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北海道美術ネット別館

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08年8月5日追補(2) 有島記念館に行ってきた

2008年08月06日 22時02分16秒 | つれづれ日録
承前

 中山峠から有島記念館へ。
 羊蹄山の南側をまわって、ニセコへ出る。

 日本の近代文学を代表する作家、有島武郎。
 彼が地主であった農場がこの後志管内ニセコ町にかつてあったのだ。農地解放に先立つ30年も前、有島はこの農地を小作人に譲りわたした。

 いまは格差社会といわれるけれど、戦前の格差にくらべると全然たいしたことないのは確か。江戸時代のなごりもあり、当時の「旦那衆」「紳士」と「貧乏百姓」の間に横たわる溝の深さというか、身分の違いは、はるかに大きかった。
 そんな時代に、自らの財産をなげうって農場を解放したなんてすごいと思う。

 筆者は、彼の代表作はほとんど読んだことがある。
 小説もさることながら、「惜しみなく愛は奪う」「宣言一つ」といった評論などを読んでいると、広津和郎がいみじくも指摘したように、ずいぶん窮屈というか、気の毒なくらいマジメな人であると思った。
 そのマジメで、とことん思い詰める性格が、ああいう悲劇的な最期(夫のいる女性記者との心中)につながったのだろうなあ。 

 館に入ると、係の女性が、有島の生涯をまとめたスライドを見るかどうか、尋ねてきた。
 彼の生涯ならほとんどアウトラインは知っているので一瞬迷ったけれど、見ることにした。観客はじぶんひとり。
 で、スライドは見て正解だった。彼と、この有島記念館のある農場との関聨に焦点を当てているのだ。彼の代表作「或る女」の題名すら出てこないなんて、けっこう思い切った構成だと思う(「或る女」は、有島の代表作であるばかりでなく、近代日本文学を代表する長篇である)。
 末尾の字幕で、テキストを高山亮二さんが書いたと知る。

 それから、展示を見る。
 文学館の展示というのはもとよりそれほどビジュアル的におもしろいものではないが、筆者はそもそも有島が大好きなので、どの断簡零墨を目にしても、彼の過剰なまでのまじめさが思い出され、胸に迫った。

 内側の壁が、れんががむき出しなので、味があって良いと思った。


http://www.town.niseko.hokkaido.jp/arishima/

北海道ニセコ町字有島57番地
●開館/午前9時-午後5時(入館は午後4時30分まで)
●休館日/毎週月曜日及び年末年始(月曜日が、祝祭日及びその振替休日の時はその翌日)
 ※平成20年5月1日から10月15日までの期間は月曜日も休まず開館しています。
●入館料/大人:500円 中学生:100円 小学生以下:無料(団体20名以上1人:400円) ※ニセコ町民は無料です。
(以上、サイトから転載)



・JRニセコ駅から約2.5キロ
・倶知安駅から道南バスで「有島記念館」降車、徒歩5分


この項つづく


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