を喚起する」と書きましたが、筆者はメキシコやスペインに行ったことはありません。つまり、筆者の脳内に現れる映像は、どこかで見た写真やテレビ画面なのです。
 「スケッチが、写真を呼び起こす」
というのは、そもそもどういう事態なのか。
 思考が混乱していて、うまく整理だてることができません。考察を深めたい問題だと思っています。


08年4月8日(火)-13日(日)10:30-18:30(最終日-17:00)
さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B)

北海道抽象派作家協会展(06年)
北海道抽象派作家協会展(05年)
吉田英子展 変容(04年)
RELATION リレーション・夕張2002
=以上いずれも画像なし


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