
2018年6月19日、札幌国際芸術祭の公式サイトで短いお知らせ「次回の札幌国際芸術祭の方向性決定!」が発表された。
以下、全文。
同日の北海道新聞にも
「札幌国際芸術祭 20年度は冬開催 芸術監督3人に」
という見出しの短い記事が出た。
それによると、公式発表の「複数」というのは
「芸術監督は現代アート、メディアアート、コミュニケーションデザインの3分野で選ぶ」
ということになっている。
ただ、以上の文面からだけでは、これまでと同様のアシスタントディレクターがいてその下に3人のディレクターがいるのか、それとも3人が並び立つかたちになるのか、詳しいことは判断できない(このセンテンスを追加しました)
ちなみに、同日の朝日、毎日、読売各紙の北海道面には、芸術祭の記事は出ていない。

実は、冬の開催について筆者は2010年1月の記事「札幌ビエンナーレに向けて」で
「札幌は、札幌でしかできない事業に取り組むしかない。」
として、冬のモエレ沼公園での開催を提唱しているし、同年3月には、札幌市の関係者にも
「これだけ国内外のあちこちで、ビエンナーレとかトリエンナーレが開催されている以上、他とどう差別化していくかは、避けて通れない問題だろう。」
という趣旨の話をしている。
ただ、実際問題として、来場者の半数以上が地元の人間だとしたら、冬季開催はリスクが大きい。
ご存知のとおり、北海道の人間は、冬の間は極端な出不精になるからだ。
寒くて、雪で足元が悪いのはもちろんだが、日が暮れるのが早いため行動が心理的に制約されるという側面は意外と大きいのではないかと思う。
日没が早いと、夕方や夜のイベントにも足が向きづらくなるのだ。

しかし、北海道らしさ、札幌らしさを追求するのであれば、冬の開催は挑戦すべきだろう。世界中どこをさがしても、こんなに雪のふる大都市はないからだ。
(雪の多い土地での国際芸術祭ということでいえば「越後妻有アートトリエンナーレ・大地の芸術祭」の会場はものすごい豪雪地だが、メイン開催期間は冬ではない。冬の間もさまざまな行事は展開しているが)
同時に、大雪のため新千歳空港が閉鎖されたり、バスが渋滞に巻き込まれたりといった事態も予想される時季だけに、対策が求められることはいうまでもない。
札幌の年間通してもっとも知名度の高い催し「さっぽろ雪まつり」の期間とうまく重なることで、地元客の減少をうまくカバーすることが期待される。
いずれにしても、道外から来た人にとって思い出に残るのは、冬の開催だろう。
メディアアートや公演系は室内で行えばよいから積雪期でも問題はない。
楽しみだなあ。
さてこれまでも札幌では、雪や寒さといった厳しい気象条件を逆手に取った実践がいくつか行われているので、思いつくままに挙げてみよう。
これらがそのまま、こんどの芸術祭に入ってくる、というわけではないが、美術館もギャラリーもオフシーズンになるなかで、これだけの実績がすでに積まれているわけである。(このセンテンスを追加しました)
・さっぽろ雪像彫刻展
本郷新記念札幌彫刻美術館の前庭で毎年1月下旬に行われている。札幌の彫刻家、工芸家、学生らが、造形性を意識した雪像を作る
・Snow Pallet
札幌の美術家、澁谷俊彦さんが取り組んでいるインスタレーションのシリーズ。円盤などの裏側に塗った鮮やかな色が雪の表面にほのかに反射する。会場は毎年変更
・アイスホテル
イグルーで造った期間限定のホテル。問い合わせ先はクロスホテル札幌だが、会場は、当別町スウェーデンヒルズだったり真駒内のゴルフ場だったり、毎年異なる。公式サイト
・s(k)now [ snow + know]
さっぽろ天神山アートスタジオで、冬のアートを考える
・サッポロユキテラス
道庁前の赤レンガ広場で2月に行われている。今年は、かまくらとメディアアート作品のミックス
・SNOW SCAPE MOERE
モエレ沼公園「ガラスのピラミッド」周辺で行われていた。リンク先は2009年。2012年が最後だったと思われる
・ツララボ
SIAFラボで2015年始動したプロジェクト。つららを人工的につくる
・SAPPORO II project
中央区北1西9の空き地やシャワー通りで「型押し」などのプロジェクトをやっていた(リンク先は2009年)けど、最近はどうしてるんだろう。2011年まではやってたのは確実。
・SNOW PROJECT
さっぽろ雪まつりの大雪像に映像作品を投影する試み。2001~04年に行われていた。近年のプロジェクション・マッピングの先祖みたいなもの?
ほかにもあったら、ごめんなさい。
あと、考えてみれば、札幌は、冬のイルミネーションの日本における発祥の地でもある。
ただ、ツイッターでも書いたけれど、開催が2020年度の冬ということであれば、暦年なら2021年1月とか2月となり、「トリエンナーレ」の規則性は失われてしまうのが気がかり。
1月以降のスタートであれば「1年延期」と受け取られかねない。
どんな形でもいいから、2020年12月中には会期をスタートさせてほしいと思う。年末年始は中断してもいいので。
以下、全文。
札幌国際芸術祭実行委員会では、6月18日(月)に開催しました同委員会におきまして、次回の芸術祭の方向性が決定しました。
SIAFは、独自性のある芸術祭として2014年、2017年と2回開催してきたところですが、次回は、さらに札幌の特徴や魅力を生かしていくため、2020年度の冬季に開催します。
そして、冬、雪、北方圏の文化を題材とした作品やプロジェクトを展開していきます。
また、こうしたプログラムを効果的に展開するために、複数の専門家によるディレクターチームが、芸術祭の企画を立案・監修します。
今後は、本年9月を目処に、ディレクターチームの人選を行い、来年の2月頃にテーマや会期、主要会場などを発表していく予定です。
引き続き、札幌国際芸術祭にご関心をお寄せいただきますよう、よろしくお願いいたします。
同日の北海道新聞にも
「札幌国際芸術祭 20年度は冬開催 芸術監督3人に」
という見出しの短い記事が出た。
それによると、公式発表の「複数」というのは
「芸術監督は現代アート、メディアアート、コミュニケーションデザインの3分野で選ぶ」
ということになっている。
ただ、以上の文面からだけでは、これまでと同様のアシスタントディレクターがいてその下に3人のディレクターがいるのか、それとも3人が並び立つかたちになるのか、詳しいことは判断できない(このセンテンスを追加しました)
ちなみに、同日の朝日、毎日、読売各紙の北海道面には、芸術祭の記事は出ていない。

