
ことし5月8日の朝日新聞夕刊で「プラド美術館展」(国立西洋美術館)の展覧会評を、東大の三浦篤教授は次のように書き出している。
読み返すたびに、ため息が出る。
ことし、道立近代美術館の企画展室で開かれている展覧会は、まさにここでいわれている無難なつくりでしかないからだ。
しかも「棟方志功展」に続いて、図録もない。
筆者に限らず、創価学会員でもない限り、東京富士美術館にわざわざ足を運ぶ北海道民はあまりいないだろう。
その意味では、ありがたい機会といえるのかもしれない。
ふだんあまり日本美術を鑑賞することのない道民にとっては、それなりに貴重な作品が並んでいるということも可能だと思う。
粗悪な作品が来ているとまではいうつもりはない。
駕籠など珍しいものも展示されていた。
ただし、たとえばことし東京の国立博物館で開かれた特別展『仁和寺と御室派のみほとけ–天平と真言密教の名宝–』に国宝や重要文化財が何点展示されていただろう、などと思うと、はっきりいって、この展覧会は道民にとってありがたいというにすぎず、全国に胸を張って「こういう美術展です」などと言えるしろものとはいえないだろう。
伊藤若冲にしても、宮内庁三の丸尚蔵館あたりにある作品に比べたら、とても彼の本質がわかるような名品とは言いがたい。
「東海道五十三次」にしても「富岳三十六景」にしても、これより保管状態の良い刷りを所蔵している美術館は国内にいくつかあるだろうと思う。
北海道で開かれている企画展の半数以上は、北海道新聞社かSTVのいずれかの主催である。
その両者が主催に名を連ねて、このありさまというのは、どう言えばいいのか。
学会関係の入場者が見込めて数字が計算できるから、それでいいのか。
あまり両方をdisれば、もう美術展をやってくれなくなってしまうかもしれず、それはそれで困るけれど。
でも、2018年になって、まだこんな昭和な展覧会をやっているのかと、嘆息せざるを得ない。
外国や本州の美術館やコレクションからまとめて作品を運んで陳列すれば、それで展覧会になると主催者は考えているのだろう。
はっきり言って、道民は(あるいは北海道の美術ファンは)なめられている。
2018年7月7日(土)~8月5日(日)=前期、8月9日(木)~9月2日(日)=後期。午前9時半~午後5時。月曜休み(祝日は開館し翌火曜休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
一般1300(1100)円、高大生700(600)円、中学生500(400)円、小学生以下無料(要保護者同伴)
前・後期セット前売り券1800円
「プラド美術館展」のように一館から作品を借りる場合、時代、地域、画家、様式を無難にアレンジした「スペイン絵画名作展」のようなつくりから、いかに脱するかが勝負の分かれ目となる。ディエゴ・ベラスケス(1599~1660)を機軸に据え、作品を主題別に構成するという、明確なコンセプトを打ち出した本展は意欲的な試みである。
読み返すたびに、ため息が出る。
ことし、道立近代美術館の企画展室で開かれている展覧会は、まさにここでいわれている無難なつくりでしかないからだ。
しかも「棟方志功展」に続いて、図録もない。
筆者に限らず、創価学会員でもない限り、東京富士美術館にわざわざ足を運ぶ北海道民はあまりいないだろう。
その意味では、ありがたい機会といえるのかもしれない。
ふだんあまり日本美術を鑑賞することのない道民にとっては、それなりに貴重な作品が並んでいるということも可能だと思う。
粗悪な作品が来ているとまではいうつもりはない。
駕籠など珍しいものも展示されていた。
ただし、たとえばことし東京の国立博物館で開かれた特別展『仁和寺と御室派のみほとけ–天平と真言密教の名宝–』に国宝や重要文化財が何点展示されていただろう、などと思うと、はっきりいって、この展覧会は道民にとってありがたいというにすぎず、全国に胸を張って「こういう美術展です」などと言えるしろものとはいえないだろう。
伊藤若冲にしても、宮内庁三の丸尚蔵館あたりにある作品に比べたら、とても彼の本質がわかるような名品とは言いがたい。
「東海道五十三次」にしても「富岳三十六景」にしても、これより保管状態の良い刷りを所蔵している美術館は国内にいくつかあるだろうと思う。
北海道で開かれている企画展の半数以上は、北海道新聞社かSTVのいずれかの主催である。
その両者が主催に名を連ねて、このありさまというのは、どう言えばいいのか。
学会関係の入場者が見込めて数字が計算できるから、それでいいのか。
あまり両方をdisれば、もう美術展をやってくれなくなってしまうかもしれず、それはそれで困るけれど。
でも、2018年になって、まだこんな昭和な展覧会をやっているのかと、嘆息せざるを得ない。
外国や本州の美術館やコレクションからまとめて作品を運んで陳列すれば、それで展覧会になると主催者は考えているのだろう。
はっきり言って、道民は(あるいは北海道の美術ファンは)なめられている。
2018年7月7日(土)~8月5日(日)=前期、8月9日(木)~9月2日(日)=後期。午前9時半~午後5時。月曜休み(祝日は開館し翌火曜休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
一般1300(1100)円、高大生700(600)円、中学生500(400)円、小学生以下無料(要保護者同伴)
前・後期セット前売り券1800円