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北海道美術ネット別館

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浮世絵美人画の魅力 国貞・国芳・英泉(5)

2006年03月08日 00時03分24秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 しつこいようですが、江戸タイムスリップのつづき。「江戸名所図会」は文庫本で6冊ある大部の書物ですが、五百羅漢や浅草寺(せんそうじ)のようにやたらとくわしい項目もあれば、とりあげられていない名所もあります。ここに掲げた歌川国貞「江戸名所百人美女 首尾の松」も載っていません。まじめな本なのか、吉原関係の項目がほとんどないのです。
 図録には、つぎのように書いてあります。

(以下引用)
 浅草蔵前には幕府の米蔵があり、米を運搬する船舶の停泊港が設けられた。首尾の松は、その四番溝と五番溝の間に植えられた松のことで、猪牙舟で吉原通いをする遊客が今日の遊女との逢瀬がうまくいくようにこの松に祈ったことから、また、帰りがけの遊客が昨夜の首尾についてこの辺りで語ったことから、この名前が付いたと言われている。
(引用終わり)

 だいたい、いまの蔵前橋あたりのようです。

 このシリーズでは、すでに、永代橋と木母寺、今川はし、日くらしの里(日暮里)について書きましたが、ほかにも、つぎの絵が今展覧会に出ています。

五百羅かん
日本はし
大川橋 里俗吾妻はし
木場
三囲(みめぐり)
京ばし
あさぢがはら
竪川
浅草す八丁 (浅草諏訪町)
するがだい
白髭明神
十軒店 
薬げんぼり
今戸

 このうち、ちょっと補足しておきたいのが三囲です。



 三囲神社は、現在の墨田区向島二丁目にあります。
 この神社については、国芳の「当盛(とうせい)江戸鹿子(かのこ)」にもとりあげられています。
 「江戸名所図会」から引きます。

 神像は弘法大師の作にして、同じ大師の勧請なりといへり。文和年間三井寺の源慶僧都(げんけいそうづ)再興す。(中略)当社の内陣に英一蝶の画(えが)ける、牛若丸と弁慶が半身の図を掲(か)けたり。

 この話は図録に載っていませんが、国貞は英(はなぶさ)を尊敬していましたから、この絵を描くときは力が入ったのではないでしょうか。
 まあ、弘法大師うんぬんはマユツバのような気もしますが。
 引用をつづけます。

 「五元集」
     牛島みめぐりの神前にて、雨乞ひするものにかはりて、
  夕立や田をみめぐりの神ならば          宝晋斎其角
      あくる日雨ふる。
(社僧云はく、元禄六年の夏大いに旱魃(ひでり)す。しかるに同じ六月の廿八日、村民あつまりて神前にむかひ請雨(あまごひ)の祈願す。その日其角も当社に参詣せしに、伴ひし人の中に白雲といへるありて、其角に請雨の発句をすべきよしすゝめれば、農民にかはりて一句を連ねて、当社の神前にたてまつりしに、感応やありけん。その日膏雨(かうう)たちまちに注ぎけるとなり)=後略

 其角(きかく)は、芭蕉第一の門人だった俳人ですね。

 まだまだ書きたいこともありますが、このへんで。 

(追記。6回目もあります)

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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (SH)
2006-03-08 12:31:09
私も「浮世絵美人画の魅力 国貞・国芳・英泉」の図録を購入しました。見ごたえ・読み応えあります。
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版形 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-03-08 14:25:15
読み応えのある図録ですよね。

ただ、絵を収録するのにはぴったりの横長のかたちも、本棚にしまうときはどうしよう…
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Unknown (SH)
2006-03-10 12:24:56
この展覧会、急に混み出して、図録も完売だそうです。ヤナイさんのお勧めで買っておいて良かったです。
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展覧会は (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-03-10 14:02:09
会期末がいちばん混雑します。

図録は、予想の入場者数に一定の割合(8%など)をかけて刷るはずですから、売り切れということは、入場者数が予定より多いか、図録を買うような熱心な人の割合が多いか、どちらかなのだと思います。
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