実は、冬の開催について筆者は2010年1月の記事「札幌ビエンナーレに向けて」で
「札幌は、札幌でしかできない事業に取り組むしかない。」
として、冬のモエレ沼公園での開催を提唱しているし、同年3月には、札幌市の関係者にも
「これだけ国内外のあちこちで、ビエンナーレとかトリエンナーレが開催されている以上、他とどう差別化していくかは、避けて通れない問題だろう。」
という趣旨の話をしている。
ただ、実際問題として、来場者の半数以上が地元の人間だとしたら、冬季開催はリスクが大きい。
ご存知のとおり、北海道の人間は、冬の間は極端な出不精になるからだ。
寒くて、雪で足元が悪いのはもちろんだが、日が暮れるのが早いため行動が心理的に制約されるという側面は意外と大きいのではないかと思う。
日没が早いと、夕方や夜のイベントにも足が向きづらくなるのだ。

しかし、北海道らしさ、札幌らしさを追求するのであれば、冬の開催は挑戦すべきだろう。世界中どこをさがしても、こんなに雪のふる大都市はないからだ。
(雪の多い土地での国際芸術祭ということでいえば「越後妻有アートトリエンナーレ・大地の芸術祭」の会場はものすごい豪雪地だが、メイン開催期間は冬ではない。冬の間もさまざまな行事は展開しているが)
同時に、大雪のため新千歳空港が閉鎖されたり、バスが渋滞に巻き込まれたりといった事態も予想される時季だけに、対策が求められることはいうまでもない。
札幌の年間通してもっとも知名度の高い催し「さっぽろ雪まつり」の期間とうまく重なることで、地元客の減少をうまくカバーすることが期待される。
いずれにしても、道外から来た人にとって思い出に残るのは、冬の開催だろう。
メディアアートや公演系は室内で行えばよいから積雪期でも問題はない。
楽しみだなあ。
さてこれまでも札幌では、雪や寒さといった厳しい気象条件を逆手に取った実践がいくつか行われているので、思いつくままに挙げてみよう。
これらがそのまま、こんどの芸術祭に入ってくる、というわけではないが、美術館もギャラリーもオフシーズンになるなかで、これだけの実績がすでに積まれているわけである。(このセンテンスを追加しました)

本郷新記念札幌彫刻美術館の前庭で毎年1月下旬に行われている。札幌の彫刻家、工芸家、学生らが、造形性を意識した雪像を作る
・Snow Pallet
札幌の美術家、澁谷俊彦さんが取り組んでいるインスタレーションのシリーズ。円盤などの裏側に塗った鮮やかな色が雪の表面にほのかに反射する。会場は毎年変更
・アイスホテル
イグルーで造った期間限定のホテル。問い合わせ先はクロスホテル札幌だが、会場は、当別町スウェーデンヒルズだったり真駒内のゴルフ場だったり、毎年異なる。公式サイト
・s(k)now [ snow + know]
さっぽろ天神山アートスタジオで、冬のアートを考える
・サッポロユキテラス
道庁前の赤レンガ広場で2月に行われている。今年は、かまくらとメディアアート作品のミックス

モエレ沼公園「ガラスのピラミッド」周辺で行われていた。リンク先は2009年。2012年が最後だったと思われる
・ツララボ
SIAFラボで2015年始動したプロジェクト。つららを人工的につくる
・SAPPORO II project
中央区北1西9の空き地やシャワー通りで「型押し」などのプロジェクトをやっていた(リンク先は2009年)けど、最近はどうしてるんだろう。2011年まではやってたのは確実。
・SNOW PROJECT
さっぽろ雪まつりの大雪像に映像作品を投影する試み。2001~04年に行われていた。近年のプロジェクション・マッピングの先祖みたいなもの?
ほかにもあったら、ごめんなさい。
あと、考えてみれば、札幌は、冬のイルミネーションの日本における発祥の地でもある。
ただ、ツイッターでも書いたけれど、開催が2020年度の冬ということであれば、暦年なら2021年1月とか2月となり、「トリエンナーレ」の規則性は失われてしまうのが気がかり。
1月以降のスタートであれば「1年延期」と受け取られかねない。
どんな形でもいいから、2020年12月中には会期をスタートさせてほしいと思う。年末年始は中断してもいいので。